がんの治療や入退院の繰り返しで、高額療養費に当てはまる月が何か月も続くことがあります。毎月の上限まで払い続けると、家計の負担は大きくなります。
高額療養費の月の上限は2026年8月診療分から引き上げられましたが、4回目から上限が下がる「多数回該当」の額は据え置かれました。厚生労働省は、長く治療を続けている人の負担を増やさないためと説明しています。
この記事では、多数回該当の仕組みと、区分ウで医療費40万円の月が6か月続いた場合の計算例を確認します。
なお、高額療養費制度に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。
1. 高額療養費の多数回該当は、直近12か月に3回以上該当すると4回目から上限が下がる仕組み
高額療養費は、同じ月に支払った医療費の自己負担額が上限を超えたときに、超えた分が払い戻される制度です。多数回該当は、この払い戻しが続いたときにさらに上限を下げる仕組みです。
1.1 多数回該当は、高額療養費の払い戻しを受けた月数で数える
全国健康保険協会(協会けんぽ)は、高額療養費として払い戻しを受けた月数が直近12か月間で3か月以上あったときは、4か月目から自己負担限度額がさらに引き下げられると案内しています。
多数回該当の仕組みについては、LIMOの記事「今月から変わる【高額療養費制度】新設「年間上限」と手続きが必要な4つのケースを解説」でも次のように説明しています。
直近12ヶ月で高額療養費に3回以上該当した場合、4回目以降は自己負担限度額がさらに低い水準(多数回該当区分)に切り替わります。
出所:今月から変わる【高額療養費制度】新設「年間上限」と手続きが必要な4つのケースを解説
1.2 2026年8月診療分から月の上限は上がったが、多数回該当の額は据え置き
2026年8月診療分から、70歳未満の月の上限は5つの区分すべてで引き上げられました。たとえば年収約370万〜約770万円の区分ウは、8万100円+(医療費が一定額を超えた分の)1%から8万5800円+(医療費が一定額を超えた分の)1%になりました。
一方で、多数回該当の額は変わっていません。厚生労働省の資料は、見直しのポイントの1つめに長期療養者への配慮を挙げ、次のように記しています。
多数回該当の金額を据え置き-長期に継続して治療を受けられている方の経済的負担を増加させない。
出所:厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて(令和8年8月診療分から)」
【70歳未満の多数回該当の額(2026年8月〜2027年7月診療分)】
- 区分ア(年収約1160万円〜):14万100円
- 区分イ(年収約770万〜約1160万円):9万3000円
- 区分ウ(年収約370万〜約770万円):4万4400円
- 区分エ(年収約370万円まで):4万4400円
- 区分オ(住民税非課税):2万4600円
2. 【計算例】区分ウで医療費40万円の月が6か月続くと、多数回該当で自己負担は12万7620円少なくなる
多数回該当でどのくらい負担が変わるのかを、計算例で確かめます。前提は、70歳未満の区分ウの人が、1つの医療機関で毎月40万円の医療費がかかる治療を6か月続けた場合です。
2.1 1〜3回目の上限は8万6940円、4回目からは4万4400円
窓口負担が3割なら、毎月の窓口での負担は12万円です。区分ウの月の上限は、8万5800円+(40万円−28万6000円)×1%で8万6940円になります。
1〜3回目は、12万円との差の3万3060円が高額療養費として払い戻されます。4回目からは多数回該当で上限が4万4400円になり、払い戻しは7万5600円に増えます。
2.2 6か月の自己負担は39万4020円で、多数回該当がなければ52万1640円
6か月の自己負担は、8万6940円×3か月と4万4400円×3か月を合わせた39万4020円です。多数回該当がなく毎月8万6940円を負担した場合の52万1640円と比べると、12万7620円少なくなります。
入院時の食事代や差額ベッド代は、高額療養費の対象になりません。また、2026年8月からは8月〜翌年7月の自己負担に年間上限(区分ウは53万円)も設けられましたが、この計算例の6か月分は年間上限に届いていません。
3. 令和7年度の医療費の動向では、医科病院の1回の入院あたりの医療費は推計130.3万円
多数回該当が関わることが多いのは、入院などの高額な治療が続く場合です。厚生労働省が2026年8月28日に公表した「令和7年度 医療費の動向」から、入院1回あたりの医療費の水準を確認します。
3.1 医科病院の推計平均在院日数は29.0日、推計1入院当たり医療費は130.3万円
令和7年度の医療費は49.2兆円で、前年度より約1.3兆円増えました。このうち入院の医療費は19.6兆円です。
医科病院の推計平均在院日数は29.0日、推計1入院当たり医療費は130.3万円でした。推計1入院当たり医療費は、推計平均在院日数に入院の1日当たり医療費を掛けた値で、入院時の食事療養などの費用も含みます。
3.2 医療費130万円の月なら、区分ウの上限は9万5940円
仮に1か月の医療費が130万円だった場合、区分ウの上限は8万5800円+(130万円−28万6000円)×1%で9万5940円です。高額療養費は月ごとに計算するため、入院が2か月にまたがると、それぞれの月で上限を当てはめます。
高額療養費の月の上限は2026年8月診療分から引き上げられましたが、多数回該当の額は区分ウで4万4400円のまま据え置かれました。医療費40万円の月が6か月続く計算例では、多数回該当によって自己負担が12万7620円少なくなります。
自分がどの区分に当たるかは、加入している健康保険の案内で確かめられます。協会けんぽでは、標準報酬月額28万〜50万円が区分ウです。
ここからは、多数回該当の回数が数え直しになる場合と、70歳以上の人の数え方、払い戻しまでの立て替えを軽くする制度を見ていきます。
治療が長引くと、何回目の払い戻しなのかを本人も家族も把握しにくくなります。
高額療養費の支給の通知や領収書を月ごとにまとめておくと、多数回該当に当たるかどうかを書面で確かめやすくなると思います。

