4. 厚生年金保険料の天引きで手取りは月8967円減る
年金は減らなくても、給与の手取りは変わります。厚生年金保険料率は18.3%で、勤め先と本人が半分ずつ負担します。
4.1 標準報酬月額9万8000円なら
標準報酬月額9万8000円の人の厚生年金保険料は、本人負担が月8967円、年間では10万7604円です。同じ額を勤め先も負担しています。
このほか、勤め先の健康保険の保険料も天引きされます。料率は加入する健康保険によって違うため、給与明細で確かめてください。
4.2 国民健康保険からは自分で抜ける
74歳までの人は、勤め先の健康保険に入ると国民健康保険から外れます。ただし、職場の健康保険に加入したことで自動的に国民健康保険をやめることにはならず、14日以内の脱退の届出が必要とされています。
届出をすれば、それまで払っていた国民健康保険料はかからなくなります。勤め先の健康保険料と比べると、負担が軽くなる人もいるでしょう。
5. 加入した分は在職定時改定で年金に上乗せされる
保険料を払った分は、年金に反映されます。65歳以上70歳未満で老齢厚生年金を受け取りながら厚生年金に入っている人は、毎年9月1日を基準日として年金額が見直される在職定時改定の対象です。
5.1 2027年10月分から年5909円増える計算
在職定時改定では、前年9月から当年8月までの加入期間が反映され、10月分の年金から増えます。2026年10月に加入した人なら、2027年8月までの11か月分が、2027年10月分の年金から上乗せされる形です。
- 2026年10月〜2027年8月(11か月):年5909円増える
- その後も1年(12か月)加入するごと:年6446円ずつ増える
増える額は、標準報酬月額9万8000円に1000分の5.481と加入月数を掛けた概算です。10月分の年金は12月の支給日に振り込まれます。
5.2 保険料と増える年金を比べると
1年間の本人負担10万7604円に対し、1年分で増える年金は年6446円です。払った保険料に届くまでには、単純計算で17年ほどかかります。
ただし、増えた年金は一生受け取れるうえ、勤め先の健康保険に入ることで国民健康保険料がかからなくなる面もあります。保険料の負担だけで損得を決めず、家計全体で考えることが大切です。
6. 年金を受け取りながら厚生年金に入ったら確かめたいこと
10月から厚生年金に入った人は、次の3つを確かめておくと安心です。
6.1 給与明細の保険料
10月分以降の給与明細で、厚生年金保険料と健康保険料が天引きされているかを見ます。標準報酬月額が分からないときは、勤め先の人事・総務の担当に聞いてみてください。
6.2 国民健康保険の脱退の届出
74歳までの人は、お住まいの市区町村に国民健康保険の脱退を届け出ます。75歳以上の人は後期高齢者医療制度に加入しているため、この手続きはありません。
6.3 年金の支給停止の有無
老齢厚生年金が多く、給与と合わせて月65万円に近い人は、支給停止の対象にならないかを年金事務所やねんきんダイヤルで確かめておきましょう。
7. まとめにかえて
2026年10月1日に厚生年金の賃金要件がなくなり、週20時間以上働く人は、勤め先の規模などの要件を満たせば厚生年金に入ることになりました。年金を受け取りながら加入しても、給与と老齢厚生年金の合計が月65万円以下なら、年金は全額支給されます。
月給10万円の人なら、厚生年金保険料の本人負担は月8967円です。加入した分は在職定時改定で反映され、2026年10月に加入した人は2027年10月分から年5909円増える計算になります。
年金額は年金額改定通知書で、保険料は給与明細で確かめられます。分からないときは、勤め先の担当者や年金事務所、市区町村の国民健康保険の窓口に相談してみてください。
参考資料
- 日本年金機構「2026(令和8)年10月に社会保険の短時間労働者に係る賃金要件が撤廃されました」
- 日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」
- 日本年金機構「厚生年金保険料額表」
- 日本年金機構「報酬比例部分」
- 江戸川区「脱退の届出(国保をやめるとき)」
太田 彩子