「給与は上がったはずなのに、暮らしが楽になった実感がない」と感じている人もいるのではないでしょうか。物価が上がっているいまは、額面の伸びだけでは家計の変化がつかみにくいものです。
賃金の動きを見る統計には、毎月の給与を集計する厚生労働省の「毎月勤労統計調査」と、1年分の給与をまとめる国税庁の「民間給与実態統計調査」があります。どちらも、2026年の秋に新しい結果が公表されました。
この記事では、2026年8月分の実質賃金と2025年分の平均年収を並べ、賃金が物価の伸びに追いついているかを見ていきます。
1. 【2026年8月分の実質賃金】毎月勤労統計調査で8か月続けてプラスに
厚生労働省は2026年10月7日、「毎月勤労統計調査」の2026年8月分の結果速報を公表しました。働く人1人あたりの賃金が、物価の伸びと比べてどう動いたかが分かる統計です。
まずは、8月分の賃金と実質賃金の数字から確認します。
1.1 現金給与総額は31万1364円
事業所規模5人以上の現金給与総額は、1人平均で31万1364円でした。前の年の同じ月と比べて3.8%増えています。
現金給与総額は、基本給や残業代などの「きまって支給する給与」に、賞与など「特別に支払われた給与」を足した額です。所得税や社会保険料を差し引く前の金額にあたります。
1.2 物価の伸びは2.2%
同じ8月の消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)は、前の年の同じ月から2.2%上がりました。賃金の伸びが物価の伸びを上回ったため、物価を差し引いた実質賃金は1.5%増です。
実質賃金のプラスは8か月続いています。なお、消費者物価指数(総合)で計算した実質賃金も1.9%増で、こちらは9か月続けてのプラスでした。
2025年の1年間と2026年8月分で、賃金と物価の伸び方を比べた図1/2
出所:厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026(令和8)年8月分結果速報」、同「2025(令和7)年分結果確報」を参考にLIMO編集部作成
1.3 所定内給与は3.8%増
基本給にあたる所定内給与は27万7861円で、3.8%増えました。3%以上の伸びが8か月続くのは、33年10か月ぶりです。
フルタイムで働く一般労働者に限ると、所定内給与は35万3346円で3.8%増でした。一般労働者で3%以上の伸びが8か月続くのは、1994年1月に調査を始めて以来はじめてとされています。
2. 【平均年収】民間給与実態統計調査では2025年分で487万円
毎月の統計とは別に、1年分の給与をまとめた統計もあります。国税庁が2026年9月に公表した「民間給与実態統計調査」で、平均年収の動きを見てみましょう。
2.1 前の年から1.9%増えた
1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は、2025年分で487万円でした。前の年と比べて1.9%の増加です。
内訳は、給料・手当が412万円、賞与が75万円です。いずれも、税金や社会保険料を差し引く前の額面の金額にあたります。
- 2016年分:425万円
- 2017年分:433万6000円
- 2018年分:439万1000円
- 2019年分:438万4000円
- 2020年分:435万1000円
- 2021年分:445万7000円
- 2022年分:457万6000円
- 2023年分:459万5000円
- 2024年分:477万5000円
- 2025年分:486万6000円
2.2 2025年は物価の伸びに届かなかった
平均年収は2021年分から5年続けて増えています。ただ、毎月勤労統計調査の2025年分確報では、現金給与総額が2.3%増えた一方で、消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)は3.7%上がりました。
そのため、2025年の1年間の実質賃金は1.3%減でした。額面が増えても、買えるものの量で見ると目減りしていた年だったのです。
2026年に入ってからは、1月分から8月分まで実質賃金がプラスを保っています。2025年分の平均年収487万円に、こうした2026年の伸びが重なるかどうかは、来年秋に公表される2026年分の民間給与実態統計調査で確かめられます。
自分の年収が前の年からどれだけ伸びたかは、勤め先から受け取る源泉徴収票の「支払金額」の欄で比べられます。伸び率を物価の伸びと並べてみると、統計の数字との距離が分かりやすくなるでしょう。
ここからは、賃金が上がった分が手取りに反映されるまでの時間差と、給与明細で確かめたい欄を見ていきます。
賃金の統計は額面で集計されています。手取りがどう変わるかは、社会保険料や住民税がいつ見直されるかもあわせて確かめておくと安心です。
