年金生活者支援給付金は、老齢基礎年金の受給者のうち、前年の所得が一定額以下の方に上乗せで支給される制度です。ただ、この所得基準を確認するとき、iDeCo(個人型確定拠出年金)の受け取り方まで意識している方は多くありません。

iDeCoの老齢給付金は「年金」で受け取るか「一時金」で受け取るかによって、税法上の所得区分が変わります。実はこの違いが、年金生活者支援給付金の所得基準の判定にも関わってきます。

この記事では、年金生活者支援給付金の所得基準をおさらいしたうえで、iDeCoの受け取り方によって基準への影響がどう変わるかを確認していきます。

1. 年金生活者支援給付金の所得基準をおさらい

まずは、年金生活者支援給付金の所得基準を確認します。

1.1 前年の年金収入等が82万6500円以下

老齢年金生活者支援給付金は、65歳以上で老齢基礎年金を受けていること、前年の年金収入とその他の所得の合計が一定額以下であることが条件です。2026年10月分からは、昭和31年4月2日以後生まれの方は82万6500円以下、昭和31年4月1日以前生まれの方は82万4100円以下が基準になります(2026年9月分までは80万9000円・80万6700円でした)。障害年金・遺族年金など非課税の収入はこの合計に含まれません。

年金生活者支援給付金の対象者や金額の全体像については、LIMOの記事「年金生活者支援給付金とは?2026年最新の対象者・いくらもらえるか・ハガキが届かない理由を徹底解説」で詳しく解説しています。

1.2 この基準額に「その他の所得」も算入される

基準額の82万6500円(昭和31年4月1日以前生まれの方は82万4100円)は、公的年金等の収入金額だけでなく、給与所得や事業所得など、その他の所得も合算した金額で判定されます。iDeCoの老齢給付金を受け取る場合も、この「その他の所得」に含まれるかどうかが、受け取り方によって変わってきます。

2. iDeCoの受け取り方で「所得区分」が変わる

ここからが本題です。iDeCoの老齢給付金は、受け取り方によって税法上の扱いが異なります。

2.1 「年金」で受け取ると雑所得になる

iDeCoの老齢給付金を年金として分割で受け取ると、税法上は雑所得の扱いになり、公的年金等控除の対象になります。公的年金等控除の対象になるということは、その収入が「公的年金等の収入金額」として扱われるということでもあります。つまり、iDeCoを年金で受け取ると、その金額が年金生活者支援給付金の所得基準の判定にそのまま算入されることになります。

2.2 「一時金」で受け取ると退職所得になる

一方、iDeCoの老齢給付金を一時金としてまとめて受け取ると、税法上は退職所得の扱いになり、退職所得控除の対象になります。退職所得は、住民税の計算においては他の所得と分離して課税される仕組みです。この分離課税という性質から、退職所得は住民税の合計所得金額には算入されないという扱いが実務上とられています。年金生活者支援給付金の所得基準についても、この考え方に沿って、一時金で受け取った退職所得分は基準額の判定に含まれにくくなります。

iDeCoの老齢給付金は、受け取り方によって所得区分が変わる1/2

iDeCoの老齢給付金は、受け取り方によって所得区分が変わる

出所:iDeCo公式サイト、国税庁の情報をもとにLIMO編集部作成

3. 所得基準への影響をイメージで確認する

受け取り方によって、年金生活者支援給付金の所得基準への影響がどう変わりうるか、イメージ図で確認します。

※金額はしくみを説明するための設定例であり、実在のケースではありません。

iDeCoの受け取り方で、判定に使われる所得の合計が変わる2/2

iDeCoの受け取り方で、判定に使われる所得の合計が変わる

出所:日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」、厚生労働省「年金生活者支援給付金制度」、国税庁の情報をもとにLIMO編集部作成(実際の対象可否は世帯の他の所得・控除により異なる)

3.1 基準ぎりぎりの方ほど、受け取り方の影響が大きい

所得基準額の82万6500円(昭和31年4月1日以前生まれの方は82万4100円)に近い水準で老齢基礎年金を受け取っている方の場合、iDeCoの受け取り方が給付金の対象可否を分ける可能性があります。年金として受け取れば公的年金等収入に上乗せされて基準を超えてしまうケースでも、一時金として受け取れば基準内に収まることがあります。

和田 直子

iDeCoの受け取り方は、退職金や他の年金とのバランスで決める方が多いのですが、年金生活者支援給付金のような制度への影響まで含めて考えている方は少ない印象です。老後の収入全体を見渡して選ぶことをおすすめします。