65歳以上の単身無職世帯の住居費は、月1万1416円です。消費支出全体の7.7%にすぎません。
この数字だけを見ると、持ち家があれば老後の住まいの費用は軽いように見えます。ところがここには、固定資産税も将来の大きな修繕費も入っていません。
この記事では、家計調査の住居費から抜け落ちているコストを確認します。2ページ目では、統計の費目と生活実感がどこでずれるのかを分類表で見ていきます。
1. 【老後の住居費】家計調査の数字はどこまで含んでいるか
総務省統計局の家計調査(家計収支編)2025年平均によると、65歳以上の単身無職世帯の消費支出は月14万8445円で、そのうち住居は1万1416円でした。65歳以上の夫婦のみの無職世帯でも1万7739円と、他の費目に比べて低い水準です。
1.1 「住居」に入っているのは2つだけ
家計調査でいう住居費は、家賃地代と設備修繕・維持の合計です。二人以上の世帯の2025年平均で見ると、住居費1万8678円のうち家賃地代が8095円、設備修繕・維持が1万584円でした。
持ち家世帯であれば家賃地代はほぼゼロになります。住居費が低く出るのは、持ち家世帯と賃貸世帯が混ざった平均だからです。
※家計調査は項目ごとに四捨五入しているため、内訳の合計は住居費の額と一致しないことがあります
1.2 固定資産税は住居費に入っていない
ここが見落とされやすいところです。固定資産税は「住居」ではなく、直接税のうちの「他の税」として非消費支出に分類されています。収支項目分類の内容例示にも、都市計画税とともに固定資産税が挙げられています。
一方、火災・地震保険料は住居費に入っています。収支項目分類では「設備修繕・維持」の中の「工事その他のサービス」に置かれており、畳替えや給排水関係の工事費と同じ区分です。住宅総合保険、住宅火災保険、地震保険が例示されています。
家計調査の住居費だけで老後の住まいの費用を見積もると、固定資産税の分だけ実態より低く出ます。
1.3 二人以上の世帯の持家率は65歳以上で94.8%
同じ調査で、二人以上の世帯の持家率は87.3%、そのうち65歳以上の世帯に限ると94.8%でした。年齢が上がるほど持ち家の割合は高くなります。
なお、この概要に単身世帯の持家率は載っていません。ここで挙げた数字はいずれも二人以上の世帯のものです。
2. 修繕費に公的な目安があるのはマンションだけ
もうひとつの見えないコストが修繕費です。ここにはマンションと戸建てで大きな違いがあります。
2.1 国が示す修繕積立金の目安
国土交通省は、マンションの修繕積立金に関するガイドラインを令和6年6月に改定しました。長期修繕計画の事例366件をもとに、建物規模別の目安を示しています。
延床面積5000平方メートル未満・20階未満のマンションなら、1平方メートルあたり月335円が平均で、事例の3分の2は235円から430円の幅に収まります。
専有面積40平方メートルの住戸で平均値を当てはめると、月額1万3400円、年間では16万800円になります。
なお、機械式駐車場がある場合は別に加算が必要です。ガイドラインも、目安の範囲に収まっていないからといって直ちに不適切だと判断されるわけではないと断っています。
2.2 戸建てには同じ目安がない
このガイドラインはマンション向けに集計されたものです。戸建てを対象にした同種の公的な目安は見当たりません。
マンションの区分所有者は、管理組合が毎月の修繕積立金を集めるため負担が見える化されています。戸建ての場合、屋根や外壁、給排水管の修繕費は、必要になったときに一括で支払うことになりがちです。
目安がない分だけ先延ばしにしやすく、放置すれば劣化が進んで工事費がかさむこともあります。国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインは、計画期間を30年以上で、かつ大規模修繕工事が2回含まれる期間以上とするとしています。この考え方を自分の家に当てはめてみるのが自衛策になります。
持ち家の見えないコストに関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。
