3. 国民健康保険料の負担が重いときに考えられる対策
上限に達するほどの所得がなくても、国民健康保険料は決して軽い負担ではありません。厚生労働省の推計では、年収400万円の世帯で年33万8000円程度とされています。
ここからは、負担を抑える方向で検討できる方法をいくつか見ていきます。いずれもメリットだけで判断できるものではないので、注意したい点もあわせて挙げていきます。
3.1 国民健康保険組合に加入する
業種によっては、市区町村の国民健康保険ではなく国民健康保険組合に加入できる場合があります。
建設業や医師、税理士など、同業の人たちでつくる組合です。保険料が所得に比例せず、定額に近い設計になっていることが多いため、所得が高い人ほど差が出やすくなります。
ただし、加入できる業種や地域は組合ごとに決まっています。誰でも選べるわけではありませんし、給付の内容も組合によって違います。
3.2 保険料の水準が低い地域に移る
国民健康保険料の水準は自治体によって差があります。住む場所を選べる働き方であれば、比較して移ることも選択肢にはなります。
とはいえ、この差は縮まる方向に動いています。厚生労働省は保険料水準統一加速化プランを示していて、都道府県のなかで保険料の水準をそろえていく取り組みが進んでいるためです。
同じ都道府県内での引っ越しであれば、将来的に差が小さくなる可能性があります。保険料だけを理由に住まいを変えるのは、判断としては重すぎるでしょう。
3.3 世帯を1つにまとめる
二世帯住宅などで住民票の世帯が2つに分かれている場合、世帯ごとにかかる平等割が2つ分発生します。世帯を1つにまとめれば、平等割が1つになる可能性があります。
ただし、平等割を採用していない自治体もあります。世帯をまとめたことで軽減の判定に使う所得が合算され、かえって不利になることもあります。
世帯の分離や合併は、保険料以外の制度にも影響します。手続きの前に、お住まいの市区町村の窓口で試算してもらうのが確実です。
3.4 法人をつくって健康保険に移る
法人をつくって役員として給与を受け取る形にすれば、健康保険と厚生年金保険の対象になります。保険料の半分を法人が負担し、扶養している家族が何人いても本人の報酬だけで保険料が決まります。
健康保険には、国民健康保険にはない傷病手当金や出産手当金もあります。
その一方で、法人には赤字でもかかる税金があり、決算や社会保険の事務も増えます。保険料だけを見て決めるのではなく、税理士などに総合的に相談したい場面です。
4. 上限に届く前に確認しておきたいこと
国民健康保険料の賦課限度額は、2026年度に113万円となりました。子ども・子育て支援納付金賦課額という区分が新しく加わったことが、今年度のいちばん大きな変化です。
上限に届くのは給与収入でおよそ1100万円から1170万円の水準で、実際に上限を超えている世帯は全体の1.43パーセントにとどまります。多くの人にとっては、上限そのものよりも自分の保険料がどう計算されているかのほうが身近でしょう。
保険料の通知書には、所得割や均等割といった区分ごとの金額が記載されています。まずはそこを見て、いまの負担の中身を知るところからで十分です。
納付が難しいときには、分割して納める方法や、災害や失業などの事情に応じた減免の制度もあります。自治体で保険料の計算を担当していた頃も、早めに相談に来た方ほど選べる方法が多く残っていました。
なお、支払った国民健康保険料は社会保険料控除の対象です。確定申告や年末調整で申告すれば、所得税と住民税の負担を軽くできます。
賦課限度額や軽減の基準は年度ごとに変わります。正確な金額はお住まいの市区町村の窓口で確認してください。
参考資料
- 厚生労働省「国民健康保険の保険料(税)の賦課(課税)限度額について」(第205回社会保障審議会医療保険部会 資料3)
- 厚生労働省「令和8年度 税制改正の概要(厚生労働省関係)」
- 厚生労働省「保険料水準統一加速化プラン(第2版)」
- e-Gov法令検索「国民健康保険法施行令」
- e-Gov法令検索「高齢者の医療の確保に関する法律施行令」
- 国税庁「No.1130 社会保険料控除」
太田 彩子