3. 日常生活自立支援事業を使い始めるまでの流れ

日常生活自立支援事業は、申し込めばすぐに始まるものではありません。本人の状況を確かめてから契約を結ぶまでの手順を、厚生労働省の説明にそって確認します。

3.1 相談から契約まで4つの段階

  • 利用を希望する人が、実施主体に申請(相談)する
  • 実施主体が生活の状況や希望する援助の内容を確かめ、契約の内容について判断する能力があるかを判定する
  • 対象と判断されたら、本人の意向を確かめながら「支援計画」をつくり、契約を結ぶ
  • 支援計画は、本人の状況や判断能力の変化などをふまえて定期的に見直す

熊本市社会福祉協議会の案内にも、相談から契約・利用開始までには時間がかかるとあります。支払いの期限が迫ってから動くより、気になり始めた段階で相談しておくほうが手続きに余裕を持てるのです。

3.2 契約締結審査会と運営適正化委員会

本人の判断能力や契約の内容は、契約締結審査会で確かめられます。事業が適正に運営されているかは、第三者的な機関である運営適正化委員会が監督します。

本人のお金を預かる事業だからこそ、こうしたしくみで信頼性を高めていると厚生労働省は説明しています。

4. 成年後見制度との違いは家庭裁判所が関わるかどうか

日常のお金の管理を手伝う制度には、家庭裁判所が後見人などを選ぶ成年後見制度もあります。2つの制度の違いと、成年後見の利用の状況を見ておきます。

4.1 本人が契約を結べるかどうか

日常生活自立支援事業は、本人が社会福祉協議会と契約を結んで使う事業です。本人との契約が難しい場合について、茨城県社会福祉協議会は成年後見制度を使って後見人などと契約する方法を挙げています。

成年後見制度では、家庭裁判所の審判によって成年後見人・保佐人・補助人が選ばれます。日常生活自立支援事業の契約が結べるかどうかは、制度を選ぶときの目安の1つになります。

4.2 成年後見の申立ての動機は「預貯金等の管理・解約」が93.4%

最高裁判所の「成年後見関係事件の概況」によると、2025年に終局した成年後見関係事件は4万2674件でした。申立ての主な動機を見ると、預貯金のお金の管理や解約が9割を超えています。

成年後見関係事件の主な申立ての動機(2025年)2/2

2025年に終局した成年後見関係事件の主な申立ての動機の割合を示す横棒グラフ。預貯金等の管理・解約93.4%、身上保護74.2%、介護保険契約45.7%、不動産の処分36.3%、相続手続25.6%、保険金受取17.8%

出所:最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況(令和7年1月~12月)」を参考にLIMO編集部作成

  • 預貯金等の管理・解約:3万9871件(93.4%)
  • 身上保護:3万1655件(74.2%)
  • 介護保険契約:1万9502件(45.7%)
  • 不動産の処分:1万5502件(36.3%)
  • 相続手続:1万909件(25.6%)
  • 保険金受取:7578件(17.8%)

1件の事件に動機が複数ある場合もあるため、割合を足すと100%を超えます。割合は、終局した事件4万2674件に対する比率です。

4.3 成年後見制度の利用者は25万9901人

2025年12月末時点で成年後見制度を利用している人は、成年後見・保佐・補助・任意後見を合わせて25万9901人でした。前の年の25万3941人から約2.3%増えています。

内訳は、成年後見が18万828人、保佐が5万8162人、補助が1万8078人、任意後見が2833人です。補助は前の年より約7.2%増え、4つの中でいちばん伸びが大きくなりました。

5. まとめにかえて

日常生活自立支援事業は、社会福祉協議会が契約にもとづいて、福祉サービスの手続きや日常のお金の管理、通帳などの預かりを手伝う事業です。利用料は地域ごとに決まり、厚生労働省が示す訪問1回あたりの平均約1200円で月2回使うと、年2万8800円になります。

生活保護を受けている世帯の利用料と、契約前の相談は無料です。一方で、財産の運用や重要な財産の処分はできず、本人が契約を結べないときは成年後見制度を検討することになります。

親のお金の管理に不安を感じたら、お住まいの市区町村の社会福祉協議会に、利用料と頼める範囲を問い合わせてみてください。成年後見制度については、家庭裁判所の窓口で手続きの流れを確かめられます。

参考資料

太田 彩子