3. 【宮野編集長の視点】赤字は平均余命より長めに見込み、退職金を3つの役割に分ける
ここからは、ご質問の「いくら生活費の補填以外で使えるのか」について、筆者の考えをお伝えします。ポイントは、赤字を見込む年数を平均余命より長めにとることと、退職金を一つの財布ではなく、役割ごとに分けて考えることです。
まず押さえておきたいのは、平均余命は「最後の年」ではないということです。令和7年簡易生命表の女性の生存数をみると、生まれた10万人のうち65歳まで生きるのは9万4533人、90歳まで生きるのは5万819人で、65歳まで生きた人の半数を超えます。生まれた人のちょうど半数が生きていると期待される年数(寿命中位数)も、女性は90.17年です。夫婦で考えるなら、赤字は平均余命の年数より長く続くことも見込んでおきたいところです。
次に、退職金を3つの役割に分けます。1つ目は「毎月の赤字にあてる分」で、1年分の赤字に見込む年数をかけた金額です。2つ目は「時期が見えている支出の分」で、住まいの修繕や車の買い替えなど、見積もりを取れるものです。3つ目は「病気や介護などの別枠」で、時期も金額も読めないため、ほかの2つと混ぜずに手をつけないお金として残しておきます。
そして、分ける順番も大切です。先に赤字の分を確保し、次に予定のある支出、最後に残った分から病気や介護の別枠をつくると、自由に使える金額があとからはっきりします。先に大きな支出をしてしまうと、赤字にあてられる年数が知らないうちに短くなりかねません。ただし、病気の際の金額はある程度しっかりと確保しておきましょう。
退職金を受け取る前には、「1年分の赤字はいくらか」「赤字を何年分見込むか」「介護などの別枠にいくら手をつけずにおくか」の3つの問いに、自分の数字で答えてみてください。この3つが決まると、生活費の補填以外に使えるお金が見えやすくなるでしょう。
4. まとめにかえて
定年退職者の平均的な退職給付額は区分ごとに1183万円から1896万円で、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の赤字20年分を差し引くと、残りは164万円から877万円ほどの計算です。25年分では、区分によっては赤字に届かない計算になります。
ただし、実際に退職金があるか、ないかやその金額は個人差が大きいものですので、事前に確認をしておきましょう。
またリフォームの平均は170万円で、残りの中から見積もっておくことになります。介護などの費用は、必要になる時期もかかる金額も見通しにくいため、別枠で備えておくのがよいでしょう。これからの家計の計画を立てるときは、自分の退職金の見込み額と毎月の赤字を、まず書き出してみてはいかがでしょうか。
5. 編集部よりコメント
大切なのは、退職金を「何に、いつ使うお金か」で分けておくことです。毎月の赤字の分、住まいの修繕など予定のある支出の分、介護など先の読めない支出に備える分を分けておけば、途中で予定が変わっても、どこから調整すればよいかが分かりやすくなります。
とくに介護は、いつから、どのくらいの期間必要になるかを前もって知ることができません。だからこそ、金額を決め打ちするよりも、使わずに残しておく別枠をつくっておくことが、安心につながるのではないでしょうか。
65歳の平均余命は、前の年より延びました。退職金の使い道も一度決めて終わりではなく、年金の見込み額や家計の変化にあわせて見直していくとよいでしょう。
参考資料
- 厚生労働省「令和7(2025)年簡易生命表の概況」
- 厚生労働省「令和5年就労条件総合調査の概況」
- 総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均結果の概要」
- 国土交通省「令和7年度住宅市場動向調査の結果」
宮野 茉莉子
