4. 「移動のSuica」から「生活のSuica」へ。キャラクターも役割が変わる

Suicaは、もともと電車に乗るためのICカードとして広く普及しました。

その後、駅ナカやコンビニなどでの電子マネー利用、モバイルSuicaなどへと用途を広げてきましたげ、現在はさらにその先の活用に目を向けています。

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出所:東日本旅客鉄道株式会社

出所:東日本旅客鉄道株式会社

例えば2026年秋には、モバイルSuicaにコード決済機能を搭載する予定。従来のSuicaの電子マネーでは残高上限が2万円でしたが、新たなコード決済では、より高額な買い物にも対応できる仕組みを導入するとしています。

また、JR東日本は今後10年間でSuicaの機能を順次拡張し、交通や決済だけでなく、地域のさまざまな生活シーンで利用できる「生活のデバイス」への進化を目指しています。

こうした方向性を考えると、キャラクターに求められる役割も変わってきます。駅や電車を連想させる存在だけではなく、買い物、旅行、地域とのつながりなど、生活のさまざまな場面に登場できるキャラクターである必要があります。

3案の制作意図を並べてみると、共通点が見えてきます。

  • A案は「そっと寄り添ってくれる友達」
  • B案は「挑戦する背中をそっと押してくれる存在」
  • C案は「見たことのない世界を見せてあげる存在」

いずれも、鉄道や改札を直接説明するキャラクターというより、生活者との関係性を重視しています。JR東日本も、新キャラクターについて「お客さま・地域とのつながりを象徴する存在」と位置付けています。

5. 「ペンギン卒業」は寂しい。でも、JR東日本は新旧をつなぐ

とはいえ、25年間にわたってSuicaを象徴してきたペンギンがいなくなることへの寂しさは小さくありません。

JR東日本もその点を意識しているとみられます。

2026年度末に向けて、「Suicaのペンギン」に感謝する「Penguin Years」と題したキャンペーンを展開。2027年3月31日には卒業イベントも開催する予定です。

つまり、新キャラクターを発表してペンギンを突然交代させるわけではありません。

25年間の歴史を振り返り、ペンギンへの感謝を伝えたうえで、新キャラクターへバトンタッチする流れをつくっています。

これは、長年のファンにとっても重要なポイントです。

キャラクターはサービスの機能とは違い、長く使うほど「思い出」と結びつきます。

Suicaを使い始めたときにペンギンを見ていた人にとっては、キャラクターの交代そのものが、ひとつの時代の区切りになるからです。

そのためJR東日本にとっても、単純なデザイン変更ではなく、過去から未来への「引き継ぎ」をどう見せるかがポイントになりそうです。

6. トレンドウォッチャーのひとこと

大蔵 大輔

Suicaの新キャラクター候補が発表されると、SNSでは早くも大きな反響が広がりました。「どれがいい?」という純粋な人気投票だけでなく、3案のデザインをめぐるツッコミや、「ペンギンのままでいいのでは」と卒業を惜しむ声も見られます。

今回の投票では、9月23日まで利用者が1票を投じ、11月18日に結果が発表されます。すでにネット上で候補への反応が生まれているだけに、これから投票期間を通じて「どれが選ばれるか」だけでなく、「なぜそのキャラクターが支持されたのか」という議論が広がる可能性もあります。

ペンギンから新キャラクターへの交代は、JR東日本にとって25年ぶりの大きなブランド転換です。次のキャラクターが「Suicaの顔」として定着していく過程そのものにも注目したいところです。

参考資料

大蔵 大輔