2026年10月1日、パートなどの短時間労働者が勤め先の健康保険・厚生年金に入るかどうかを決める要件のうち、月額8万8000円以上という賃金要件がなくなりました。

年金を受け取りながら週20時間以上働いている人の中にも、10月から厚生年金に入った人がいるでしょう。

そこで気になるのが、すでに受け取っている年金への影響です。「もし10月から厚生年金に入って働いたら、65歳以上が受け取る年金は減るの?」と気になる方も多いでしょう。

日本年金機構の案内をもとに、この疑問に答えます。

1. 【賃金要件の撤廃】年金を受け取りながら10月から厚生年金に入ったら年金は減るのか

今回取り上げるのは、次のような疑問です。

「66歳で老齢年金を受け取りながら、スーパーで週20時間ほどパートをしています。月給は10万円ほどで、10月から勤め先の厚生年金に入ることになりました。受け取っている年金は減ってしまうのでしょうか?」

先に結論をお伝えすると、多くの場合は減りません。年金が減るのは、給与と老齢厚生年金を合わせた額が月65万円を超えたときだからです。

一方で、給与からは厚生年金保険料が天引きされるようになり、手取りは減ります。そのかわり、加入した期間の分だけ翌年から年金が増えていきます。順に確認していきましょう。

2. 10月1日に厚生年金の賃金要件がなくなった

日本年金機構は、2026年10月1日に短時間労働者の賃金要件が撤廃されたことを知らせています。これまでは、週20時間以上働いていても、月の所定内賃金が8万8000円に届かなければ加入の対象外でした。

2.1 残っている3つの要件

賃金要件がなくなったあとも、次の3つの要件は残っています。3つとも満たすと、勤め先の健康保険と厚生年金に入ることになります。

  • 週の所定労働時間が20時間以上であること
  • 勤め先が従業員数51人以上の企業であること
  • 学生ではないこと

2.2 70歳以上は厚生年金に入らない

厚生年金に加入するのは70歳未満の人です。日本年金機構によると、70歳以上の人は厚生年金適用事業所で働いていても厚生年金の被保険者にはなりませんが、在職による年金の支給停止は行われます。

3. 在職老齢年金の基準は月65万円

働きながら老齢厚生年金を受け取る人の年金は、在職老齢年金の仕組みで調整されます。2026年度は、基準額が65万円です。

3.1 計算に使う2つの額

基準と比べるのは、「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計です。基本月額は加給年金額を除いた老齢厚生年金の月額、総報酬月額相当額は標準報酬月額に直近1年間の賞与を12で割った額を足したものです。

合計が65万円以下なら、年金は全額支給されます。65万円を超えると、超えた額の半分が老齢厚生年金から止まる仕組みです。老齢基礎年金は、給与がいくらでも全額支給されます。

3.2 月給10万円・老齢厚生年金が月8万円の場合

冒頭の人の月給10万円は、厚生年金の標準報酬月額では9万8000円の等級にあたります。老齢厚生年金が月8万円だとすると、合計は17万8000円です。

月給10万円のパートなら、老齢厚生年金と合わせても月65万円の基準を大きく下回る1/2

月給10万円(標準報酬月額9万8000円)と老齢厚生年金月8万円の合計17万8000円を、在職老齢年金の基準額65万円と比べた図

出所:日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」をもとにLIMO編集部作成

  • 標準報酬月額:9万8000円
  • 老齢厚生年金の月額(基本月額):8万円
  • 合計:17万8000円
  • 在職老齢年金の基準額:65万円

基準まで47万2000円の余裕があり、年金は1円も止まりません。週20時間前後のパートで基準を超えるのは、受け取っている老齢厚生年金がかなり多い人に限られます。

年金が減るかどうかは、給与と老齢厚生年金の合計が月65万円を超えるかどうかで決まります。自分の老齢厚生年金の月額は、年金額改定通知書や年金振込通知書で確かめられます。

太田 彩子

勤め先の健康保険に入っても、国民健康保険の脱退は自分で届け出る必要があります。届け出るまでは国民健康保険の資格が残り、保険料の通知も届き続けるので、職場の資格情報が届いたら早めにお住まいの市区町村で手続きをしておくと安心です。