金の価格が高い水準で動くなか、円安が続いたことも国内の金価格を押し上げたのではないかと考える人もいるでしょう。
田中貴金属工業が2026年10月14日9時30分に公表した金の店頭小売価格(税込)は、1グラムあたり2万3469円でした。同社の年次の金価格推移では、2012年に1グラム4321円だった参考小売価格(税抜)の年平均が、2025年は1万7302円になっています。
この記事では、田中貴金属工業の年次の金価格推移をもとに、国内の金価格の上昇を「海外のドル建て価格の上昇」と「円安」の2つに分けて見ていきます。
なお、金価格に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。
1. 国内の金価格は、海外のドル建て価格と円ドルの為替の2つを受けて動く
金は海外では米ドル建てで取引されているため、国内の金価格は海外の相場と為替の両方の影響を受けます。田中貴金属工業が公表している年次の金価格推移で、3つの数字の関係を確認します。
1.1 田中貴金属工業の年次の金価格推移は、ドル建て価格・為替・国内価格の3つを並べている
田中貴金属工業の年次の金価格推移には、海外のドル建て価格(1トロイオンスあたり)、為替(T.T.S.の平均)、同社の参考小売価格(税抜・1グラムあたり)の3つが年ごとに載っています。1トロイオンスは約31.1035グラムです。
T.T.S.は、金融機関が顧客に外貨を売るときの為替相場です。1ドルあたりの円の数字が大きくなるほど円安、小さくなるほど円高を意味します。国内価格は消費税率の違いを避けるため、税抜の価格が使われています。
1.2 国内の金価格の年平均は、2012年の4321円から2025年は1万7302円へ約4.0倍に
2012年と2025年を比べると、国内の金価格の年平均は1グラム4321円から1万7302円になり、約4.0倍に上がりました。同じ期間に、海外のドル建て価格は1トロイオンス1668.86ドルから3431.54ドルへ、為替は1ドル80.81円から150.62円へ動いています。
【海外ドル建て価格(1トロイオンスあたり・年平均)】
- 2012年:1668.86ドル
- 2015年:1159.94ドル
- 2016年:1251.17ドル
- 2019年:1392.60ドル
- 2021年:1799.58ドル
- 2022年:1800.09ドル
- 2024年:2386.20ドル
- 2025年:3431.54ドル
【為替(T.T.S.・1ドルあたり・年平均)】
- 2012年:80.81円
- 2015年:122.11円
- 2016年:109.66円
- 2019年:110.03円
- 2021年:110.80円
- 2022年:132.63円
- 2024年:152.65円
- 2025年:150.62円
【国内価格(田中貴金属工業の参考小売価格・税抜・1グラムあたり・年平均)】
- 2012年:4321円
- 2015年:4564円
- 2016年:4396円
- 2019年:4918円
- 2021年:6402円
- 2022年:7649円
- 2024年:1万1718円
- 2025年:1万7302円
2. 国内の金価格の上昇を、ドル建て価格の上昇と円安に分けてみる(2012年〜2025年)
2012年から2025年にかけての国内の金価格の上昇は、ドル建て価格の上昇と円安が重なった結果です。それぞれが何倍になったかを、年平均の数字で計算します。
2.1 ドル建て価格は約2.06倍、為替は約1.86倍の円安で、掛け合わせると約3.83倍
海外のドル建て価格は、2012年の1668.86ドルから2025年の3431.54ドルへ約2.06倍になりました。為替は1ドル80.81円から150.62円へ動き、同じ1ドルを買うのに必要な円は約1.86倍になっています。
2つを掛け合わせると約3.83倍で、国内の金価格の約4.0倍のうち大部分は、ドル建て価格の上昇と円安の2つで説明できることになります。
2.2 為替が2012年の水準のままなら、2025年の国内の金価格は計算上1グラム約8900円
2025年のドル建て価格3431.54ドルを、2012年の為替80.81円で円に換算し、1トロイオンス約31.1035グラムで割ると、1グラムあたり約8915円になります。実際の2025年の国内価格1万7302円の半分ほどです。
これは為替だけを2012年の水準に置き換えた計算上の数字で、国内価格に含まれる費用などは考えていません。円安が進んでいなければ、国内の金価格の上昇は今より小さかったことが分かります。
3. 円安か円高かで、同じドル建て価格の動きでも国内の金価格は変わる
ドル建て価格と為替が同じ向きに動くとは限りません。年平均を前の年と比べると、為替の動きが国内の金価格を押し上げた年も、押し下げた年もあります。
3.1 2022年はドル建て価格がほぼ横ばいでも、円安で国内の金価格は19.5%上がった
2022年のドル建て価格は1800.09ドルで、2021年の1799.58ドルとほとんど変わりませんでした。一方で為替は110.80円から132.63円へ19.7%円安になり、国内の金価格は6402円から7649円へ19.5%、約1.2倍に上がっています。
3.2 2016年は円高で、ドル建て価格が上がっても国内の金価格は下がった
2016年のドル建て価格は1251.17ドルで、2015年の1159.94ドルから7.9%上がりました。しかし為替は122.11円から109.66円へ10.2%円高になり、国内の金価格は4564円から4396円へ3.7%下がっています。
2025年は為替が152.65円から150.62円へ1.3%円高でしたが、ドル建て価格が43.8%上がったため、国内の金価格は1万1718円から1万7302円へ47.7%上がりました。
【2012年→2025年】
- ドル建て価格:+105.6%
- 為替:+86.4%(円安)
- 国内価格:+300.4%
【2021年→2022年】
- ドル建て価格:+0.03%
- 為替:+19.7%(円安)
- 国内価格:+19.5%
【2015年→2016年】
- ドル建て価格:+7.9%
- 為替:-10.2%(円高)
- 国内価格:-3.7%
変化率は年平均の数字からLIMO編集部で計算し、小数点第2位を四捨五入しています(2021年→2022年のドル建て価格のみ第3位を四捨五入)。
国内の金価格は、2012年から2025年にかけて約4.0倍になりました。ドル建て価格の約2.06倍と、1ドル80円台から150円台への円安が重なった結果です。
手元の金の値動きを見るときは、ドル建て価格と為替のどちらが動いたのかを分けて確かめられます。田中貴金属工業の年次・月次の金価格推移には、3つの数字が並んで載っています。
ここからは、外貨建ての商品のご相談を受けてきた立場から、2026年に入ってからの金価格と為替の動きと、円建てで金を持つときに確かめておきたいことを見ていきます。
円で金を持っていると、金そのものの値動きに加えて為替の影響も受けます。ドル建ての相場が同じでも、円安なら円での評価額は上がり、円高なら下がるので、値動きの理由を2つに分けて見ておくと落ち着いて判断しやすくなります。

