2. 高額療養費も、申請しないと戻らない

療養費は立て替えた分を請求する給付でした。1か月の窓口負担が高額になったときの高額療養費も、同じく申請して戻る給付です。協会けんぽでは申請の経路が2つあります。

申請の手順と所要期間は、LIMOの記事「高額療養費、協会けんぽでの申請方法は2つ。令和8年1月開始の電子申請は平日8〜21時のみ、17時15分以降は翌営業日扱いになる点に注意」から要点を借りて確認します。

2.1 紙の申請は、届いた申請書に記入して返送する

まず従来の経路です。

同記事によると、高額療養費の対象になると、通常は対象月の翌々月下旬頃に、協会けんぽから支給申請書が送付されます。必要事項を記入し、同封の返信用封筒で返送すれば、指定した口座に高額療養費が振り込まれる仕組みです。

この紙の申請方法は、電子申請サービスが始まった後も引き続き利用できます。また、健康保険給付に関する申請書は、被保険者本人だけでなく、委任を受けた社会保険労務士が代理で提出することもできると同記事は述べています。

2.2 支給までの目安は受診月から4か月程度

時間がかかる給付です。

協会けんぽが公表している目安によると、高額療養費支給申請書は「受診月から4か月程度」で支給(不支給)決定通知書が届くとされています。これは、傷病手当金や出産育児一時金の「受付日から10営業日」と比べてかなり長い期間です。医療機関からの保険請求(レセプト)の処理状況によっては、さらに時間がかかる場合があるともされています。

出所:LIMO「高額療養費、協会けんぽでの申請方法は2つ。令和8年1月開始の電子申請は平日8〜21時のみ、17時15分以降は翌営業日扱いになる点に注意」

この目安の表は東京支部が公表している資料です。全国共通の説明としては、協会けんぽのよくあるご質問に、高額療養費は保険医療機関等から提出される診療報酬明細書の確認が必要であることから診療月から3か月以上かかると書かれています。

同じ目安の表には、療養費支給申請書は1か月程度とも示されています。1ページ目で見た立て替え分の払い戻しのほうが、高額療養費より早く戻る計算です。

一方、限度額適用認定申請書は約1週間で交付されるとされており、こちらは高額療養費の支給そのものよりずっと短い期間で手続きが完了します。

同じ協会けんぽへの申請でも、届くまでの時間は約1週間から4か月程度まで開く2/2

限度額適用認定申請書と療養費支給申請書、傷病手当金など、高額療養費支給申請書について、受付からの目安と届くものを並べた表

出所:全国健康保険協会東京支部「受付からお支払い・お届けまでの目安」をもとにLIMO編集部作成

そこで同記事は、急いで医療費の負担を軽くしたい場合は、高額療養費の支給を待つのではなく、先に限度額適用認定証を取得して窓口での支払い自体を抑える方法の方が、実務上は現実的な選択肢になると整理しています。

2.3 不備があると受付日から数え直しになる

この目安には前提があります。

同記事によると、これは不備が無かった場合の目安です。申請内容に不備があると申請書は返送され、再提出した受付日から改めて同じ日数がかかります。

記入漏れや書類の不足で手続きが最初からやり直しになるのは避けたいところなので、提出前に記入内容と添付書類を確認しておくことをすすめています。

2.4 高額療養費を電子申請できるのは被保険者と社会保険労務士

1ページ目で見た電子申請は、高額療養費にも使えます。

同記事によると、対象申請の一覧には高額療養費支給申請書と限度額適用認定申請書がいずれも含まれています。紙の申請書のように署名・押印をして返送する手間がなく、自宅や職場からオンラインで手続きを完結できる点が特徴だとしています。

ただし申請できる人には線が引かれています。協会けんぽは、電子申請サービスを利用できるのは被保険者と社会保険労務士で、被扶養者が使えるのは一部の申請に限られるとしています。対象申請の一覧でも、高額療養費支給申請書と限度額適用認定申請書はどちらも被扶養者の欄が空欄です。

事業主や船舶所有者は電子申請できません。また社会保険労務士を除き、申請者に代わって代理人が電子申請を利用することもできないとされています。被扶養者の分を申請する場合も、手続きをするのは被保険者ということになります。

2.5 電子申請には時間帯の制約がある

便利な一方で、紙にはない制限があります。

協会けんぽの電子申請サービスが利用できるのは、平日の8時〜21時に限られます。土日祝日や、年末年始(12月29日〜1月3日)は利用できません。「思い立ったときにいつでも申請できる」わけではなく、平日の日中から夜にかけての限られた時間帯にしか手続きできない点は、紙の申請書との大きな違いです。

出所:LIMO「高額療養費、協会けんぽでの申請方法は2つ。令和8年1月開始の電子申請は平日8〜21時のみ、17時15分以降は翌営業日扱いになる点に注意」

さらに見落とされやすいのが、17時15分以降に送信した申請は翌営業日の受付扱いになるという点だと同記事は指摘しています。今日中に申請したつもりが実際の受付は翌日扱いだった、という誤解が起きやすいところです。

21時の時点でまだ入力作業中の場合、システムはメンテナンス画面に切り替わり、保存していない入力内容は失われます。21時前に入力データを保存する操作をしておかないと、それまでの入力がすべて無駄になる可能性があります。

2.6 電子申請でも添付書類が要る場合がある

書類が一切不要になるわけではありません。

同記事によると、高額療養費支給申請書の電子申請では、低所得に該当する場合、マイナンバーを利用した情報照会を希望しないときに限り被保険者の課税証明書または非課税証明書の提出が必要です。

ほかにも、生活保護の廃止・却下に関する通知書や、公的制度からの医療費助成を受けている場合の領収書のコピー、医療機関を10か所以上受診した場合の別紙記入など、状況に応じて追加のアップロードが求められることがあります。

マイナンバーを利用した情報照会を希望すれば原則として課税証明書の提出を省略できますが、協会けんぽ側にマイナンバーが未収録の場合は情報照会ができないため、希望していても結局は添付書類の提出が必要になることがあるとしています。

3. 戻る額の計算と、戻るまでの時間を分けて確かめる

ここまで、立て替えた医療費が戻る療養費と、高額になった窓口負担が戻る高額療養費の手続きを見てきました。

療養費の側は、現物給付が原則で、やむを得ない事情や治療用装具などの6つの場面で立て替えたあとに請求する形です。戻るのは支払った額そのものではなく、保険診療を受けた場合を基準に計算した額から一部負担金相当額を差し引いた額になります。海外分は日本国内で保険診療として認められている医療行為であることと、療養目的の渡航でないことの2要件を満たす必要があり、支払いをした翌日から2年で時効です。

高額療養費の側は、紙の申請なら対象月の翌々月下旬頃に申請書が届き、支給までの目安は受診月から4か月程度です。療養費支給申請書は1か月程度、限度額適用認定申請書は約1週間で、急ぐなら限度額適用認定証を先に取るという選択肢もあります。令和8年1月13日からは電子申請も選べますが、使えるのは被保険者と社会保険労務士で、利用できるのは平日8時から21時まで、17時15分以降の送信は翌営業日受付になります。

どちらも、こちらから申請しなければ戻りません。自分のケースが対象になるか、どの書類が必要かは、ご加入の協会けんぽ支部にご確認ください。

参考資料

LIMO編集部社会保障解説班