障害者手帳を持っている、または障害年金を受け取っている人にとって、「住民税非課税世帯」の対象になりやすいという話は聞いたことがあっても、具体的にどこまで基準が緩いのか、家族全員に当てはまる話なのかは意外と知られていません。

「本人が障害者なら世帯も自動的に非課税になる」と考えていると、思わぬところで判定がずれることがあります。基準の数字と、世帯という単位の考え方を分けて、できるだけ具体的な数字で確認していきます。障害年金とパートを組み合わせる場合の上限も、あわせて試算します。

なお、住民税非課税世帯の優遇措置に関する詳しい説明は、下記の記事より一部を引用・参照しています。

【2026年最新】「住民税非課税世帯」を対象とした「優遇措置」8選 《年金・給与》年収いくらで該当するのか境界線も見ておこう「収入ゼロでも給付金が届かない?」5つの盲点を徹底解説
【2026年最新】「住民税非課税世帯」を対象とした「優遇措置」8選 《年金・給与》年収いくらで該当するのか境界線も見ておこう「収入ゼロでも給付金が届かない?」5つの盲点を徹底解説
ココがポイント
  • 障害者本人の非課税基準は合計所得135万円以下(給与収入なら204万4000円未満)と、単身の通常基準(45万円以下)よりかなり緩いです。
  • 障害年金・遺族年金は非課税所得のため、受給額の大小にかかわらず合計所得金額に含まれません。
  • 本人が非課税でも、同居する家族の所得次第で世帯全体としては非課税にならないことがあります。

1. 障害者の住民税非課税基準とは?

まず、障害者本人に適用される非課税の基準を確認します。単身者の通常基準(合計所得45万円以下)とは別の、もう一段緩やかな基準が用意されており、この違いを知らないまま「自分は対象外だろう」と思い込んでいる人が少なくないようです。障害者手帳を持っているだけで、この基準の存在自体を知らない人も一定数いると考えられます。

1.1 合計所得135万円以下、給与収入なら204万4000円未満

納税義務者本人が障害者に該当する場合、前年の合計所得金額が135万円以下であれば住民税は課税されません。給与収入だけで生活している場合、この135万円という所得の基準は、年収に換算すると204万4000円未満に相当します。

単身者の通常基準である45万円と比べると、3倍近い所得まで非課税の対象になります。障害者・未成年者・寡婦またはひとり親には、それぞれの立場に応じてこの135万円という共通の優遇された基準が用意されており、条件を満たせば申告の手間もそれほど大きくありません。

齊藤 慧
204万4000円という数字を知らないまま「働きすぎたら非課税から外れるのでは」と不安になり、必要以上に就労を控えてしまう人もいるかもしれません。まずは自分の状況が基準の内側か外側かを、正確な数字で確認することが大切です。

1.2 障害年金・遺族年金は「非課税所得」、そもそも合計所得に入らない

障害基礎年金・障害厚生年金などの障害年金、および遺族年金は非課税所得です。日本年金機構は「非課税所得」について、障害を支給事由とする年金や、死亡を支給事由とする年金がこれに当たると説明しています。

非課税所得は、そもそも合計所得金額の計算に含まれません。障害年金の受給額がいくら大きくても、それ自体を理由に非課税の基準を超えることはない、という点が、この後の試算にもつながる重要な前提になります。この扱いを知らないまま、年金の額面だけを見て不安になっている人も少なくないはずです。

2. 扶養親族がいても、135万円という基準は変わらない

もう一つ、意外と知られていない点があります。通常の非課税基準は扶養する家族が増えるほど緩くなりますが、障害者本人に適用される135万円の基準は、その仕組みとは別に設計されています。

2.1 通常の基準は人数で動くが、障害者の135万円は単一の基準として示されている

単身者以外の通常の非課税基準は「35万円×(本人+同一生計配偶者+扶養親族数)+10万円+21万円」以下という式で計算し、家族が増えるほど基準額も上がっていきます。

一方、障害者・未成年者・寡婦またはひとり親に適用される135万円の基準は、港区・仙台市・新宿区・荒川区という複数の自治体の公式ページを確認したところ、いずれも単一の「135万円以下」という基準のみが示されており、扶養人数に応じて基準額が変わるという記載は見当たりませんでした。

つまり、この135万円は通常の基準の延長ではなく、独立した優遇ルールとして設計されていると考えられます。扶養家族の有無で基準が動くと思い込んでいると、実際の判定と食い違うことがあります。反対に、扶養家族がいないからといって基準が不利になるわけでもないという点も、あわせて押さえておきたいところです。

3. 【編集者の視点】

自治体のホームページを見比べていて感じたのは、この135万円という基準の説明が、どこも一行で済まされているという点です。通常の非課税基準のように計算式が示されているわけではなく、単一の数字だけが提示されています。

その分かりにくさが、「自分の場合は扶養家族がいるから基準が違うのでは」という誤解を生みやすくしているように感じます。実際には、この135万円は本人の状況だけで判断される、シンプルな基準として運用されているとみられます。家族構成が複雑な世帯ほど、この単純さの恩恵をかえって見落としがちだと感じています。

基準がシンプルであることは、裏を返せば「自分は当てはまらないだろう」という思い込みを解きやすいということでもあります。障害者手帳をお持ちの方は、扶養家族の有無にかかわらず、まずこの135万円という数字だけで自分の状況を確認してみることをおすすめします。

4. 「本人が非課税」と「世帯が非課税」は別の話

ここからが、多くの解説記事が一行で済ませてしまう部分です。本人の非課税と、世帯全体の非課税は、判定の単位が異なります。

4.1 住民税非課税世帯になるには、世帯全員が非課税である必要がある

住民税非課税世帯として扱われるには、同一世帯に属する全員が住民税非課税でなければなりません。障害者本人が135万円という緩い基準で非課税になっても、同居する配偶者や子に一定以上の所得があれば、世帯としては非課税になりません。

逆に言えば、単身で障害者本人だけの世帯であれば、135万円という緩い基準だけで世帯全体の非課税を判断できます。世帯の構成によって、話の難易度が大きく変わる制度だと理解しておく必要があります。同居する家族の人数が増えるほど、確認すべき所得の項目も増えていきます。

4.2 【世帯構成別・非課税判定の目安】

前提条件:本人が障害者(合計所得135万円以下)である世帯の非課税判定パターン1/2

前提条件:本人が障害者(合計所得135万円以下)である世帯の非課税判定パターン

出所:港区「障害者の住民税(特別区民税・都民税)について教えてください。」などを基にLIMO編集部作成

単身世帯の場合

  • 本人(障害者):所得130万円(本人の非課税基準を満たします)
  • 判定:世帯全体が非課税世帯になります

配偶者がいる世帯の場合

  • 本人(障害者):所得130万円(本人基準は満たします)
  • 配偶者に所得60万円がある場合:配偶者は単身基準45万円を超え非課税になりません
  • 配偶者が無収入の場合:配偶者側の基準も満たすため非課税世帯になります

5. 【編集者の視点】

取材で感じるのは、「障害者だから非課税世帯になれるはず」という理解のまま、家族の働き方を見直さずにいる人が少なくないという点です。本人の基準が緩いことと、世帯全体の判定が別であることは、意外と混同されがちです。

特に、配偶者がパートで働き始めて所得が増えたタイミングで、それまで非課税だった世帯が急に対象から外れるケースが想定されます。本人の基準だけを見て安心していると、世帯全体の判定基準を見落とすことになりかねません。年の途中で家族の働き方が変わったときは、世帯全員分の所得を一度見直す習慣を持っておくと安心です。

同居する家族がいる場合は、障害者本人の135万円だけでなく、家族それぞれの所得が各自の非課税基準(単身なら45万円、扶養がいれば別の式)を満たしているかを、世帯全員分について確認することをおすすめします。

6. 障害年金とパート収入を組み合わせた場合の上限を試算する

障害年金は非課税所得のため合計所得に含まれません。この仕組みを踏まえて、パート収入と組み合わせた場合にどこまで働けるかを、具体的な数字で整理します。

6.1 障害年金は別枠、パート収入だけで204万4000円まで

障害年金を受け取りながらパートで働く場合、合計所得金額に算入されるのはパート収入から給与所得控除を引いた部分だけです。障害年金の額は、いくら受給していても合計所得金額には一切加算されません。

そのため、パート収入だけで135万円の所得基準に収まるかどうかを考えればよく、給与収入としては204万4000円未満が目安になります。障害年金の額を気にしてパートの勤務時間を控える必要はない、という結論になります。この仕組みは、障害年金を受給していない人が単身の通常基準(45万円)を使う場合と比べても、かなり有利な設計になっています。

6.2 【障害年金+パート収入の組み合わせ別・非課税基準の目安】

前提条件:障害年金を受給しながらパート収入(給与)を得る場合の合計所得金額の目安(編集部試算)2/2

前提条件:障害年金を受給しながらパート収入(給与)を得る場合の合計所得金額の目安(編集部試算)

出所:日本年金機構「非課税所得とは、どのようなものですか。」などを基にLIMO編集部作成

パート収入なしの場合

  • 障害年金のみ受給:合計所得は0円として扱われ、非課税基準を満たします

パート収入を加えた場合

  • パート収入が年150万円:給与所得は85万円(非課税基準:合計所得135万円以下/給与収入204万4000円未満)となり、非課税基準を満たします
  • パート収入が年210万円:給与収入が204万4000円(合計所得135万円)を超え、非課税基準から外れます
齊藤 慧
障害年金の額を心配してパートの時間を減らしている人がいるとしたら、その心配は基準上は不要な場合が多いはずです。

7. 【編集者の視点】

この仕組みを知らないまま、障害年金とパート収入を単純に合算して「もう非課税ラインを超えているはずだ」と思い込み、働く時間を必要以上に控えている人がいるのではないかと感じています。

非課税所得という言葉自体が分かりにくく、年金事務所や自治体の窓口で丁寧に説明を受ける機会も限られています。結果として、本来なら働ける時間まで自主的に制限してしまう例が起こり得ます。

パート先を決める前に、自分の障害年金の受給額と予定している給与収入を分けて書き出し、給与収入だけが204万4000円の基準に関係することを確認しておくと、無用な自己制限を避けられます。

8. 非課税を適用してもらうには、届出が必要になる場合がある

135万円という緩やかな基準は、自動的に適用されるとは限りません。自治体側に障害者であることが正しく伝わっている必要があります。

8.1 年末調整・確定申告・市民税申告書のいずれかで届け出る

所得税の確定申告や、勤務先での年末調整で障害者控除の手続きが済んでいる場合は、そのデータが自治体に連携されます。一方、これらの手続きをしていない場合は、市民税・県民税の申告書の障害者控除の欄に記入する必要があります。

障害者手帳の交付を受けた年の翌年以降、この届出が反映されて初めて、非課税判定にも135万円の基準が使われます。手続きを済ませていないと、通常の基準で判定されてしまう可能性があるため、心当たりのある方は一度確認しておくと安心です。特に、パートなどで新たに収入が発生したタイミングは、届出の有無を見直すよい機会になります。

齊藤 慧
手帳を持っているだけで自動的に反映されると思い込んでいる人ほど、届出のタイミングを確認しておくとよいと思います。

※本記事は、編集部が仙台市・港区・新宿区・荒川区・日本年金機構などが公表する公式の最新情報を直接確認の上、執筆・検証しています。

9. まとめ

  • 障害者本人の非課税基準は合計所得135万円以下(給与収入なら204万4000円未満)です。
  • この135万円という基準は、複数の自治体公式ページを確認した限り、扶養親族の人数にかかわらず一律とみられます。
  • 障害年金・遺族年金は非課税所得のため、受給額にかかわらず合計所得金額に含まれません。
  • 本人が非課税でも、同居する家族の所得次第で世帯全体としては非課税にならないことがあります。
  • 非課税基準を適用してもらうには、年末調整・確定申告・市民税申告書のいずれかで障害者であることを届け出る必要があります。

障害者本人の非課税基準は、単身の通常基準よりかなり緩やかに設計されています。ただし、それがそのまま世帯全体の非課税を意味するわけではなく、同居する家族の所得も含めて確認する必要があります。

自分や家族の状況がどちらに当たるか判断が難しい場合は、お住まいの市区町村の税務窓口に、世帯構成と各自の所得を具体的に伝えたうえで相談することをおすすめします。障害年金の受給額とパート収入を分けて伝えると、話がより早く進みます。

10. よくある質問

10.1 Q. 障害者控除を受けていないと、非課税基準135万円は使えませんか。

A. 確定申告や年末調整で障害者控除の手続きが済んでいれば、そのデータが自治体に連携されます。手続きをしていない場合は、市民税・県民税の申告書に記入することで反映されます。

10.2 Q. 障害者手帳の等級によって非課税の基準額は変わりますか。

A. 障害者控除の控除額は等級によって異なりますが、非課税となる合計所得135万円という基準自体は、一般の障害者・特別障害者で共通しているとみられます。

10.3 Q. 世帯の中に障害者が複数いる場合、非課税の基準はどうなりますか。

A. 世帯全員が、それぞれの立場(障害者なら135万円以下、その他なら単身45万円以下等)の基準を満たしている必要があります。世帯の人数が増えても基準額が単純に加算されるわけではなく、一人ひとりの所得を個別に確認する必要があります。

10.4 Q. パート収入が204万4000円をわずかに超えたら、非課税は急にゼロになりますか。

A. 住民税の非課税措置がなくなるほか、国民健康保険料や介護保険料など他の制度の算定基準にも影響する場合があります。具体的な影響額は世帯構成や自治体によって異なるため、お住まいの自治体窓口で確認することをおすすめします。基準を超えそうな年は、事前に窓口へ相談しておくと落ち着いて対応できます。

参考資料

齊藤 慧