厚生年金の平均年金月額は15万289円です。では、この「月15万円」に届いている人は全体のどれくらいいるのでしょうか。

本記事では、公的年金のしくみと2026年度の改定内容を確認したうえで、月15万円以上の受給者の割合を見ていきます。あわせて、働き方と年金額の関係を変える「年収106万円の壁」の見直しについても整理します。

松本 真奈
年金の見込み額は、これからの働き方でまだ動きます。とくに短時間で働いている方は、制度改正で厚生年金に加入する対象が広がるため、いまの前提のままで計算していると実際とずれることがあります。まずは全体の分布を押さえ、そのうえで制度の変更点まで見ていきましょう。

1. 公的年金は「国民年金+厚生年金」の2階建て

日本の公的年金は、土台となる「国民年金(基礎年金)」と、その上乗せにあたる「厚生年金」の2つで構成されています。まずはそれぞれの基本的なしくみを整理しておきましょう。

厚生年金と国民年金の仕組み1/7

厚生年金と国民年金の仕組み

出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」等を参考にLIMO編集部作成

【1階部分】国民年金(基礎年金)

  • 加入対象:原則として日本に住む20歳から60歳未満のすべての人
  • 保険料:全員定額、ただし年度ごとに改定される(※1)
  • 受給額:保険料を全期間(480カ月)納付した場合、65歳以降で満額の老齢基礎年金(※2)を受給できる。未納期間分に応じて満額から差し引かれる

※1 国民年金保険料:2026年度月額は1万7920円
※2 国民年金(老齢基礎年金)の満額:2026年度月額は7万608円

【2階部分】厚生年金

  • 加入対象:会社員や公務員、またパートなどで特定適用事業所(※3)で働き一定要件を満たす人が、国民年金に上乗せで加入
  • 保険料:収入に応じて(上限あり)決定される(※4)
  • 受給額:加入期間や納付済保険料により、個人差が出る

厚生年金は、会社員や公務員などが国民年金に上乗せして加入する制度です。加入対象も保険料の決まり方も国民年金とは異なるため、老後に受け取る金額は加入期間と収入によって差が出ます。

なお、公的年金の額は物価や現役世代の賃金の動きを反映して、毎年度改定されます。

※3 特定適用事業所:1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※4 厚生年金の保険料額:標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される

2. 2026年度は国民年金+1.9%、厚生年金+2.0%。4年連続の増額改定

公的年金額は賃金や物価の動向を踏まえて毎年度見直されます。2026年度は前年度と比べて国民年金(基礎年金)が1.9%、厚生年金(報酬比例部分)が2.0%の増額となり、4年連続のプラス改定となりました。

  • 国民年金(老齢基礎年金(満額)):7万608円(1人分 ※1
  • 厚生年金:23万7279円(夫婦2人分※2

※1 昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額7万408円(対前年度比+1300円)です。
※2 男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準です。

ここで押さえておきたいのは、国民年金のみの場合、満額(※3)でも月額は約7万円だという点です。

繰下げ受給(※4)の上限である75歳まで受給開始を遅らせたとしても、月額13万円には届きません。

※3 国民年金(老齢基礎年金)の満額:国民年金保険料を480カ月納付した場合に、65歳から受け取れる年金額
※4 繰下げ受給:老齢年金の受給開始年齢を66歳~75歳までの間に後ろ倒しする制度。「繰下げ月数×0.7%」の増額率が適用され、75歳で受給開始した場合の増額率は84%。

3. 厚生年金で「月15万円以上」を受け取る人は49.8%

厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金受給者全体の平均年金月額は15万289円です。この金額には、1階部分にあたる国民年金(老齢基礎年金)が含まれています。

3.1 厚生年金の受給額ごとの受給権者数

厚生年金の受給額3/7

厚生年金の受給額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 1万円未満:4万3399人
  • 1万円以上~2万円未満:1万4137人
  • 2万円以上~3万円未満:3万5397人
  • 3万円以上~4万円未満:6万8210人
  • 4万円以上~5万円未満:7万6692人
  • 5万円以上~6万円未満:10万8447人
  • 6万円以上~7万円未満:31万5106人
  • 7万円以上~8万円未満:57万8950人
  • 8万円以上~9万円未満:80万2179人
  • 9万円以上~10万円未満:101万1457人
  • 10万円以上~11万円未満:111万2828人
  • 11万円以上~12万円未満:107万1485人
  • 12万円以上~13万円未満:97万9155人
  • 13万円以上~14万円未満:92万3506人
  • 14万円以上~15万円未満:92万9264人
  • 15万円以上~16万円未満:96万5035人
  • 16万円以上~17万円未満:100万1322人
  • 17万円以上~18万円未満:103万1951人
  • 18万円以上~19万円未満:102万6888人
  • 19万円以上~20万円未満:96万2615人
  • 20万円以上~21万円未満:85万3591人
  • 21万円以上~22万円未満:70万4633人
  • 22万円以上~23万円未満:52万3958人
  • 23万円以上~24万円未満:35万4人
  • 24万円以上~25万円未満:23万211人
  • 25万円以上~26万円未満:15万796人
  • 26万円以上~27万円未満:9万4667人
  • 27万円以上~28万円未満:5万5083人
  • 28万円以上~29万円未満:3万289人
  • 29万円以上~30万円未満:1万5158人
  • 30万円以上~:1万9283人

厚生年金を月額15万円以上受け取っている人の割合は49.8%で、全体の半数には届いていません。厚生年金を受給していない人まで含めれば、この割合はさらに下がります。

4. 将来の年金額はどう確認する。「ねんきん定期便」と「ねんきんネット」

半数に届かないという結果を見ると、「自分は将来いくら受け取れるのか」が気になるところでしょう。

まず確認したいのが、毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」です。これまでの保険料納付状況や加入実績に加え、一定の条件に基づいた年金見込み額が記載されています。とくに50歳以上の方には、老齢年金の種類と受給見込み額が示されます。

より詳しく確認したい場合は、日本年金機構の「ねんきんネット」が使えます。スマートフォンやパソコンからログインして年金記録を確認できるほか、将来の受給額シミュレーションも利用できます。

ねんきんネットの主な機能5/7

ねんきんネットの主な機能

出所:日本年金機構「ねんきんネット」

今後の年収が変わった場合、働く期間を延ばした場合、厚生年金の加入期間が増えた場合など、条件を変えながら試算できるのが特徴です。

「年収106万円の壁」の見直しによって、これまで厚生年金に加入していなかった短時間労働者も加入対象となる可能性があります。働き方の変化が年金額に直結する以上、早めに見込み額を確認しておく意味は大きいでしょう。