会社員のみなさんの中には、10月に支給される給与明細で「厚生年金保険料の控除額が先月までと変わっている」と気づく方もいるかもしれません。
厚生労働省が2026年9月30日に公表した「厚生年金保険・国民年金事業月報(速報)」2026年5月分によると、民間の会社員などが加入する厚生年金保険(第1号厚生年金被保険者)の被保険者は4399万人で、標準報酬月額の平均は33万8174円でした。一方、全体の真ん中にあたる中央値が含まれる等級は30万円で、平均を下回っています。
秋に改定される標準報酬月額は、毎月の天引き保険料だけでなく、将来受け取る老齢厚生年金の給付額を決める基準となる重要な数字です。
本記事では、公表された最新の公式データをもとに、会社員の標準報酬月額の分布や男女差、そして等級が上がった場合に将来の年金がいくら増えるのかを整理していきます。
1. そもそも標準報酬月額とは?10月の給与明細で保険料が変わるのはなぜか
まず、厚生年金保険料の計算基準となっている「標準報酬月額」の基本的な仕組みと、10月に控除額が変動する理由を確認しておきましょう。
1.1 給与を32の等級に区分。保険料率は18.3%で労使折半
標準報酬月額とは、毎月の給与などの報酬を一定の幅ごとに区分した等級に当てはめた金額のことです。民間の会社員が加入する厚生年金保険では、1等級の8万8000円から32等級の65万円まで、全32等級が設定されています。
基本給だけでなく、残業手当や役職手当、通勤手当なども含めた額面の報酬を基準に等級が決まる点が特徴的です。
毎月の保険料は、この標準報酬月額に固定の保険料率である18.3%を掛けて算出されます。実際の負担は会社と従業員で半分ずつ分け合う「労使折半」となるため、本人が負担する保険料率は半分の9.15%です。
なお、厚生年金基金に加入している方や、2026年10月に始まった保険料調整制度の対象となる短時間労働者などは、本人負担の割合が異なります。
たとえば標準報酬月額が30万円の場合、厚生年金保険料の本人負担額は月2万7450円(年間32万9400円)です。同額の2万7450円を勤務先企業が納付している形となっています。
1.2 4〜6月の給与で決まる定時決定。翌月徴収なら10月給与から改定
この標準報酬月額が秋に見直されるのは、年に一度実施される「定時決定(算定基礎届)」という手続きによるものです。
勤務先は毎年7月に、従業員の4月・5月・6月に支払った報酬を日本年金機構へ届け出ることになっています。この3か月の平均額に基づいて決まった新しい標準報酬月額は、原則として9月分から翌年8月分までの1年間適用されるのが決まりです。
社会保険料を「翌月徴収(9月分保険料を10月支給給与から控除)」としている企業では、10月に支給される給与明細で天引き額が改定されます。春の繁忙期で残業代が多かった方などは、この10月から手取り額が減っている可能性もあるでしょう。
2. 【一覧表】会社員の標準報酬月額の分布、中央値が含まれる等級は30万円
全国の会社員は、具体的にどの等級に多く分布しているのでしょうか。同月報の第2表から実態を見ていきましょう。
2.1 男性と女性で標準報酬月額はどれくらい違う?
第2表によると、厚生年金保険(第1号)の被保険者総数4398万9514人(一般男子2563万3766人、女子1830万3460人。総数は坑内員・船員を含む)において、中央値が含まれる等級は30万円でした。男女別に見ると、等級の分布には大きな差があります。
中央値が含まれる等級は、一般男子では36万円であるのに対し、女子では26万円と、男女間で10万円の開きが生じていました。第1四分位(下から25%)と第3四分位(上から25%)の等級を比較すると、一般男子が28万円/47万円、女子は20万円/32万円です。
さらに、最も人数が多い等級に目を向けると、一般男子では上限の32等級である65万円(290万5840人・11.34%)が最多となっています。これに対して女子で最も人数が多い等級は15等級の22万円(180万11人・9.83%)であり、男女で分布の山の位置が大きく異なることが分かります。
2.2 自分の等級は上位何%? 主要等級別の早見一覧
ご自身の給与明細に記載された等級が、全国の中でどの位置にあるのかを確認してみましょう。
同月報の統計から、特定の等級以上に位置する被保険者の割合を算出した早見表は以下の通りとなります(男性は一般男子、女性は女子の数値)。
- 20万円以上:男女計 86.9%(男性 93.2%/女性 77.9%)
- 24万円以上:男女計 75.4%(男性 86.1%/女性 60.3%)
- 26万円以上:男女計 68.6%(男性 81.2%/女性 50.8%)
- 30万円以上:男女計 54.8%(男性 69.5%/女性 34.2%)
- 38万円以上:男女計 33.6%(男性 46.6%/女性 15.3%)
- 50万円以上:男女計 17.0%(男性 24.9%/女性 5.9%)
- 65万円(上限):男女計 7.6%(男性 11.3%/女性 2.4%)
男女計で見ると、標準報酬月額24万円以上で全体の4分の3(75.4%)を占め、中央値を含む30万円以上で過半数(54.8%)を超える水準です。また、38万円以上であれば上位約3分の1、50万円以上であれば上位約17%に入ることが分かります。
女性の場合は、26万円以上で上位約半数(50.8%)、30万円以上で上位約3分の1(34.2%)という位置づけです。ご自身の等級と照らし合わせることで、全国規模における立ち位置を客観的に掴むことができます。
標準報酬月額は、基本給に残業代や通勤手当などを加えた額面の報酬をもとに決まる数字です。手取りは、そこから厚生年金保険料や健康保険料、所得税、住民税などが差し引かれた後の金額を指します。
ご自身の等級を知りたいときは、まず給与明細に「標準報酬月額」の記載がないか探してみてください。
記載がない場合は、厚生年金保険料の額を0.0915で割り戻すと、おおよその標準報酬月額が分かります(厚生年金基金に加入している方や、保険料調整制度の対象となる方などは当てはまりません)。
