4. オープンソースを土台にした3つの稼ぎ方
顧客ニーズに応じた3つのビジネスモデル4/5
出所:株式会社ティアフォー「2026年9月期 第3四半期 決算説明資料」(2026年8月14日)p.8
技術を供給する側であるティアフォーは、どのようにして利益を生み出していくのでしょうか。
同社の技術の土台となっているのは、「Autoware(オートウェア)」という世界最大級の自動運転向けオープンソースソフトウェアです。これは同社の創業者が立ち上げを主導したもので、誰でも無償で使うことができます。実際、Autowareのコードに貢献している技術者の68%(人数の構成比)は外部のエンジニアです。すべてを自社でゼロから開発するのではなく、世界中のエンジニアの力を借りることで研究開発を効率化しています。
しかし、ソフトウェア自体が無償であれば、どこで収益化するのでしょうか。決算説明資料では、顧客ニーズに応じた3つのビジネスモデルが提示されています。
- モビリティサービス:自動運転車両を交通事業者などに提供し、ティアフォーブランドの車両として展開する
- デベロップメントサービス:自動運転システムを自動車メーカーに提供し、メーカーブランドの車両として展開する
- ソリューションサービス:ツールやサービスをパートナー企業に提供する
泉田氏によれば、現状の収入は開発受託が中心で、ソフトウェアでどうやって収入を得るか(ライセンス収入)を考えている段階です。
「オープンソースで作ったもの自体はおそらく無料なので、誰もが使えるからオープンソースなんだけど、それを加工した上で最終的なハードにするのか、システムとしてプラットフォームを作るのか、その状態によってその儲け方が変わってきますよ」
泉田氏は、開発した技術をどのように社会に実装していくかが次のポイントになると指摘します。
5. 日本での組み合わせとユーザー接点の重要性
日本での自動運転の組み合わせ(用途別)5/5
出所:Waymo・Uber・日産・NVIDIA・ティアフォー(決算説明資料p.16)の発表、Impress Watch(2026年8月13日)を基にイズミダイズム作成
では、日本の自動運転では誰が誰と組んでいるのでしょうか。泉田氏がまず取り上げたのは、東京のタクシーをめぐる2つの陣営です。
1つ目の陣営は、Waymoと日本交通・GOの組み合わせです。2027年に無人の商用運行を予定しています。2つ目の陣営は、英国のWayveと日産・Uber・日の丸交通の組み合わせで、2026年後半にパイロット(試験的な)運行を予定しています。いずれもまだ予定の段階です。また、量産車の運転支援(運転を手助けする機能)でも、Wayveと日産が組んでいます。
一方、ティアフォーはタクシーではなく、先行して注力するバス領域で国内企業と組んでいます。大型路線バスでは、ティアフォーとNVIDIAがいすゞと組み、レベル4(決められた条件の範囲内で、システムが運転をすべて担う段階)のバスを共同開発中です。また、小型バス「e-Palette(イーパレット)」では、実用化・量産に向けたプロジェクトをトヨタと推進しています。
この組み合わせを見たとき、最終的にどの陣営が勝つのでしょうか。泉田氏は、技術そのものよりも「ユーザーとの接点(タッチポイント)」を誰が持っているかが鍵を握ると分析します。
WaymoはAlphabetグループで、GoogleマップやGoogle Payを持っています。泉田氏は、検索するのと同じ感覚で車を呼び、目的地まで行けてしまえば、サービスがGoogleの中で完結しかねないと見ています。利用者が車のブランド(ハードウェア)より、A地点からB地点へ最短で、安く、安全に行けることを重視するようになれば、自動車メーカーはGoogleの下に入る構図になりかねない、というのが泉田氏の見立てです。一方、Wayve陣営には配車アプリを持つUberが参加しており、ユーザーとの強力な接点を持っています。
「どんなにハードが優れているとか言っても、やっぱりユーザーの数が多い人が勝っていっちゃう」「ユーザーのタッチポイントを押さえているやつが誰かっていうのを見れば、必然どのグループが勝つのかっていうのが見えてくる」
泉田氏は、この勝ち負けは国や地域によっても変わってくると付け加えています。
そして、泉田氏がもう1つ注目しているのが、タクシーの陣営にトヨタの名前がないことです。泉田氏は、トヨタのトップがかつて、自動車メーカーから移動サービスを提供する会社に変わるという趣旨の発言をしていたことを挙げ、トヨタは自分たちで移動サービスをやりたいはずだと見ています。そのうえで、海外勢への対抗馬は、もしかするとトヨタとティアフォーの組み合わせなのかもしれないと話しています。
6. まとめ:今後の観測点とリスク
ティアフォーの事業を評価する上で見るべきポイントは、ロボタクシーの車両台数ではありません。組んでいる相手との案件が実装(量産)まで進み、現在は開発受託が中心の収入に、量産後のソフトウェアのライセンス収入が積み上がっていくかどうかが観測点となります。特に、トヨタ(e-Palette)やいすゞ(大型路線バス)との案件がどこまで進むかが、同社が自動運転市場における有力な対抗馬になれるかを測る試金石となると考えられます。
一方で、注意すべき点もあります。東京のタクシーにおける自動運転の計画は、現時点ではいずれも予定の段階であり、最終的にどの陣営が市場を制するかは泉田氏の見立て(推論)の域を出ません。また、技術の開発から実際の運行までには時間がかかり、社会実装が想定より遅れる可能性もあります。
泉田氏は最後に、外資系のサービスに依存することで資金が海外に流出する「デジタル赤字」への懸念を示し、移動サービスという国のインフラに関わる領域だからこそ、国がこの国の移動・交通をどうしたいのかを決め、プレイヤーを選んでいくべきではないかと問題提起しています。
本記事は特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
参考資料
- 株式会社ティアフォー「2026年9月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」(2026年8月14日)
- 株式会社ティアフォー「2026年9月期 第3四半期 決算説明資料」(2026年8月14日)
- 株式会社ティアフォー「事業計画及び成長可能性に関する事項」(2026年7月)
- YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
各資料の入手先: 株式会社ティアフォー IRライブラリ
※リンクは記事作成時点のものです。