3. 2026年9~10月に公表された重大事案
2026年9~10月にかけては、利用ユーザーが多いサービスや企業で重大事案が相次いでいます。以下、代表的な事例を紹介します。
3.1 2026年9月
- タイムズカー(タイムズモビリティ株式会社):約660万アカウント
- デジタル庁(ガバメントソリューションサービス):約24.6万件
3.2 2026年10月
- クロネコ代金後払いサービス(ヤマト運輸株式会社):約526万件
- 焼肉きんぐ(株式会社物語コーポレーション):約1079万件
- バーガーキング公式アプリ(株式会社ビーケー・ジャパン):約1118万件
- skyticket(株式会社アドベンチャー):約1464万件
- ソースネクスト(ソースネクスト株式会社):約2252万件
- Studio(Studio株式会社):件数精査中
- ラクスル(ラクスル株式会社):6412件
- オズモール(スターツ出版株式会社):最大約44万件
- 佐川急便(SGホールディングスグループ):件数非公表
- JOGMEC(独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構):件数非公表
- らしんばん(株式会社らしんばん):件数非公表
4. 情報を悪用されないために個人でできる対策は?
企業のシステムで発生する情報流出を、利用者が完全に防ぐことは困難です。ただし、パスワードや認証方法を見直すことで、不正ログインなどの二次被害を抑えられる可能性があります。
4.1 パスワードを使い回さない
複数のサービスで同じパスワードを使っていると、1つのサービスで流出した認証情報が、別のサービスへの不正ログインに悪用される可能性があります。具体的には以下のような対策が有効です。
- サービスごとに異なるパスワードを設定する
- 長く、推測されにくいパスワードを使用する
- パスワード管理アプリなどを利用して安全に管理する
- 流出の通知を受けたら、該当サービスのパスワードを変更する
- 同じパスワードを使っている他サービスも変更する
特に、メールアカウントは優先的に保護したいサービスです。メールを乗っ取られると、ほかのサービスのパスワード再設定に悪用される可能性があります。
4.2 多要素認証を設定する
多要素認証とは、パスワードに加えて、別の方法で本人確認を行う仕組みです。
認証アプリやセキュリティキー、生体認証などを利用すれば、パスワードが流出した場合でも不正ログインのリスクを抑えられる可能性があります。
利用しているサービスに多要素認証の機能がある場合は、設定を確認しておきましょう。
4.3 不審なメールやSMSに注意する
情報流出が判明した後は、流出した情報を悪用した詐欺にも注意が必要です。
例えば、実際に利用しているサービス名を使い、「アカウントを停止する」「返金手続きが必要」などと偽って、ログイン情報やカード情報を入力させようとする手口が考えられます。
氏名や住所、利用したサービスを知っている相手から連絡があっても、本物の企業とは限りません。
氏名や住所などは、パスワードのように簡単には変更できません。流出した情報を使った詐欺やなりすましを警戒し、被害の兆候がないか確認することが重要です。
5. 個人情報が流出した場合にとるべき対応は?
個人情報流出の対象となった場合は、流出した情報の種類に応じて対応する必要があります。
5.1 パスワードが流出した場合
まずは、各サービスで使用しているパスワードの変更を優先します。
パスワードを変更する際は、企業からの通知に記載されたリンクをそのまま開くのではなく、公式サイトや公式アプリから手続きを行いましょう。
5.2 クレジットカード情報が流出した場合
カード会社の公式窓口へ連絡し、利用停止や再発行などの必要な対応を確認します。
流出したカード情報の種類や状況によって対応は異なるため、カード会社の案内をよく確認しましょう。
5.3 運転免許証などの本人確認書類が流出した場合
本人確認書類の画像が流出した場合は、企業からの通知を確認し、対象となった書類や情報の種類を把握しましょう。
情報流出が判明したからといって、必ず免許証を再交付する必要があるとは限りません。企業の案内や公的機関の説明を確認し、個別の状況に応じて対応しましょう。
個人情報が流出した場合は、流出した情報の種類や被害の状況に応じて相談先を選びましょう。以下のような窓口で相談することが可能です。
- 個人情報保護委員会: 個人情報の取り扱いや個人情報保護法に関する情報を確認できます。
- 警察相談専用電話「#9110」: 不審な連絡や個人情報を悪用した犯罪などについて、警察に相談したい場合に利用できます。緊急の事件・事故は110番です。
- 消費者ホットライン「188」: 身に覚えのない請求や契約トラブルなどについて、最寄りの消費生活センターなどへ相談できます。
- 金融機関・クレジットカード会社: 不審な取引やカード情報の流出が疑われる場合は、利用している金融機関やカード会社の公式窓口へ連絡しましょう。
企業から流出の通知が届いた場合は、対象となる情報と推奨される対応を確認し、必要な手続きを進めることが大切です。
6. トレンドウォッチャーのひとこと
海外でも、データ侵害は深刻な課題になっています。
米国の非営利団体Identity Theft Resource Center(ITRC)が2026年1月に公表した「2025 Annual Data Breach Report」によると、2025年に同団体が追跡したデータ侵害などは3322件でした。2024年の3152件から5%増加し、同団体が追跡した過去最多を更新しています。
また、Verizonの2026年版DBIRは、世界145カ国で発生した2万2000件以上の確認済みデータ侵害を分析しています。同レポートでは、ソフトウェアの脆弱性を利用した攻撃が主要な侵入経路となり、第三者が関与する事案も増加していると報告しています。
日本でも、外部のクラウドサービスへの不正アクセスをきっかけに、利用企業が管理していた情報が流出した可能性のある事案が発生しています。海外の調査結果と国内の事例を照らし合わせると、利用者が直接契約している企業だけでなく、その企業が利用する外部サービスも情報管理のリスクに関係することが分かります。
個人が企業のシステム管理まで把握することは困難です。サービスごとに異なるパスワードを設定し、多要素認証を利用することに加え、企業からの通知を見落とさず、不審な連絡に注意することが、日常生活で取り組める対策になります。
参考資料
- 株式会社MM総研「サイバー攻撃による情報漏えい、2026年は4年前の約1.9倍に」
- タイムズカー「『タイムズカーWebシステム』への不正アクセスに関する調査結果および今後の対応について」
- skyticket「不正アクセスによるお客様情報の流出に関するお詫びとお知らせ」
- Studio「不正アクセスに関するご案内」
- ラクスル株式会社「当社が利用するクラウドサービスにおける不正アクセスに関するお知らせ」
- Verizon「2026 Data Breach Investigations Report」
- Identity Theft Resource Center「2025 Annual Data Breach Report」
- 警察庁
- 消費者庁
大蔵 大輔
