親の介護が続くなかで、同じ年に親の入院や通院が重なると、医療費と介護費の支払いが一度に増えます。どちらにも月ごとの上限はありますが、1年を通して見ると家計から出ていく額はまとまったものになります。

こうした世帯の負担を軽くするのが、医療保険と介護保険の自己負担を1年分合わせて計算する「高額医療・高額介護合算療養費制度」です。ただし、合算できるのは同じ医療保険に加入している家族の分だけで、同じ家に住んでいても合算できない組み合わせがあります。

この記事では、京都市や大津市の案内と、2026年10月に厚生労働省が公表した「介護保険事業状況報告(暫定)令和8年7月分」をもとに、合算できる家族の範囲と計算例、介護保険から支払われる分を整理します。

なお、高額療養費制度の年間上限に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。

今月から変わる【高額療養費制度】新設「年間上限」と手続きが必要な4つのケースを解説
今月から変わる【高額療養費制度】新設「年間上限」と手続きが必要な4つのケースを解説

1. 高額医療・高額介護合算療養費制度は、医療費と介護費を8月から翌年7月までの1年分で合算する

高額医療・高額介護合算療養費制度は、医療保険と介護保険の両方で1年間の自己負担が高額になった世帯に、基準額を超えた分を支給する制度です。京都市の案内から、計算の決まりを確認します。

1.1 計算期間は8月1日から翌年7月31日まで。基準日は7月31日

計算期間は、毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間です。期間の最後の日にあたる7月31日が基準日で、この日に加入している医療保険ごとに計算します。

医療保険か介護保険のどちらか一方しか支払いがない世帯は、対象になりません。親の介護費だけがかかった年は、この制度ではなく、介護保険の高額介護サービス費で負担を抑えることになります。

1.2 合算するのは、高額療養費や高額介護サービス費を差し引いたあとの自己負担

京都市の案内では、計算期間に支払った自己負担額から、高額療養費や高額介護サービス費として支給される額を除いた額を合算するとしています。食費や施設の居住費、差額ベッド代は合算の対象になりません。

高額療養費には、2026年8月から年単位の上限も設けられました。LIMOの記事「今月から変わる【高額療養費制度】新設「年間上限」と手続きが必要な4つのケースを解説」では、この年間上限について次のように説明しています。

ここでいう年間は8月から翌年7月までを指し、上限を超えた分は加入医療保険に申請することで還付されます。

出所:今月から変わる【高額療養費制度】新設「年間上限」と手続きが必要な4つのケースを解説

高額医療・高額介護合算療養費制度の計算期間も、同じ8月から翌年7月までの1年間です。

2. 同じ家に住んでいても、加入している医療保険が違う家族とは合算できない

高額医療・高額介護合算療養費制度でいう「世帯」は、住民票の世帯とは考え方が違います。合算できるのは、基準日に同じ医療保険に加入している家族の分だけです。

高額医療・高額介護合算療養費制度は、7月31日時点で加入している医療保険ごとに合算する1/2

大津市の案内の例をもとに、6人世帯のうち後期高齢者医療制度に加入する父と母、国民健康保険に加入する世帯主と長男、会社の健康保険に加入する妻と次男が、それぞれ別々に医療費と介護費を合算して申請することを示した図

出所:大津市「国民健康保険 高額医療・高額介護合算療養費制度について」をもとにLIMO編集部作成

2.1 75歳以上の両親がともに後期高齢者医療制度なら、父の医療費と母の介護費を合算できる

大津市の案内では、6人で暮らす世帯の例を示しています。75歳以上の父と母は後期高齢者医療制度に加入しているので、2人の医療費と介護費を合算して、後期高齢者医療制度に申請します。

同じ家に住む世帯主と長男は国民健康保険、会社員の妻とその被扶養者の次男は会社の健康保険に加入しているため、それぞれの医療保険ごとに別々に合算します。親の医療費や介護費を、同居する子の分と合わせることはできません。

2.2 77歳の夫と74歳の妻のように、夫婦でも医療保険が違えば別々に計算する

京都市は、77歳で後期高齢者医療制度に加入している人と、74歳で国民健康保険に加入している人は、同じ世帯でも別々に計算するとしています。夫婦の一方だけが75歳になって後期高齢者医療制度に移ると、その年からは夫婦の分を合算できなくなります。

3. 【計算例】後期高齢者医療制度の両親で、父の医療費30万円と母の介護費36万円を合算すると10万円が戻る

ここからは、75歳以上の両親がともに後期高齢者医療制度に加入している世帯を例に、戻る額を計算します(LIMO編集部の計算例。父と母の1年間の自己負担は、高額療養費や高額介護サービス費を差し引いたあとの額とします)。

3.1 一般の区分の基準額は56万円。合算額66万円との差の10万円が支給される

大津市の案内では、後期高齢者医療制度の基準額は、所得が一般の区分で56万円です。市民税非課税の区分は31万円と19万円、現役並み所得の区分は67万円・141万円・212万円です。

1年間の自己負担が、父の入院・通院の医療費で30万円、要介護の母の介護サービスで36万円(月3万円の12か月分)だったとします。合算すると66万円で、基準額の56万円を10万円上回ります。大津市の案内では、基準額を超えた額が500円以下なら支給されないので、この例は支給の対象です。

父の医療費30万円と母の介護費36万円を合算すると、基準額56万円を超えた10万円が戻る(計算例)2/2

後期高齢者医療制度に加入する両親の1年間の自己負担について、父の医療費30万円と母の介護費36万円を合算した66万円から、一般の区分の基準額56万円を引いた10万円が支給され、医療保険から約4万5500円、介護保険から約5万4500円に分かれることを示した図

出所:大津市「国民健康保険 高額医療・高額介護合算療養費制度について」、京都市「高額医療・高額介護合算療養費制度について」をもとにLIMO編集部作成

3.2 同じ66万円でも、市民税非課税の区分なら基準額は31万円か19万円

基準額は所得の区分で変わります。市民税非課税の区分なら、基準額は31万円または19万円で、一般の区分より少ない自己負担で対象になります。

ただし、所得の区分によって、月ごとの高額療養費や高額介護サービス費の上限も違います。実際の自己負担額も変わるので、親の区分は後期高齢者医療制度の資格確認書や介護保険の通知で確かめておきましょう。

4. 介護保険から支払われる分は「高額医療合算介護サービス費」。令和8年6月の支出決定分は118億円

高額医療・高額介護合算療養費制度で戻るお金は、医療保険と介護保険の両方から支払われます。介護保険から支払われる分は「高額医療合算介護(予防)サービス費」と呼ばれます。

4.1 戻る額は、医療と介護の自己負担の割合で分けて、それぞれの保険から支払われる

京都市の案内では、支給額は、各医療保険・介護保険が支払った額に応じて按分し、それぞれの保険から支払うとしています。計算例の10万円を、自己負担の割合(医療30万円・介護36万円)で分けると、医療保険から約4万5500円、介護保険から約5万4500円になる計算です。

4.2 介護保険事業状況報告では、高額医療合算介護サービス費は118億円、高額介護サービス費は248億円

厚生労働省が2026年10月に公表した「介護保険事業状況報告(暫定)令和8年7月分」によると、令和8年5月サービス分(償還給付は6月支出決定分)の高額医療合算介護(介護予防)サービス費は118億円でした。同じ月の高額介護(介護予防)サービス費は248億円です。

同じ月の保険給付費の総額は9848億円で、介護保険の給付の多くはサービスの費用そのものに使われています。高額医療合算介護サービス費は、月ごとの上限とは別に、1年分の医療と介護の負担を精算するための給付です。

高額医療・高額介護合算療養費制度は、7月31日に同じ医療保険に加入している家族の、8月から翌年7月までの医療費と介護費を合算する制度です。後期高齢者医療制度の一般の区分なら、基準額は56万円です。

親の医療費と介護費を合算できるかどうかは、両親がどの医療保険に加入しているかで決まります。親の資格確認書や保険証の表示で、加入している医療保険を確かめておくと、対象になるかを見通しやすくなります。

ここからは、計算期間の途中で親が75歳になったときの扱いと、申請先や申請の期限を見ていきます。

熊谷 良子

医療費の領収書と介護サービスの利用明細は、別々にしまわれがちです。8月から翌年7月までの1年分を同じ封筒にまとめておくと、お知らせが届いたときに家族で金額を確かめやすくなると思います。