「株式投資は何歳から始められますか」という質問は、実は2つの意味を持っています。ひとつは高校生や大学生が気にする「下限」、もうひとつは60代・70代の方が気にする「上限」です。

下限については「18歳から」という答えがすでに広まっています。ところが上限については、法律で明確に線が引かれているわけではありません。にもかかわらず、証券会社の窓口では「75歳」「80歳」という年齢を境に、実際の対応が変わる場面があります。

「株式投資 何歳から」で検索すると、多くの記事が18歳という下限にしか触れていません。しかし実際に日本証券業協会の資料を読み込むと、年齢という切り口には、下限と上限の両方に、意外と知られていない実務の仕組みが隠れていることが分かります。

この記事では、18歳で何が変わり、何が変わらないのか、そして証券会社側が年齢の高い顧客にどう向き合っているのかを、一次資料に基づいて整理します。

1. 株式投資の「下限」は18歳。まず押さえておきたい基本

年齢の下限の話は、2022年の法改正が起点になっています。ここでは制度の骨格を確認したうえで、後半で「18歳になった日」に起きる、意外と知られていない変化を掘り下げます。

1.1 2022年4月1日、成年年齢が18歳に引き下げられた

日本証券業協会によると、2022年4月から成年年齢は18歳に引き下げられました。

これにより「親の同意がなくても、証券口座の開設、証券投資ができるようになりました」と同協会は説明しています。

下村 美乃莉
私自身、投資信託の積立を始めたのは20代後半でした。18歳から自分の判断で口座を持てると知ると、当時の自分より一歩早く動ける今の高校生や大学生が少しうらやましくもあります。早く始めた分だけ、値動きに慣れる時間も長く取れるはずです。

1.2 17歳以下は「未成年口座」で、親権者の同意が前提になる

18歳未満の場合は、これまで通り親権者(法定代理人)の同意を得たうえで、証券会社が用意する未成年名義の口座を開設する形になります。年齢そのものの下限は設けられていないことが多いものの、実務上は口座を管理できる年齢まで待つ家庭がほとんどです。

未成年口座では、取引の可否や資金の出し入れについて、親権者の関与が前提になります。子ども自身の判断だけで大きな金額を動かすことは想定されておらず、あくまで家庭内での話し合いを経て取引を進める仕組みです。

証券口座の開設方法や、成長投資枠・つみたて投資枠といった新NISAの基礎知識については、株式投資の始め方を解説した記事でも詳しく取り上げています。

1.3 高校生でも「18歳の誕生日」を迎えれば自分の判断で口座を持てる

高校3年生のクラスには、すでに18歳になっている生徒と、まだ17歳の生徒が混在します。学年ではなく「誕生日を迎えたかどうか」で線が引かれるため、同級生同士でも証券口座を開設できるタイミングにずれが生じます。

18歳になった生徒は、卒業を待たずに自分の判断で証券口座を申し込むことができます。一方、誕生日前の生徒は、これまで通り親権者の同意を得た未成年口座の手続きが必要です。年齢そのものより「誕生日がいつか」を確認することが、実務上は近道になります。

2. 高校生で「18歳」になった日、実は同時に失うものがある

18歳になれば自分の判断で証券口座を開ける——ここまでは「できることが増える」話でした。ところが法務省の資料を読むと、同じ18歳という年齢が、逆に「守り」を外す年齢でもあることが分かります。

法務省は、民法上「未成年者が親の同意を得ずに契約した場合には、原則として、契約を取り消すことができる」制度(未成年者取消権)があると説明しています。

成年年齢の引き下げにより、18歳・19歳はこの未成年者取消権を行使できなくなりました。法務省自身も「消費者被害の拡大が懸念されています」と、この点に触れています。

つまり、証券口座を自分の判断で開けるようになった日は、同時に「後から取り消せる」という法律上の安全網が外れる日でもあります。株式投資に限った話ではありませんが、投資の勧誘やSNSでの儲け話に接する機会が増える年代だからこそ、この裏表の関係は知っておく価値があります。

18歳の誕生日を境に変わること・変わらないこと1/2

18歳の誕生日を境に変わること・変わらないこと

出所:日本証券業協会「成年年齢引下げについて」、法務省「民法(成年年齢関係)改正Q&A」を基にLIMO編集部作成

2.1 【18歳の誕生日を境に変わること・変わらないこと】

17歳以下の場合

  • 証券口座の開設:親権者の同意が前提
  • 未成年者取消権:行使できる

18歳・19歳になった場合

  • 証券口座の開設:自分の判断で可能
  • 未成年者取消権:行使できない

3. 【編集者の視点】

「18歳になったら自分で株式投資ができる」という情報だけが独り歩きすると、口座開設のハードルが下がったことばかりに目が向きがちです。

ですが実務としては、未成年者取消権という後ろ盾がなくなる年齢でもあることを、セットで理解しておく必要があります。証券会社との取引そのものは、投資判断を誤っても原則として取り消せません。これは18歳以上であれば当然のことですが、これまで未成年者取消権に守られてきた世代にとっては、初めて直面する現実です。

防衛策としてまず有効なのは、金融庁が公開している登録業者一覧で、取引しようとする証券会社が正規の金融商品取引業者かどうかを確認することです。SNS経由の投資話や、登録の有無が不明な業者からの勧誘には特に注意が必要です。

次に、いきなり大きな金額を投じず、少額から取引を始めて値動きや手続きに慣れることも、取消権に頼れなくなった年代には現実的な自衛策になります。疑問点があれば、証券会社の窓口や消費生活センターに早めに相談する姿勢も大切です。

4. 年齢の「上限」は法律にはない。それでも証券会社が身構えるライン

ここまでは下限の話でした。では逆に、年齢の上限はあるのでしょうか。結論からいえば、株式投資や証券口座の開設に法律上の年齢上限はありません。70代・80代から新たに口座を開き、投資を始めることも制度上は可能です。

ただし「制度上できる」ことと「証券会社が同じように扱う」ことは、必ずしも同じではありません。日本証券業協会は、会員となる証券会社に向けて「高齢顧客への勧誘による販売に係るガイドライン」を定めています。

このガイドラインでは、慎重な勧誘による販売を行う必要があると考えられる顧客の目安として、75歳以上の顧客を対象とし、その中でもより慎重な対応が必要な顧客を80歳以上とすることが考えられる、としています。

下村 美乃莉
「投資に年齢の上限はない」と聞くと少し安心します。その裏で証券会社側が年齢に応じて対応の丁寧さを変えていると知ると、また違った見え方になってきます。守られている実感があると、家族も本人も安心して相談できる気がします。

制度が始まったのは平成25年(2013年)10月で、その後平成28年(2016年)と令和3年(2021年)5月18日に改正されています。

興味深いのは、この令和3年の改正から成年年齢引き下げの施行(2022年4月1日)まで、約10か月半しか間が空いていないことです。未成年者への保護を外す改正と、高齢顧客への配慮を強める改正が、ほぼ同じ時期に進んでいたことになります。

片方は「若い世代の自由を広げる」方向、もう片方は「高齢の世代を慎重に守る」方向と、向きは正反対です。それでも根っこにあるのは、判断力の状況に応じて手続きの重さを変えるという同じ発想だと捉えると、2つの改正のつながりが見えてきます。

4.1 【年代ごとに変わる、株式投資に関わる仕組み】

17歳以下の場合

  • 口座開設の条件:親権者の同意が前提(対象年齢の上限は17歳以下)
  • 証券会社側の対応:未成年口座として管理

18歳〜74歳の場合

  • 口座開設の条件:自分の判断で可能(対象年齢は18歳から74歳まで)
  • 証券会社側の対応:通常の勧誘手続き

75歳以上の場合

  • 慎重な勧誘のための社内手続きの対象年齢:75歳以上
  • 事前承認なしで勧誘できる商品範囲の扱い:社内規則で個別に規定

80歳以上の場合

  • 75歳以上向けよりさらに慎重な手続きの対象年齢:80歳以上
  • 記憶力・理解力等が十分と確認できた場合の扱い:役席者の承認によりガイドライン対象外も可能

5. なぜ年齢で慎重になるのか。ガイドラインが挙げる具体的な懸念

このガイドラインがなぜ必要とされたのか、日本証券業協会は理由も具体的に説明しています。

「一般的に高齢者は、身体的な衰えに加え、記憶力や理解力が低下してくることもあるとされています。(中略)過去の投資経験が豊富な顧客で、勧誘時点における理解も十分であったと思える顧客が、数日後には自身が行った取引等を全く覚えていなかったという事例も見られます。その結果、本人やその家族から苦情の申立てがなされ、あっせんや訴訟となってしまうケースも生じています。」

出典:日本証券業協会「協会員の投資勧誘、顧客管理等に関する規則第5条の3の考え方」

一方で同協会は、年齢はあくまで目安であり「絶対的な基準となるものではなく」、顧客の記憶力・理解力等や収入、保有資産の状況によっては、年齢を問わず対象外とすることも考えられるとも述べています。75歳や80歳という数字だけで、その人の投資判断力を決めつける制度ではありません。

また、家族などが取引を代わりに行う「取引代理人制度」を証券会社が設けている場合は、口座の名義人だけでなく、代理人が高齢であるケースも社内規則の対象に含める必要があるとされています。

口座の名義人本人は75歳未満でも、実際に注文を出す代理人が高齢であれば、ガイドラインの対象として扱われることがあるという整理です。証券口座の開設方法や、銀行では扱えない業務範囲といった実務の基礎は、証券会社の口座開設に関する記事でも整理しています。

取引代理人制度そのものは証券会社ごとに設計が異なり、利用できる範囲や必要な手続きも一律ではありません。家族が代理で取引をサポートしたいと考える場合は、まず口座を持つ証券会社に、代理人制度の有無と条件を確認するところから始めることになります。

6. 【編集者の視点】

75歳・80歳というラインは、あくまで証券会社が社内規則を作るときの「目安」であり、この年齢になった瞬間に取引ができなくなるわけではありません。実際の運用は各証券会社の社内規則に委ねられています。

大切なのは、このガイドラインが「年齢そのもの」ではなく「記憶力・理解力等が投資判断を行うに足りる水準で維持されているか」を確認する仕組みだという点です。確認の方法として、直近の取引内容や相場状況を本人が覚えているかを、面談などで確かめる例が挙げられています。

家族としてできる防衛策は、高齢の親が新たに証券口座を開く、あるいは大きな金額を動かそうとしている場面に気づいたら、本人の意思を尊重しつつも、取引の内容を一緒に確認する機会を持つことです。判断力に不安が出てきた場合は、証券会社の窓口のほか、成年後見制度など資産管理を支える公的な仕組みについて、市区町村の窓口や地域包括支援センターに相談する選択肢もあります。

年齢を理由に投資そのものを諦める必要はありません。ただ、家族間で取引状況を共有しておくことが、後々のトラブルを防ぐ一番の近道になります。

下村 美乃莉
お金の相談の場では、ご本人だけでなくご家族が一緒に来られることも多くありました。年齢を重ねたご本人の「まだ自分で決めたい」という気持ちと、心配するご家族の気持ち。その両方に寄り添える仕組みであってほしいと、資料を読みながら改めて思いました。

※本記事は、編集部が日本証券業協会・法務省が公表する公式の最新一次資料を直接確認の上、執筆・検証しています。

7. まとめ

  • 2022年4月1日の成年年齢引下げにより、18歳から自分の判断で証券口座を開設できるようになりました。
  • 17歳以下は、親権者の同意を得た未成年口座での取引が前提になります。
  • 18歳・19歳は口座開設の自由を得る一方、未成年者取消権は行使できなくなります。
  • 株式投資に法律上の年齢の上限はありませんが、日本証券業協会のガイドラインにより、75歳以上・80歳以上の顧客には証券会社側でより慎重な社内手続きが取られる場合があります。
  • 年齢はあくまで目安であり、記憶力・理解力等の状況によって扱いは変わり得るとされています。

「何歳から」という問いには、始められる年齢だけでなく、その年齢で何を得て何を失うのかという裏表の答えがあります。18歳での口座開設の自由も、高齢期の慎重な対応も、どちらも読者自身やご家族を守るための仕組みとして作られている点は共通しています。

これから株式投資を始めようとする方も、家族の投資を見守る立場の方も、まずは年齢だけで判断せず、証券会社の窓口で自分や家族の状況に合った手続きを確認してみてください。18歳になったばかりの方は登録業者かどうかの確認を、家族の投資を見守る立場の方は取引代理人制度の有無を、それぞれの窓口で聞いてみるところから始められます。

8. よくある質問

8.1 Q. 高校生でも株式投資はできますか

A. 17歳以下であれば、親権者の同意を得たうえで未成年名義の口座を開設する形で株式投資に関わることができます。18歳の誕生日を迎えれば、在学中の高校生であっても、卒業を待たずに自分の判断で証券口座を開設できます。

8.2 Q. 何歳になったら証券会社の慎重な対応の対象になりますか

A. 日本証券業協会のガイドラインでは、目安として75歳以上を慎重な勧誘の対象とし、その中でも80歳以上はさらに慎重な手続きの対象とすることが考えられるとされています。ただし年齢は絶対的な基準ではなく、記憶力・理解力等によっては対象外になる場合もあり、実際の運用は各証券会社の社内規則によります。

8.3 Q. 高齢になっても新しく証券口座を開設できますか

A. 株式投資や証券口座の開設に法律上の年齢の上限はありません。高齢の方が新たに口座を開設すること自体は可能ですが、証券会社によっては本人の記憶力・理解力等を確認する手続きを設けている場合があります。あらかじめ取引代理人制度の有無を確認しておくと、家族も安心しやすくなります。

8.4 Q. 未成年者取消権とは何ですか

A. 未成年者が親の同意を得ずに結んだ契約を、原則として取り消せる民法上の制度です。成年年齢引下げにより、18歳・19歳はこの権利を行使できなくなりました。証券口座の取引についても、18歳以上であれば原則として自己責任での判断となります。

参考資料

LIMO編集部ウェルスマネジメント班