アクセサリー、布小物、陶器、イラスト。フリマアプリやハンドメイドマーケットの普及で、自分の作品を販売するハードルは大きく下がりました。

「好きなことを仕事にできるかもしれない」と考えて始める人も多いなか、実際の収入はどれくらいなのでしょうか。

日本デザインプランナー協会が2023年10月に実施した調査から、その実態を見ていきます。

この記事の3つのポイント
  • 1か月の収入は「~5000円」が42.6%で最多、次いで「0円」が40.7%
  • 「1万1円~2万円」は6.5%、「2万1円以上」は0%
  • 始めた理由の最多は「楽しく過ごすために取り組みたい」で42.6%

1. 1か月の収入は「~5000円」が42.6%で最多

日本デザインプランナー協会が、全国の20~60代の男女108人を対象に「ハンドメイド作品の販売における1ヶ月の収入」を尋ねたところ、結果は次のとおりでした。

  • ~5000円:42.6%
  • 0円:40.7%
  • 5001円~1万円:10.2%
  • 1万1円~2万円:6.5%
  • 2万1円~3万円:0%
  • 3万1円~4万円:0%
  • 4万1円~5万円:0%
  • 5万1円~:0%

最も多かったのは「~5000円」の42.6%で、次いで「0円」が40.7%でした。この2つで83.3%を占めます。

一方、月1万円を超える収入がある人は6.5%にとどまり、月2万円を超えた人は1人もいませんでした。

2. 「収入がある」といっても月2万円超はゼロ

調査元のリリースは「収入がある方は59.7%」と見出しに掲げています。ただし選択肢の割合から計算すると、0円以外の合計は59.3%です。本記事では各選択肢の数値をそのまま用いています。

いずれにせよ、6割近くが何らかの売上を得ているのは事実です。ただ、その中身を見ると印象は変わります。

収入がある人のうち、およそ7割は「~5000円」の層です。金額を積み上げていくと、月5000円以下(0円を含む)が83.3%、月1万円以下が93.5%。そして月2万円を超える回答は0%でした。

「収入がある人が6割」という表現だけを取り出すと、副業として成立しているように読めます。しかし実際には、多くが月数千円の範囲にとどまっているというのが、この調査が示す姿です。

3. 始めた理由の1位は「楽しく過ごすため」

そもそも、回答者はどんな動機でハンドメイドを始めたのでしょうか。「ハンドメイドを始めた理由」への回答は次のとおりです。

  • 楽しく過ごすために取り組みたい:42.6%
  • 家計の足しにしたい:26.9%
  • 特に理由はない:11.1%
  • 自分の作品でもっと喜んでもらいたい:9.3%
  • 自分の作品をもっと知ってもらいたい:7.4%
  • プロとして生計を立てていきたい:1.9%
  • 法人化して本格的な事業にしたい:0.9%

最も多いのは「楽しく過ごすために取り組みたい」で42.6%。一方、「プロとして生計を立てていきたい」は1.9%、「法人化して本格的な事業にしたい」は0.9%で、合わせても2.8%にとどまります。

収入が伸びていないというより、そもそも大きな収入を目的にしていない人が大半、という構図が見えてきます。

「家計の足しにしたい」は26.9%と2番目に多く、収入への期待がないわけではありません。ただし「生計を立てる」ほどの規模を目指している人は、ごく少数です。

4. 魅力の1位は「趣味として楽しめること」

ハンドメイドの魅力についても質問がなされています。

「ハンドメイドの良いところは何ですか?」(複数回答可)への回答で最も多かったのは「趣味として楽しめること」でした。次いで多かったのが「好きな作品作りで収入を得られること」です。なお、リリースでは各項目の割合は公表されていません。

つまり、収入は目的の一部ではあっても、すべてではないということです。手を動かして形にする楽しさ、完成したときの達成感、それを誰かが手に取ってくれる喜び。こうした要素が、金額に表れない価値として存在しています。

副業を「いくら稼げるか」だけで評価すると、この分野の実態は見誤ることになります。

なお、現状のハンドメイドスキルについては「とても満足している」3.7%と「少し満足している」49.1%を合わせて52.8%。反対に「あまり満足していない」38.9%と「全く満足していない」8.3%を合わせると47.2%で、半数近くが満足していないという結果でした。

5. ハンドメイド販売の収支をどう考えるか

とはいえ、販売する以上は収支の視点も欠かせません。

ハンドメイドには、材料費、梱包資材、送料、販売プラットフォームの手数料といったコストが発生します。作品が売れても、これらを差し引くと手元に残る金額はわずかということも珍しくありません。

さらに見落としがちなのが、制作にかかる時間です。仮に1点に3時間かけて1500円で売れたとしても、材料費500円を引けば時給換算では330円程度になります。

  • 材料費と資材費を1点あたりで把握する
  • 販売手数料と送料を差し引いた「手取り」で計算する
  • 制作時間を記録して時給換算してみる

こうした整理をしておくと、価格設定の見直しや、注力する商品の判断がしやすくなります。

6. 趣味として続けるか、事業として伸ばすか

収入が月5000円以下の人が8割を超えるという数字は、ハンドメイドが「趣味の延長」として楽しまれている実態を示しています。始めた理由の回答とも整合する結果です。

一方で、事業として伸ばしていくのであれば、作品づくり以外の要素も関わってきます。写真の撮り方、商品説明の書き方、SNSでの発信、リピーターとのコミュニケーション。作品の魅力を伝える工程にも、相応の時間がかかります。

どちらが正しいということではありません。趣味として楽しむなら収支は気にしすぎない、事業として取り組むなら数字を管理する。自分がどちらを目指しているのかをはっきりさせておくことが、長く続けるうえでは大切です。

なお、副業による所得が一定額を超える場合は、確定申告が必要になることがあります。要件は働き方や他の所得の状況によって異なるため、売上が伸びてきたら国税庁の公表情報を確認するか、所轄の税務署に問い合わせるようにしてください。

7. この調査をどう読むか

最後に、数字を受け取るうえでの前提を整理しておきます。

この調査の回答者は108人です。統計的な代表性を主張できる規模ではなく、傾向をつかむための参考値として捉えるのが適切でしょう。

調査時期は2023年10月7日から9日の3日間で、現在から見れば数年前のデータです。フリマアプリやハンドメイドマーケットの利用状況はその後も変化しているため、最新の実態と一致するとは限りません。

加えて、この調査は回答時点の収入を聞いたものであり、活動歴の長さは区別されていません。「0円」の40.7%には、始めたばかりで軌道に乗る前の人も、長く続けたうえで販売実績がない人も、同じように含まれている可能性があります。

8. ハンドメイド市場を取り巻く環境

個人の販売を支えているのが、ハンドメイド専門のマーケットプレイスやフリマアプリの存在です。

スマートフォンひとつで出品でき、決済も配送も仕組みが用意されています。かつて委託販売やイベント出店が中心だった時代と比べれば、参入のハードルは大きく下がりました。

その一方で、出品者が増えれば、作品が人の目に触れる機会をめぐる競争も生まれます。作品そのものの魅力に加えて、見せ方や届け方の工夫が問われる環境になっているといえるでしょう。

9. まとめにかえて

今回は、日本デザインプランナー協会の調査からハンドメイド販売の収入事情を確認しました。

  • 1か月の収入は「~5000円」が42.6%で最多、「0円」が40.7%
  • 月1万円超は6.5%、月2万円超は0%
  • 始めた理由の1位は「楽しく過ごすために取り組みたい」で42.6%、プロ志向は合計2.8%
  • ハンドメイドの魅力の1位は「趣味として楽しめること」

数字だけを見れば厳しい世界にも映りますが、そもそも大きな収入を目指していない人が多数派です。始めてみたい人は、まず楽しむところから入ってみてはいかがでしょうか。

10. 【執筆者コメント】割合で見るか、内訳で見るか

「収入がある方は59.7%」という数字を最初に見たとき、私はまず副業として成立している姿を思い浮かべました。ところが選択肢をたどると、そのうちおよそ7割は「5000円まで」の層です。全体の割合で見るのと、内訳まで見るのとでは、受け取る印象がずいぶん違います。

どちらかが正しいという話ではなく、同じ調査から読み取れることが複数あるということなのだと思います。そして内訳まで見たときに浮かんできたのは、厳しい現実というより、別の目的で続けている人たちの姿でした。

始めた理由の1位は「楽しく過ごすために取り組みたい」で42.6%。プロを目指している人は合わせて2.8%です。稼げていないのではなく、稼ぐことを主目的にしていない。魅力の1位が「趣味として楽しめること」だったことも、その読み方を裏づけているように思います。

私自身、副業と呼べるほどのものはやっていないのですが、余暇はもっぱらラーメンとサウナで、どちらも1円も生みません。それでも続けているのは楽しいからで、そこに収支の話を持ち込むのは野暮だという感覚は、よくわかる気がします。

ただ、材料費が出ていく趣味である以上、時給換算だけは一度やっておいて損はないと思います。数字を知ったうえで「それでも続ける」と決められるなら、それがいちばん強い続け方なのだろうと思いました。

参考資料

中沢 新