昨年くらいから、人工知能(AI)が話題になることが増えました。AIによって、人間がやる必要のない作業については代替が進むことが予想されています。しかし、人間の関わりの本質的な部分がなくなることは考えられません。それが文章です。
10年ほど前、筆者が、ニュースサイトでコラムを書き始めた頃の話です。経済学者の野口悠紀雄が、「さらなる」は文法上間違っているので公文書では用いるべきではないと主張しました。法学者の星野英一は、「すべき」は文法上間違っているので公文書には不適切だと主張します。いずれも正しい指摘です。
しかし、時代に影響されない文章も存在します。中原淳一は、少女雑誌「ひまわり」の昭和22年4月号に次のような文を寄せています。
「美しいものにはできるだけふれるようにしましょう。美しいものにふれることで、あなたも美しさを増しているのですから」
今の時代でも通じるようなクオリティーのコピーだと思いませんか。このような文章は時代を経ても解釈が変わることはありません。私たちが日常使用する文章は、小説ではありません。仕事やメール、ブログやSNSに、文芸的なカッコよさは必要ありません。
とにかく下手でかまわないので、書くことを始めてましょう。私はいくつかのニュースサイトに記事を寄稿していますが、最初からうまく書けたわけではありません。書いているうちに、読まれる「伝わる文章」を速く書けるようになっていきました。
まずは継続してみよう
セミナーなどをしていると、「資料がつくりたいな」「文章が書けたらいいな」と思う一方で、「私にはできない」と考えてしまう人が多いことに驚かされます。その原因は、ほかの誰かと自分を比較していることにあります。その間違ったブロックを取りはずしましょう。
資料作成も文章も、コツさえ覚えてしまえばそんなに難しいことではありません。それには、続けてみることです。つくること、書くことが一番の近道です。せっかくなら、あなたの、大切な人のために資料を作成したり文章を書いてみませんか?
尾藤 克之