人工透析のように、長い期間にわたって高額な治療を続ける病気では、毎月の医療費の負担が暮らしに直結します。
後期高齢者医療制度では、2026年8月から高額療養費の自己負担限度額が見直され、新たに年間の上限も設けられました。一方、人工透析が必要な慢性腎不全などの「特定疾病」は、特定疾病療養受療証があれば、1つの医療機関ごとに月1万円が自己負担の上限です。
この記事では、75歳以上の窓口負担が1割・2割・3割に分かれる基準と、高額療養費の限度額、特定疾病の自己負担の仕組みを確認します。
なお、後期高齢者医療制度の窓口負担割合の判定基準については、下記の記事より一部を引用・参照しています。
1. 後期高齢者医療制度の窓口負担は1割・2割・3割、毎年8月1日に所得で判定し直す
後期高齢者医療制度の窓口負担割合は、同じ世帯にいる後期高齢者医療の被保険者の所得で決まります。前年の所得が確定して住民税が決まったあとに判定され、毎年8月1日に見直されます。
1.1 後期高齢者医療制度で3割になるのは、課税所得145万円以上の現役並み所得者
同じ世帯の被保険者に、住民税の課税所得が145万円以上の人がいると、現役並み所得者として3割負担になります。
ただし、収入の合計が次の金額に満たない場合は、基準収入額適用申請をすると1割または2割になります。申請による変更は、申請のあった日の翌月からです。
- 世帯の被保険者が1人:383万円未満
- 世帯の被保険者が1人で、70〜74歳の世帯員がいる:合計520万円未満
- 世帯の被保険者が2人以上:合計520万円未満
1.2 後期高齢者医療制度で2割になるのは、課税所得28万円以上で収入の合計が一定以上の人
2割負担の基準について、LIMOの記事「【75歳からの医療費】いちばん重い「3割負担」になる年収はいくら?老後の家計を左右する判定基準をズバリ解説 要注意!医療費は「夫婦で半分ずつ」にはならない──窓口負担《1・2・3割》の早見表&資金計画のヒント」から要点を引用して確認しておきましょう。
2割:一般所得者のうち一定以上の所得がある人
次の①と②の両方に該当する場合
①同じ世帯の被保険者の中に課税所得が28万円以上の人がいる。
②同じ世帯の被保険者の「年金収入」+「その他の合計所得金額」の合計額が、1人の場合は200万円以上、2人以上の場合は合計320万円以上。
3割にも2割にも当てはまらない人は、1割負担です。
後期高齢者医療制度の窓口負担は、同じ世帯の被保険者の所得で3段階に分かれる1/2
出所:厚生労働省「後期高齢者の窓口負担割合の変更等(令和3年法律改正について)」、江東区「後期高齢者医療制度の医療費の負担割合」をもとにLIMO編集部作成
2. 後期高齢者医療制度の高額療養費は、2026年8月から年間の上限も設けられた
窓口負担の割合が決まっても、1か月に払う医療費には高額療養費の自己負担限度額があります。2026年8月以降の後期高齢者医療制度の限度額を、大阪府後期高齢者医療広域連合の区域にある豊中市の案内で確認します。
2.1 一般区分の外来の上限は月2万2000円、外来と入院を合わせた世帯の上限は月6万1500円
窓口負担が1割または2割で、住民税が課税されている人は「一般」の区分です。外来だけの上限は個人ごとに月2万2000円で、年間の上限は21万6000円です。
外来と入院を合わせた上限は世帯ごとに月6万1500円で、過去12か月に4回以上該当した場合の4回目からは4万4400円です。年間の上限は53万円で、課税所得が28万円未満であることが確認できれば41万円になります。
2.2 住民税非課税世帯の区分IIと区分Iは、上限がさらに低い
同じ世帯の全員が住民税非課税の人は、区分IIまたは区分Iになります。
- 区分II:外来(個人ごと)月1万1000円・年間9万6000円、外来+入院(世帯ごと)月2万5700円・4回目から2万4600円、年間29万円
- 区分I:外来(個人ごと)月8000円、外来+入院(世帯ごと)月1万5700円、年間18万円
現役並み所得者は、課税所得に応じて3つの区分に分かれます。いちばん低い区分(課税所得145万円以上380万円未満)の上限は、8万5800円+(総医療費-28万6000円)×1%です。
3. 人工透析などの特定疾病は、後期高齢者医療制度でも医療機関ごとに月1万円まで
高額療養費とは別に、長い期間にわたって高額な治療が必要な病気には、特定疾病の仕組みがあります。後期高齢者医療制度でも、申請して特定疾病療養受療証の交付を受けると、自己負担の上限が月1万円になります。
前の保険で特定疾病療養受療証を受けていた人も、75歳になって後期高齢者医療制度に加入したときは、改めて申請が必要です。
3.1 特定疾病の対象は、人工透析が必要な慢性腎不全など3つ
後期高齢者医療制度で特定疾病療養受療証の対象になるのは、次の3つです。
- 人工透析が必要な慢性腎不全
- 先天性血液凝固因子障害の一部(血友病)
- 血液凝固因子製剤の投与に起因するHIV感染症
3.2 月1万円の上限は医療機関ごとで、外来と入院は別々に計算する
上限の1万円は、1つの医療機関ごとに当てはめます。同じ医療機関でも外来と入院は別々に計算し、医科と調剤は合わせて計算します。対象は、その特定疾病の治療で受診した分に限られます。
特定疾病療養受療証があると、自己負担は1つの医療機関ごとに月1万円まで2/2
出所:板橋区「特定疾病療養受療証(後期高齢者医療制度)」、豊中市「高額療養費制度/自己負担限度額について(令和8年8月)」をもとにLIMO編集部作成
後期高齢者医療制度の窓口負担は、同じ世帯の被保険者の所得で1割・2割・3割に分かれます。人工透析などの特定疾病があれば、特定疾病療養受療証で自己負担は1つの医療機関ごとに月1万円が上限です。
自分の窓口負担割合は、資格確認書や資格情報のお知らせ、マイナポータルで確かめられます。特定疾病療養受療証の申請先は、お住まいの市区町村の後期高齢者医療の担当窓口です。
ここからは、元自治体職員として資格の切り替えの相談を受けてきた経験から、75歳の誕生日をはさんで特定疾病療養受療証の手続きがどう進むのかを見ていきます。
75歳で後期高齢者医療制度に移ると、保険証の切り替えだけで手続きが済んだと考えがちです。前の保険で受けていた特定疾病の認定は引き継がれないので、誕生月のうちに申請しておくと安心です。

