2019年10月31日に行われた、株式会社エムティーアイ2019年9月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:株式会社エムティーアイ 代表取締役社長 前多俊宏 氏

決算ハイライト

前多俊宏氏:エムティーアイの前多です。本日はお忙しいところお越しいただきまして、誠にありがとうございます。それではさっそくですが、2019年9月期決算について説明させていただきます。

まず決算の概要ですが、売上高は約271億円、前期比で約19億円のマイナス、営業利益では前期比約2億5,000万円マイナスの約29億5,000万円という結果となりました。

その大きな要素となっているスマートフォンの有料会員数としては、前期比では65万人マイナスの392万人、一方でARPU、1人当たり月額単価につきましては、13.1円の増加となっております。

全体としては会員数は減ってきているのですが、1人当たりとしてはずっと伸び続けているという状況です。

そういった状況のなかで、2020年9月期の業績としては、売上高としては260億円、営業利益では20億円と予想しています。

連結PL

連結のPLですが、売上高の減少につきましては、有料会員数の減少というところが一番大きく響いております。一方で、売上原価は、子会社化したビデオマーケットの原価などが乗ってきていることもありまして、動画の品揃え等による原価増が大きくなっております。

ただ、一方で、店頭アフィリエイトでの会員獲得の減少に伴って、広告費としては約24億円と大幅に経費が減っている状況です。

連結販管費内訳

続きまして販管費ですが、これは先ほどと同じように、広告費の減少が有料会員数の獲得に関わるコストの減少となっております。

通期予想に対する達成率

結果としまして、通期予想に対する達成率としては、売上高は予想の270億円に対して約271億円、営業利益は29億円に対して約29億5,000万円、経常利益は35億円に対して約31億円、当期純利益としては20億円に対して約15億円となっております。

以上が数字的な概況です。

事業の概況①

会員数全体ですが、四半期前と比較して20万人減少で、479万人となりました。

会員数の獲得につきましては、回線と端末の分離販売が10月から施行されたということもありまして、店頭での携帯電話の販売が非常に低迷しているという状況があります。

販売時にサービスの提供が行われることが多いため、それに伴って、6月からNTTは通端分離をかなり実行しており、10月からはソフトバンク及びauも行っておりますが、そういった影響で会員数としては非常に増えにくい環境になっています。

事業の概況②

一方で、顧客単価としましては、この1年間では13.1円アップしました。7月以降、新規の入会者数が少し減っているため、その影響が出にくくなっているのですが、「music.jp」に関しては、1年前ですと400円コース、半年前ですと500円コースが中心だったのが、最近は1,000円コース以上のコースに入会される方が増えてきています。

以上が、終わった期の全体の概況となっています。

2020年9月期 基本方針

続きまして、2020年9月期の取り組みですが、基本的な方針は前期から継続し、ヘルスケアサービスの売上の拡大、有料会員数の維持、顧客単価の向上としています。

顧客単価(ARPU)の向上

顧客単価の向上に関しましては、コミックについては、KADOKAWA作品、全作品が追加されたということで、コミックの品揃えが充実しています。

動画に関しても、「ビデオマーケット」経由で調達をしているのですが、最近は特に他のサイトでは、個別課金しないと見れないような新作を次々とラインナップしていまして、特に動画では、ビデオオンデマンドに詳しい方々からは、作品が非常に充実しているという好評をいただいています。

動画の配信では、もちろん「Amazonプライム」「Netflix」「Hulu」などがあるのですが、基本的に見放題のサイトは新作が出ていないようです。「Amazonプライム」ですと、都度追加で課金すると新作を見られる場合もあるのですが、それよりもはるかに早いタイミングで、ほとんど劇場公開が終わるやいなや、新作が「music.jp」および「ビデオマーケット」に出てくる状況になっています。

おそらく日本でもっとも最新作が揃っているサイトになっているのではないかと思っているのですが、そういうこともありまして、「music.jp」の高額コースへの入会が、自然入会も含めて増えている状況です。

それによって、有料会員数の維持では、会員数の新規入会は少なめなのですが、単価の上昇がかなりプラスとして働いています。

また、新作コミックの充実や、コミックの出版社以外からの調達も含めたコンテンツの充実によって、お客さんからの満足度は上がっている状況になっています。

それと、ショップのところが少し冷え込んでいるのですが、最近は新しいチャネルが少しずつ立ち上がってきていますので、今の段階ではまだわからないですが、新しいチャネルによる入会も今後増えてくるのではないかと見ています。

ヘルスケアサービスの連携①-1

続きましてヘルスケアですが、「ルナルナ」の病院との接続サービスである「ルナルナメディコ」の病院連携機能をどんどん拡充しています。

今までは、基礎体温が病院で見られるというサービスだけだったのですが、それに不妊治療の服薬管理機能、月経困難症の治療サポート、「ピルモード」を追加しています。

「ピルモード」は、避妊で使われることも多いのですが、実際には、ユーザーの60パーセントぐらいが治療目的で使われています。日本では、月経困難症やPMSによる経済的損失が6,800億円と言われているのですが、そういったものを女性に対してサポートできるサービスとして、「ピルモード」でPMS・月経困難症の方々の治療に役に立つサービスを提供しています。

ルナルナの無料ユーザーはもう1,400万人を超えているのですが、例えば妊活で使われているところでも、日本で1年間に約90万人の出生数、去年が92万人、今年が90万人と言われているのですが、そのうち26万人の女性が「ルナルナ」を使っているということで、もはや約30パーセントぐらいまで出生に対して影響を与えるプラットフォームに成長してきたところです。

我々が知る限り、一般のユーザー、あるいは患者、それと病院が数万人単位でつながっているサービスが世界中にもないため、新しいタイプのプラットフォームとして確立できていくといいなと思っております。

今の段階では、「ルナルナメディコ」での病院への特別な課金はないのですが、今後はプラットフォーム完成後、つまり使う患者さん・病院が増えてきて、プラットフォームが完成していくにつれて、付加価値の高いサービスで課金していけるのではないかということで、このプラットフォームの拡充をさらにいっそう進めていきたいと考えています。

ヘルスケアサービスの連携①-2

プラットフォームの拡充としては、代表例としては、とくにピルなどの場合は、病院に行って、血圧を測って薬をもらって終わりというケースも多いです。そういった患者さんの負荷を下げるための遠隔診療サービスということで、日常の基礎体温や服薬状況、体調の報告などをお医者さんと共有することで連携できるサービスや、あるいは、電子カルテの「CLIPLA」などとの連携といったかたちでつなげていくとことで、「ルナルナ」「ルナルナメディコ」のプラットフォームの上に、少しずつ有料課金できるサービスを上乗せしていくことを、今後進めていきたいと思っています。

ヘルスケアサービスの連携①-3

母子手帳アプリの「母子モ」は「ルナルナ」とつながっていまして、「妊娠すると、母子手帳アプリで胎児や子どもの管理ができる」というサービスにつなげていっています。

我々として今、非常に心がけているのが、たくさんのサービスが点々となっているのですが、それをつなげていくことで付加価値を向上させて、より課金につなげていくこと……課金と言っても、エンドユーザー向けの課金と言うよりは、病院であるとか、そういったBtoBの課金を進めていきたいと考えています。

ヘルスケアサービスの連携②-1

前回ご紹介した、薬剤師向けの薬歴管理サービスですが、これは非常に順調に受注が続いています。

調剤薬局での基本的なシステムは2つあります。健保に請求するための点数計算用のレセプトコンピューターと、薬歴の管理の、2つのシステムが基本的には入っています。今、厚労省等の方針で、この薬歴の管理の強化が進んでいて、この管理をきちんとすることで、調剤薬局の報酬が、基本的に高く設定されるかたちになっています。

したがって、薬歴を管理することが薬局にとっては非常に重要で、それによって収入が倍近く変わってくるということで、調剤薬局にとっては死活問題です。きちんとした薬歴を残しておくことが大切なのですが、それが非常に複雑なために、みなさん苦戦しています。そこをサポートするサービスとして、「Solamichi」のシステムが非常に好評をいただいている状況です。よって順調にクライアントが増えています。

ヘルスケアサービスの連携②-2

その際に、一緒にお薬手帳もセットで販売させていただいております。今まで我々としては、お薬手帳だけが薬局向けのサービスだったのですが、10倍近く高い薬歴サービスと、セットで販売することが可能になってきています。

ヘルスケアサービスの連携③

ヘルスケア関係のところではCT・MRIなどの画像をクラウド管理するエムネスという会社と提携しまして、持分法適用関連会社とさせていただいています。

今、さまざまな健診機関のサービスをスマホで提供するサービスを展開させていただいています。今は、健診などで撮ったレントゲン写真、CT、MRI、あるいは腹部エコー、眼底検査、内視鏡の胃カメラといった画像は、撮って終わりになってしまって、また病院に行って撮るわけなのですが、今後はそれを受診者が持ち運びできるサービスを進めていきたいと考えています。

そういった、さまざまな病院、クリニック、あるいは健診機関にあるCT・MRIなどと接続して、クラウド上で管理できる、というシステムを持っているエムネス社と連携して、これらのことを実現していこうということで進めています。

年1回の定期健診は、今までは撮ったきりになって、だいたい紙で印刷された健診結果が机の中に何年間か眠っていたのが、すべてスマホで持ち運べるようになります。将来的には、これを病院で見られるというサービスに接続していくため、有効利用できます。あるいは、過去の履歴、例えば要経過観察の肺の画像の経年変化をお医者さんと一緒に見ることができる、ということを提供できるようになってくると考えています。

ヘルスケアサービスの連携④

それ以外に、ヘルスケア関係のトピックスとしては、お薬手帳の子会社であるファルモに、三菱商事からの第三者割当増資を実施していただきまして、今後、一緒になって市場開拓していくことを進めていく予定です。もともと三菱商事の中で、医療・健康・食品分野において、いろいろな病院に病院の消耗品であるとか、そういったものを卸売する機能が相当規模あったわけです。

そこと薬局もつないでいくシステムのきっかけとして、とくに三菱商事はBtoBが得意なわけなのですが、我々がBtoCを得意としていることもあり、BtoBtoC的なサービスに展開していくことを狙われたこともありまして、提携して進めていくことになりました。

ヘルスケアサービス全体像

今まで点々になっていた、さまざまなヘルスケアのサービスですが、点と点がつながって線となることによって、エンドユーザー向けにも便利で、BtoB向けにも付加価値を上げていくことができるようになってきています。

また、そこで使われているユーザーも着実に順調に増えてきていることもありまして、これらのプラットフォームが徐々に完成しつつあるかなと考えております。

連結業績予想①

続きまして、今期の業績予想は先ほど申し上げたとおり、売上高として260億円、営業利益20億円の当期利益12億円で計画しております。

連結業績予想②

上半期、下半期の比率としては、このようなかたちになっています。

5Gコンテンツ時代に向けて...1MR技術

最後にトピックスとして、2、3点ありますので、それを追加しておきます。

来年から5Gの商用化サービスが始まりますが、5G時代のコンテンツの中で、MR(Mixed Reality)を得意としているポケット・クエリーズ社(ポケクエ)と提携しまして、持分法適用会社としました。

ポケット・クエリーズ社はもともと、「Unity」を使ったゲームの3Dの画像などを作っていた会社です。

Microsoftの「HoloLens」や、4月にドコモが300億円出資したアメリカのMagic Leap社など、大手ではその2社がとくに3Dゴーグルを作っていますが、こういったもので取り扱われるデータ量が非常に大きいので、これは4Gではなかなか動かないようなサービスになっています。

5Gになっても、通常使う一般的なコンテンツであれば4Gで十分なのですが、より高度に3Dで表現しようとしたりすると、5Gでないと動かないということもありまして、4Gではできなかったコンテンツやサービス等が次々と生まれてくると考えています。

FacebookのザッカーバーグCEOも、こういった3Dゴーグルが次の時代で最も重要なテクノロジーの1つだと言っています。SNSの場合は、おそらく仮想で人と会話したり、まるで目の前にいるように会話できるという意味で、バーチャルな会議などのために使われていくようなイメージかとは思うのですが、エンターテイメントのコンテンツだけではありません。

業務系でも、例えばポケット・クエリーズ社が電力会社に(提供したもので)、発電所や変電所の中のメンテナンスをするときに、専門家が行けないときでも、MRによって何をすればいいかを表示させることができる。こういったことを提供できるようなかたちになっています。

もともと、AIの子会社のAutomagiが、電力会社に変電所の監視や鉄塔のサビ検知といったインフラの整備のためのサービスを提供していたのですが、それを実際に実行しようとすると、今度はポケット・クエリーズ社のMRなどを使ったサービスが非常に役に立ってくるのではないかなと考えています。

今までとどういうことが違うのかというと、例えば、変電所などには高圧電流が流れていて、危険領域があるのですが、レッドゾーンとして、空間上に赤い立ち入り禁止を出す、あるいは、高圧電流が流れている電線とそうではない電線を色分けするといったことができます。

また、インフラであれば、ガスを表示することができたり、今まで人間の目では見えなかったものをMixed Realityで見せることができるようになってくるかなと考えております。

(ご参考)アート×ICT

それからもう1つ、これも大きなビジネスではないのですが、トピックスとしてはアルステクネ・イノベーション社というデジタルの画像、美術品をたくさん持っている会社と提携しております。

今、NTT東日本さんとアルステクネ・イノベーションがオペラシティで「Digital×北斎」ということで展示会をやっているのですが、これは5G時代のバックボーンの光ファイバーでないと伝送できません。

この会社が持っている技術は、例えば、絵を20億画素で保管しています。20億画素とはどれぐらいかというと、だいたいフルハイビジョン、4Kで800万画素、8Kで3,000万画素ですので、その約8倍、つまり64K品質でデータを保管することができています。よって、この「Digital×北斎」の場合は、和紙の繊維まで表現できています。

そうすると、たかだかA3ぐらいの浮世絵などの版画の絵が4ギガぐらいのサイズになるため、5G、あるいは新型の光ファイバーでないと送ることができないということで、それを伝送するNTT側とアルステクネ・イノベーション社の先進テクノロジーで、これが実現しているという状況です。

将来的には、バーチャル美術館であるとか、あるいは美術館と美術館がコラボレーションする時に、例えばこちらが持っている北斎の画像と、大英博物館が持っている画像を同時に展示することができるなど、そういったかたちで使われていくことを想定しております。

そういうことで、5G時代では大容量の画像や、完全な3Dの伝送といったものが非常に重要になってくると考えています。

フィンテックサービス・ソリューションサービス

最後にもう1つだけ、フィンテック関係というかBPR関係ですが、関連会社のクラウドキャスト社が、「Staple カード」というのを出しまして、11月からサービス開始します。これは、ワールドビジネスサテライトでも放送されて、非常に大きな引き合いをいただいています。

経費精算のソリューション及び経費精算を簡単にするために、法人で使われるプリペイドカード……これはオンラインで経理部側、あるいは総務側でプリペイドを自動的にカードの中に溜めることができて、自動的に科目が整理されて、経理システムに繋がっていくということができるようになっております。

ちなみに、非常にこのサービスが使い勝手がいいということで、グッドデザイン賞をいただいています。

これは我々のモバイルソリューションのBtoBのユーザーにも展開して提供していきたいと考えております。いくつかトピックスを紹介させていただきました。

資本政策

最後に資本政策として、配当金ですが、今期に関しては期末の配当金を8円、年間の配当金としては16円を予定しております。また、2020年9月期についても同様に中間で8円、期末で8円、年間配当金で16円を予定しております。

以上となります。

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