子どもの近くで暮らすために、75歳を過ぎてから住まいを移す人もいます。後期高齢者医療制度は都道府県ごとの広域連合が運営しているため、都道府県をまたいで引っ越すと、保険料を決める料率も変わります。
厚生労働省が2026年4月10日に公表した令和8・9年度の保険料率では、被保険者均等割額が最も低いのは岩手県の4万8800円、最も高いのは鹿児島県の6万9800円でした。同じ制度でも、年2万1000円の開きがあります。
この記事では、後期高齢者医療の保険料の決まり方と都道府県ごとの料率の違い、引っ越した年度の保険料が月割りでどう計算されるかを、東京都から福岡県へ移る試算例で確認します。
なお、後期高齢者医療制度の窓口負担割合の判定基準については、下記の記事より一部を引用・参照しています。
1. 後期高齢者医療制度の保険料は、都道府県ごとの広域連合が決める
後期高齢者医療制度は、原則75歳以上の人が加入する医療保険です。都道府県ごとに置かれた後期高齢者医療広域連合が運営し、保険料の料率も2年ごとに決めています。
1.1 75歳以上の一人ひとりに均等割額と所得割額がかかる
保険料は、加入者全員が同じ額を負担する「均等割額」と、前年の所得に応じて負担する「所得割額」の合計です。世帯単位ではなく、一人ひとりに計算されます。
所得割額は、前年の総所得金額などから基礎控除額(合計所得金額が2400万円以下の場合は43万円)を差し引いた額に、所得割率をかけて計算します。
2026年度からは、医療分とは別に「子ども・子育て支援金分」の保険料も、均等割額と所得割額の形で加わりました。
1.2 令和8・9年度の医療分は全国平均で月7989円
厚生労働省のまとめでは、令和8・9年度の医療分の被保険者均等割額は全国平均で年5万6083円、所得割率は10.17%です。被保険者一人当たりの平均保険料額は月7989円の見込みで、令和6・7年度の7411円から578円増えました。
子ども・子育て支援金分(令和8年度)は、均等割額が全国平均で年1351円、所得割率は0.25%です。
2. 後期高齢者医療の保険料率は都道府県で違う
同じ所得でも、どの都道府県に住んでいるかで後期高齢者医療の保険料は変わります。料率は各広域連合が、その地域の医療費の見込みなどをもとに決めているためです。
2.1 均等割額は岩手県の4万8800円から鹿児島県の6万9800円まで
令和8・9年度の医療分の均等割額が低いのは、岩手県4万8800円、長野県4万8827円、福島県4万9000円の順です。高いのは、鹿児島県6万9800円、佐賀県6万8700円、福岡県6万6340円の順でした。
所得割率も、岩手県の8.50%から佐賀県の11.79%まで開きがあります。
2.2 平均保険料が最も高い東京都は、均等割額が5万3300円
被保険者一人当たりの平均保険料額(月額の見込み)が最も高いのは東京都の1万352円で、最も低い青森県の4990円の2倍を超えます。
ただし東京都の均等割額は5万3300円、所得割率は9.88%で、どちらも全国平均を下回ります。平均保険料額は加入者の所得の水準でも変わるため、平均保険料の順位と料率の高さは一致しません。
2.3 【試算】年金収入250万円の単身ならいくら?
年金収入だけが250万円ある単身の人で試算します。公的年金等控除110万円を引いた所得は140万円で、ここから基礎控除43万円を引いた97万円が、保険料計算のもとになる所得金額です。この所得では、均等割額の軽減はかかりません。
東京都の料率を当てはめると、医療分は5万3300円+97万円×9.88%=14万9136円、子ども・子育て支援金分は1300円+97万円×0.26%=3822円で、合計は年15万2958円です。
福岡県では、医療分が6万6340円+97万円×11.70%=17万9830円、子ども・子育て支援金分が1339円+97万円×0.25%=3764円で、合計は年18万3594円になります。東京都より年3万636円多い計算です。
試算では100円未満の端数処理をしていません。実際の保険料は、お住まいの広域連合の計算方法で決まります。
3. 他の都道府県へ引っ越したら、後期高齢者医療の保険料は月割りで計算し直す
年度の途中で都道府県をまたいで引っ越すと、加入する後期高齢者医療広域連合が変わります。保険料も、引っ越しの前と後で月割りにして計算し直されます。
3.1 転入した月から、新しい広域連合の料率で保険料がかかる
東京都後期高齢者医療広域連合は、他の道府県から転入した人はその月から月割りで保険料がかかり、他の道府県へ転出した人は転出した月の前月分まで保険料がかかると案内しています。
たとえば10月に東京都から福岡県へ引っ越した場合、4月から9月までの6か月分は東京都、10月から翌年3月までの6か月分は福岡県の料率で計算します。
先の試算例に当てはめると、東京都分は15万2958円×6/12=7万6479円、福岡県分は18万3594円×6/12=9万1797円です。この年度の合計は16万8276円になります。
3.2 前年の所得は、前の住所地の市区町村に照会して確かめる
所得割額の計算には前年の所得が必要です。東京都後期高齢者医療広域連合は、転入して前年の所得を調査中の人について、前の住所地の市区町村から回答があり次第、保険料を計算し直して知らせるとしています。
3.3 引っ越したあとは、年金からの天引きが始まるまで納付書や口座振替で納める
東京都中央区は、他の市区町村から転入した人に対し、年金からの天引き(特別徴収)が始まるまでの間は、納付書か口座振替(普通徴収)で納めるよう案内しています。
天引きに慣れていると、引っ越し後に届く納付書を見落としがちです。転入後に届く通知では、保険料の額とあわせて納め方も確かめておきましょう。
後期高齢者医療の保険料率は広域連合ごとに決まり、年金収入250万円・単身の試算例では、東京都から福岡県へ移ると年3万636円多くなりました。引っ越した年度は、転出した月の前月分までが前の都道府県、転入した月からが新しい都道府県の料率で月割りされます。
引っ越し先の料率は、その都道府県の後期高齢者医療広域連合のホームページで確かめられます。転入後に届く保険料額の通知と見比べると、納める額がどれだけ変わるかをつかめます。
保険料の計算を担当していた頃、県外から転入した方の保険料は、前の住所地から所得の回答が届いてから計算していました。引っ越した年は通知が2か所から届くこともあるので、それぞれ何月分の保険料かを確かめてください。

