3. 国保の区分は旧ただし書き所得の金額で決まる
国保加入者にとって鍵になる旧ただし書き所得について、算定のしかたと、いくらでどの区分になるのかを確認しておきましょう。まずLIMOの記事「高額療養費の所得区分はどう決まる?年収では判定されず、会社員は標準報酬月額・国保加入者は旧ただし書き所得が基準。同じ年収でも区分がズレる仕組みを編集部が整理」から要点を引用します。
国民健康保険加入者の場合は、標準報酬月額ではなく「旧ただし書き所得」という指標が使われます。これは、前年の総所得金額等(給与所得・事業所得・不動産所得・山林所得・株式や土地の譲渡所得などの合計)から、基礎控除43万円を差し引いた金額です。同一世帯の国保加入者全員分のこの所得を合算した金額で、世帯としての所得区分が判定されます。
出所:LIMO「高額療養費の所得区分はどう決まる?年収では判定されず、会社員は標準報酬月額・国保加入者は旧ただし書き所得が基準。同じ年収でも区分がズレる仕組みを編集部が整理」
名前は難しく見えますが、住民税の課税資料をもとに国保用に計算し直した所得、と捉えると分かりやすくなります。標準報酬月額とはまったく別の仕組みで出てくる数字です。
この金額をもとに、70歳未満は次のように分かれます。901万円超が区分ア、600万円超901万円以下が区分イ、210万円超600万円以下が区分ウ、210万円以下が区分エ、住民税非課税世帯が区分オです。
会社員の区分アが標準報酬月額83万円以上であることと並べると、同じ記号の区分でも見ている数字がまったく別物だと分かります。
4. 70歳未満の区分は5段階、令和9年8月に13段階へ
判定に使う指標は保険によって違いますが、70歳未満であれば区分そのものはアからオまでの5段階です。70歳以上は現役並み所得者・一般・低所得者という分け方になり、アからオという呼び方は使いません。
令和8年8月から令和9年7月まで適用される、協会けんぽの標準報酬月額と自己負担限度額は次のとおりです。
高額療養費制度の見直しは、令和8年8月と令和9年8月の2段階で行われます。このうち1段階目はすでに始まっていて、令和8年8月分から、一人当たり医療費の伸びに応じて月額の上限額が見直されました。
あわせて、新たに年単位の上限額が設けられました。8月から翌年7月までで計算し、区分アが168万円、イが111万円、ウとエが53万円、オが29万円です。標準報酬月額15万円以下と確認できた人は、区分エの年間上限が41万円になります。
ただし年間上限にもとづく払い戻しの申請が始まるのは令和9年8月からで、協会けんぽも申請書の掲載はそれまで待つよう案内しています。
そして令和9年8月からは、応能負担の観点から所得区分をよりきめ細かいものとするため、区分の細分化が行われる予定です。厚生労働省の資料では、70歳未満の区分はいまの5段階から13段階に分かれます。
あわせて、長期に治療を続ける人への配慮として「多数回該当」の金額は維持されます。そのうえで標準報酬月額15万円以下、国保では旧ただし書き所得86万円以下の人の多数回該当の金額が、令和9年8月から4万4400円から3万4500円に引き下げられます。
5. 働き方が変わったら区分も確認する
転職や退職で会社員から自営業者になった場合、あるいはその逆の場合、判定基準そのものが切り替わります。年収の感覚が同じでも、区分が変わっていることがあります。
年の途中で加入する保険が変わったときは、新しい保険者側で所得区分を把握するのに時間がかかることもあります。切り替えのタイミングでは早めに確認しておくと安心です。
6. 自分の区分はどこで確認できるか
会社員であれば、勤務先の総務・人事部門か、加入している協会けんぽ・健康保険組合に問い合わせれば標準報酬月額の等級が分かります。
国民健康保険の加入者は、市区町村の国保担当窓口で、世帯の旧ただし書き所得とそれに基づく区分を確認できます。
入院や手術で医療費が高額になると事前に分かっている場合は、区分を先に確認したうえで限度額適用認定証の申請を検討するとスムーズです。
7. 所得区分は年収ではなく保険で決まる
高額療養費の所得区分は年収では決まりません。会社員は健康保険の標準報酬月額、国民健康保険の加入者は旧ただし書き所得という、別々の基準で判定されます。
旧ただし書き所得は前年の総所得金額等から基礎控除43万円を引いた額で、同一世帯の国保加入者全員分を合算します。70歳未満は901万円超から210万円以下までの4段階に住民税非課税世帯を加えた5区分です。所得を申告していない人がいると、最も高い区分アに含まれる自治体もあります。
70歳以上では、世帯にいる70歳以上の被保険者の課税所得が145万円以上かどうかも加わります。令和8年8月分から月額の上限額が見直され年間上限が新設されており、令和9年8月にはさらに区分の細分化が控えています。働き方や年齢が変わったタイミングで、自分の区分を確認しておきましょう。
参考資料
- 全国健康保険協会「高額療養費」
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
- 枚方市「国民健康保険 高額な医療費を支払ったとき(高額療養費)」
- LIMO「高額療養費の所得区分はどう決まる?年収では判定されず、会社員は標準報酬月額・国保加入者は旧ただし書き所得が基準。同じ年収でも区分がズレる仕組みを編集部が整理」
LIMO編集部社会保障解説班