3. 【5年前と比べると?】定年退職者の月収換算はどの区分も短く
5年前の平成30年調査と比べると、定年退職者の月収換算は、「大学・大学院卒(管理・事務・技術職)」が38.6か月分から36.0か月分、「高校卒(管理・事務・技術職)」が40.6か月分から38.6か月分、「高校卒(現業職)」が36.3か月分から34.3か月分になりました。
一方で、1人平均の退職給付額は、高校卒の2つの区分では増え、大学・大学院卒(管理・事務・技術職)では1983万円から1896万円に減っています。退職時の所定内賃金は、3つの区分とも増えました。
こうしてみると、退職金の金額が増えた区分でも、月給の伸びのほうが大きかったため、月給の何か月分かという見方では短くなったと考えられます。退職金を「月給の何か月分」で考えるときは、金額と月給の両方の動きをあわせて見ることが大切です。
定年以外の理由でも比べてみると、自己都合で退職した人の月収換算は、3つの区分とも長くなっていました。たとえば「高校卒(現業職)」は23.9か月分から29.5か月分です。定年で辞めた人と自己都合で辞めた人とでは、5年前からの動きが逆になっています。
ただし、月数の動きだけで、どちらの辞め方が有利かを決めることはできません。
退職金は勤め先の制度や勤続年数、辞めるときの年齢などによって変わるため、自分の場合にあてはめて考えることが大切です。数字の動きは、勤め先の制度を確かめるきっかけとして受け止めておくとよいでしょう。
4. 【退職金の見込みを確かめるには】制度・計算の基になる給与・辞める時期の3つを確かめる
自分の退職金がどのくらいになりそうかは、次の3つの順で確かめていくと整理しやすくなります。
まず、勤め先に退職金の制度があるかどうかと、その形を確かめましょう。同じ調査では、退職給付制度がある企業は74.9%で、制度がない企業もあります。制度がある場合も、一時金だけなのか、年金の制度もあるのかによって、受け取り方が変わります。企業規模別にみると、退職給付制度がある企業の割合は、1,000人以上で90.1%、30~99人で70.1%です。
次に、退職金の計算の基になる給与や勤続年数の扱いを、退職金の規程などで確かめます。今回の調査の月収換算は、退職時の所定内賃金に対する割合を示したもので、実際の退職金がどの給与をもとに計算されるかは会社によって違います。退職金の決まり方は会社によって違うため、自分の会社の決まりを知っておくことが、見通しを立てる第一歩になります。規程を確かめたら、今後の昇給や勤続年数の見込みとあわせて、自分の退職金のおおよその見通しを立ててみましょう。
そして、辞める時期と理由によって金額が変わる点を押さえておきます。同じ勤続20年以上の人でも、定年と自己都合では月収換算が違いました。転職や早期退職を考えるときは、退職金がどう変わるのかも一緒に確かめておくと、これからの働き方を決めるときの判断材料の一つになるでしょう。
あわせて、受け取り方による税金の違いも知っておきましょう。国税庁によると、退職金を一時金で受け取ると「退職所得」として、年金で受け取ると「公的年金等」の雑所得として税金を計算します。受け取る時期が近づいたら、勤め先の制度とあわせて確かめておくとよいでしょう。
退職金の見通しがある程度立つと、老後のお金全体の計画も考えやすくなります。公的年金の金額の目安は、毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」(50歳以上は見込額、50歳未満はこれまでの加入実績に応じた金額)や、ねんきんネットの試算で確かめられます。退職金の見通しと並べてみると、老後に向けて自分で準備しておきたいお金の目安をつかむ手がかりになるでしょう。昇給や転職などで給料や働き方が変わったときにも、あらためて見直してみることをおすすめします。
5. まとめにかえて
今回見たように、退職金は辞める理由や時期によって変わります。調査の平均では、早期優遇の月収換算が最も長く、自己都合は定年より短くなっていました。転職が当たり前になった今、次の職場を選ぶときに、退職金の制度があるかどうかも確かめておきたいところです。
給料が上がっても、退職金の計算のしかたは会社によって違います。勤め先の退職金の規程や、企業年金の案内を一度読んでおくと、これからのお金の計画を立てる手がかりになるでしょう。退職金の受け取り方によって税金の計算のしかたも変わります。退職金は多くの人にとって一度きりのまとまったお金なので、使い道とあわせて早めに考えておきたいものです。受け取り方は人それぞれなので、受け取る時期が近づいたら早めに確認しておくとよいでしょう。
参考資料
- 厚生労働省「令和5年就労条件総合調査の概況」
- 厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026(令和8)年8月分結果速報」
- 国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」
- 国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」
宮野 茉莉子
