離れて暮らす親の通帳や公共料金の支払いが気になっても、家族がいつも手伝えるとは限りません。かといって、いきなり家庭裁判所の手続きに進むのはハードルが高いと感じる人もいるでしょう。

最高裁判所が2026年3月にまとめた「成年後見関係事件の概況」では、2025年の成年後見の申立ての動機は「預貯金等の管理・解約」が93.4%で最も多くなりました。日常のお金の管理を手伝うしくみとしては、社会福祉協議会の日常生活自立支援事業もあり、厚生労働省は訪問1回あたりの利用料の平均を約1200円と示しています。

この記事では、日常生活自立支援事業で頼めることと、利用料が年いくらになるかを確かめます。

1. 【日常生活自立支援事業】社会福祉協議会が日常のお金の管理を手伝う

日常生活自立支援事業は、判断能力に不安がある人の暮らしを、契約にもとづいて手伝う事業です。まずは、だれが実施し、だれが使えるのかを見ていきましょう。

1.1 実施するのは社会福祉協議会

実施主体は、都道府県・指定都市の社会福祉協議会です。相談の受付などの窓口業務は、市町村の社会福祉協議会などが担っています。

厚生労働省のページでも、相談はお住まいの市町村の社会福祉協議会で受け付けていると案内されています。身近な窓口から話を始められるのです。

1.2 日常生活自立支援事業の対象になる人

対象は、認知症高齢者・知的障害者・精神障害者などのうち、判断能力が不十分な人です。福祉サービスの情報を手に入れたり、理解・判断したり、意思を伝えたりすることを、本人だけでは適切に行うのが難しい人を指します。

そのうえで、この事業の契約内容について判断できる能力があると認められることも条件です。本人が社会福祉協議会と契約を結んで利用するしくみになっています。

1.3 頼めるのは3つの援助

援助の中心は福祉サービスの利用援助で、日常的な金銭管理と書類などの預かりを組み合わせて使えます。たとえば愛知県社会福祉協議会の案内では、3つの援助の中身は次のとおりです。

  • 福祉サービスの利用援助:福祉サービスを使う・やめるための手続き、利用料の支払い、苦情解決制度を使う手続きなど
  • 日常的金銭管理サービス:年金や福祉手当の受け取りに必要な手続き、医療費・税金・社会保険料・公共料金の支払い、それにともなう預金の払い戻し・解約・預け入れ
  • 書類等の預かりサービス:預貯金の通帳、権利証、契約書類、実印・銀行印などを預かる

一方で、できないこともあります。たとえば熊本市社会福祉協議会では、株券・不動産などを含む財産の運用管理、借金の返済の代行、不動産など重要な財産の処分は対象外です。

2. 日常生活自立支援事業の利用料は訪問1回あたり平均1200円

日常生活自立支援事業の利用料は、実施主体が定め、利用者が負担します。そのため金額は地域によって異なり、厚生労働省は参考として訪問1回あたりの平均を約1200円と示しています。

2.1 月2回使った場合の年額

では、年にするといくらになるのでしょうか。生活支援員の訪問を月2回、年24回使う場合を、厚生労働省の平均と2つの社会福祉協議会の料金で計算しました。

日常生活自立支援事業を月2回使った場合の利用料(年額)1/2

日常生活自立支援事業で生活支援員の訪問を月2回、年24回使った場合の利用料の年額を比べた横棒グラフ。厚生労働省の平均1200円では2万8800円、熊本市社会福祉協議会では書類の預かりを含めて2万4600円、茨城県社会福祉協議会では書類の預かりを含めて4万2000円

出所:厚生労働省「日常生活自立支援事業」、熊本市社会福祉協議会「日常生活自立支援事業」、茨城県社会福祉協議会「日常生活自立支援事業のご案内」を参考にLIMO編集部作成

  • 厚生労働省の平均(訪問1回約1200円):2万8800円
  • 熊本市社会福祉協議会(日常的金銭管理1回900円、書類の預かり月250円):2万4600円
  • 茨城県社会福祉協議会(1時間1500円で1回1時間とした場合、書類の預かり月500円):4万2000円

茨城県社会福祉協議会は、2025年10月1日に1時間あたりの利用料を1100円から1500円に改定しました。書類の預かりは、銀行の貸金庫の使用料の実費相当として月500円のままです。

2.2 生活保護を受けている世帯は無料

厚生労働省は、生活保護を受けている世帯の利用料と、契約を結ぶ前の初期相談などにかかる費用を無料としています。熊本市社会福祉協議会でも、生活保護を受けている人は無料で、相談から契約までは料金がかかりません。

ただし、無料になる範囲の書き方は地域で違います。たとえば茨城県社会福祉協議会では、生活保護を受けている人の福祉サービス利用援助の利用料を公費で負担すると案内しており、どこまで無料かは利用する地域の社会福祉協議会で確かめておくと安心です。

日常生活自立支援事業は、社会福祉協議会が日常のお金の管理や通帳などの預かりを手伝う事業です。利用料は訪問1回あたり平均約1200円で、月2回なら年2万8800円が目安になります。

親の通帳や支払いが気になり始めたら、お住まいの市区町村の社会福祉協議会で、利用料と頼める範囲を聞いてみてください。契約を結ぶ前の相談は無料です。

ここからは、相談から契約までの流れと、家庭裁判所が関わる成年後見制度との違いを見ていきます。