2. 制度としては、同じ月に二重で確定することはない

2か所で加入すれば報酬は合算されますが、では転職の前後で国民年金と厚生年金の両方から引かれてしまうことはあるのか。ここは合算とは別の話になります。

保険料の重複と還付の考え方は、LIMOの記事「国民年金と厚生年金の保険料は重複して払ってしまうことがあるのか?制度上は起きない仕組み、実際に重複した場合の還付には時効がある?」から要点を借りて確認します。

日本年金機構の案内によると、厚生年金保険料は月単位で計算され、資格を取得した月から発生します。退職した場合は、退職日の翌日が資格喪失日となり、資格喪失日が属する月の前月分まで納める必要があります。ただし月末日に退職した場合は、翌月1日が資格喪失日になるため、退職した月分までの保険料を納めることになります。

同じ月のうちに退職と就職の両方があった場合(同月得喪)も、二重に保険料がかかるわけではありません。その月にもう一度、厚生年金または国民年金の資格を取得していれば、先に喪失した分の厚生年金保険料は納付不要となり、すでに徴収されていた場合は還付されます。

出所:LIMO「国民年金と厚生年金の保険料は重複して払ってしまうことがあるのか?制度上は起きない仕組み、実際に重複した場合の還付には時効がある?」

それでも重複が起きたという声は残ります。理由は制度ではなく、手続きの側にあります。

国民年金保険料の口座振替と、厚生年金保険料の給与天引きは、それぞれ別のタイミングで処理されます。資格の得喪の情報が反映されるまでにタイムラグがあると、システム上は一時的に両方から引き落とされてしまうことがあります。この場合、最終的には制度上の整理が行われ、重複した分は還付の対象になります。

国民年金の口座振替は、あらかじめ設定した引き落とし日に自動的に処理されるため、脱退の手続きが間に合っていないと、資格喪失後の月分まで一旦引き落とされてしまうことがあります。

出所:LIMO「国民年金と厚生年金の保険料は重複して払ってしまうことがあるのか?制度上は起きない仕組み、実際に重複した場合の還付には時効がある?」

保険料重複が起きるケースと起きないケース2/2

保険料重複が起きるケースと起きないケース

出所:日本年金機構「月の途中で入社したときや、退職したときは、厚生年金保険の保険料はどのようになりますか。」などを基にLIMO編集部作成

払いすぎた分は返ってきますが、待っているだけでは終わりません。

保険料の重複納付があった場合、基礎年金番号をもとに確認が行われ、対象者には「国民年金保険料還付請求書」が届きます。この書類に口座情報を記入して返送すると、払いすぎた分が還付される仕組みです。

国民年金法の規定により、保険料の還付を受ける権利は、2年を経過すると時効により消滅します。これは、未納保険料を納める権利の時効と同じ期間です。重複に気づかないまま2年が過ぎてしまうと、払いすぎた分を取り戻す手段がなくなってしまいます。

出所:LIMO「国民年金と厚生年金の保険料は重複して払ってしまうことがあるのか?制度上は起きない仕組み、実際に重複した場合の還付には時効がある?」

金額にすると、1か月あたりの過払いはこうなります。

日本年金機構の公表資料によると、国民年金保険料は令和8年度で月額1万7920円です。この1か月分がそのまま過払いになる計算です。

重複が2か月続けば約3万5840円、3か月続けば約5万3760円と、気づくまでの期間が長引くほど過払い額も積み重なっていきます。

出所:LIMO「国民年金と厚生年金の保険料は重複して払ってしまうことがあるのか?制度上は起きない仕組み、実際に重複した場合の還付には時効がある?」

3. 合算と重複は、まったく別の話

ここまで、2か所で厚生年金に加入したときの合算と按分、そして転職の前後で起きる保険料の重複を見てきました。

2か所で加入した場合は、主たる事業所を1つ選び、それぞれの報酬月額を合算した月額で標準報酬月額を決めます。保険料額は各事業所の報酬月額に基づいて按分されます。届書は「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」で、被保険者本人が事実発生から10日以内に提出します。

一方、国民年金と厚生年金が同じ月に二重で確定することはありません。手続きの反映のタイムラグで一時的に重複した場合は還付されますが、その権利は2年で時効になります。

掛け持ちで働き始めたときは、2つの給与明細の厚生年金保険料の欄を並べて見てください。合算後の按分になっているかどうかは、そこで確かめられます。判断に迷う場合は、選択した事業所を管轄する年金事務所にご相談ください。

参考資料

LIMO編集部社会保障解説班