「住民税非課税世帯 条件」で検索する方の多くは、金額の目安だけでなく「自分の家がどのパターンに当たるのか」を知りたいはずです。
実は住民税の非課税判定には、本人だけが非課税になるケースと、世帯全員が非課税になるケースの2段階があり、ここを混同すると「自分は対象外」と早合点してしまうことがあります。
さらに、障害者や未成年者、寡婦・ひとり親には別枠の基準があり、住む自治体によっても算定式そのものが異なります。この記事では、金額そのものではなく「どういう仕組みで判定されるか」を体系的に整理します。
- 住民税の非課税には「所得割のみ非課税」「均等割・所得割ともに非課税」の2段階があり、後者に世帯全員が該当してはじめて「住民税非課税世帯」になります。
- 障害者・未成年者・寡婦・ひとり親には、前年の合計所得金額135万円以下という別枠の基準があり、通常のボーダーラインとは判定の入口が異なります。
- 非課税限度額の算定式は住んでいる自治体の級地区分によって異なり、同じ「扶養なし・単身」でも非課税になる所得の上限が変わります。
1. 住民税の「均等割」と「所得割」、非課税になる3つのパターン
まず基本の仕組みを確認しておきます。個人住民税には、所得に応じて負担する「所得割」と、所得にかかわらず定額を負担する「均等割」の2つがあります。
1.1 非課税になるかどうかは「一定の事由」で決まる
総務省は個人住民税について、低所得者層の負担を考慮し、一定の事由に該当する方については税負担を求めることは適当でないとして課税対象から外れる、と説明しています。
この「一定の事由」は、大きく3つのパターンに分かれます。多くの自治体が同じ枠組みで説明しています。
大阪市の案(令和8年度課税分以降)では、次の3パターンのいずれかに該当すると住民税が非課税になるとされています。
1つ目は、その年の1月1日現在で生活保護法の生活扶助を受けている場合です。医療扶助など他の扶助のみでは該当しません。
2つ目は、障害者・未成年者・寡婦・ひとり親で、前年の合計所得金額が135万円以下(給与所得者の場合、年収204万3999円以下)の場合です。
3つ目は、前年の合計所得金額が一定額以下の場合です。扶養親族等がいなければ合計所得45万円以下、いる場合は「35万円×人数+21万円+10万円」以下が基準になります。
2. 「本人非課税」と「世帯非課税」は違う——2段階の判定を混同しない
ここからが独自の深掘りです。ここまでの3パターンは、実は「所得割・均等割ともに非課税」になる条件です。住民税の非課税判定には、もう1段階手前があります。
2.1 所得割だけが非課税になる、もう一つのラインがある
尼崎市の案では、均等割と所得割の両方が非課税になる基準(扶養親族がいる場合)を「35万円×人数+31万円」以下としています。
一方で、所得割だけが非課税になる基準は、扶養親族がいる場合「35万円×人数+42万円」以下、扶養親族がいない場合は「45万円」以下と、別に定められています。
つまり、合計所得がこの2つの基準の間にある人は、均等割は課税されるものの所得割は非課税という状態になります。「非課税」と言っても中身が一段階違うわけです。
2.2 【尼崎市の例・扶養1人のケースで見る2段階の基準】
均等割・所得割ともに非課税になる場合
- 算定式:35万円×2人+31万円
- 合計所得の上限:101万円以下
所得割のみ非課税になる場合
- 算定式:35万円×2人+42万円
- 合計所得の上限:112万円以下
この「101万円と112万円の間」にいる世帯は、均等割は課税されつつ所得割だけ非課税という状態です。世帯全員がこの状態でも、いわゆる「住民税非課税世帯」(均等割・所得割ともに非課税)には該当しません。
「住民税非課税世帯」と呼ばれるのは、世帯全員が均等割・所得割ともに非課税である場合を指します。1人でも両方非課税に達していない人がいると、その世帯は非課税世帯にはなりません。
3. 【編集者の視点】
この2段階の仕組みは、給付金の対象判定で実際に影響します。ある年度の給付金は「住民税非課税世帯」を対象にしていても、別の制度は「本人が非課税であること」だけを条件にしている場合があります。
読み方を誤ると、自分は対象になるはずと思い込んで申請の準備をしていなかったり、逆に対象外だと思い込んで申請を見送ってしまったりすることが起こり得ます。
実務上の防衛策は、案内文書に書かれている対象条件が「本人非課税」なのか「世帯全員が非課税」なのかを、まず文言で確認することです。表記が曖昧な場合は、案内元の窓口(自治体の給付金担当課や税務課)に、自分の世帯構成を伝えたうえで直接確認するのが確実です。
特に、世帯の中に会社員として一定以上の収入がある家族が1人でもいると、その家族分だけで世帯全体の非課税判定が崩れることがあります。同居する家族の所得状況まで含めて確認する視点を持つとよいでしょう。
4. 障害者・未成年者・寡婦・ひとり親の「135万円特例」——未成年者の定義に注意
先ほどの3パターンのうち、障害者・未成年者・寡婦・ひとり親に当たる場合の基準(前年の合計所得金額135万円以下)は、通常のボーダーラインとは別枠で用意されている点が特徴です。
4.1 「未成年者」は18歳未満・未婚が条件
この特例の対象になる「未成年者」の定義は、2022年4月の民法改正を受けて変わっています。岡山市の案によると、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられたことに伴い、対象年齢も20歳未満から18歳未満に変更されました。
令和5年度分から、賦課期日(1月1日)現在で18歳未満であることが基準になっています。岡山市の案では、令和8年度の場合、平成20年1月3日以降に生まれた未婚の方が未成年者に当たるとされています。
ここで見落としやすいのは、「未婚であること」が条件に含まれている点です。年齢だけを見て「18歳未満だから該当する」と判断すると、実際の要件とずれる場合があります。
寡婦・ひとり親についても、この135万円特例の対象です。ひとり親税制については、令和3年度から未婚のひとり親も対象に含める見直しが行われています。自分がこの4区分(障害者・未成年者・寡婦・ひとり親)のどれかに当たるかどうかを、まず確認するのが最初の一歩になります。
5. 非課税限度額は住む場所で変わる——大都市と地方で差
ここまでの「扶養親族がいない場合は合計所得45万円以下」という基準は、実はすべての自治体で共通ではありません。生活保護基準の地域差(級地区分)に応じて、自治体ごとに算定式が設定されているためです。
5.1 大阪市・尼崎市と、新潟県三条市を比べてみる
大阪市・尼崎市の案(いずれも大都市部)では、扶養親族がいない場合の非課税限度額は「35万円+10万円」で45万円以下です。
一方、新潟県三条市の案では、扶養親族がいない場合の基準は「前年合計所得金額が38万円以下」とされています。扶養親族がいる場合の算定式も「28万円×人数+10万円+16万8千円」と、大阪市・尼崎市の式とは係数が異なります。
5.2 【単身・給与収入のみのケースで見る自治体差】
大阪市・尼崎市の場合
- 合計所得の上限:45万円以下
- 給与収入換算の上限:110万円以下
新潟県三条市の場合
- 合計所得の上限:38万円以下
- 給与収入換算の上限:103万円以下
給与収入換算の上限は、給与所得控除の最低保障額(令和8年度分から65万円)を合計所得の上限に加えた編集部試算です。同じ「単身・給与収入のみ」でも、居住地によって非課税になる収入の上限が7万円ほど異なる計算になります。
6. 【編集者の視点】
「住民税非課税世帯の年収は110万円くらい」という目安を見かけることがありますが、これはあくまで大都市部の単身世帯を前提にした数字です。
地方の自治体では、生活保護基準の級地区分が異なるため、同じ収入でも非課税にならない場合があります。逆に言えば、大都市部の目安をそのまま自分の状況に当てはめると、実際より甘く見積もってしまう可能性があります。
防衛策としては、目安の金額だけで判断せず、自分が住んでいる市区町村の税務課のページで、実際の算定式(合計所得の基準額と扶養親族の人数)を確認することです。
多くの自治体は「非課税基準」「非課税限度額」といったページ名で算定式を公開しています。電話で確認する場合も、扶養親族の人数と前年の合計所得の見込みを伝えると、担当者が判定しやすくなります。
7. 令和8年度、単身世帯の非課税ラインが実質的に引き上がった
もう一つ、見落としやすい変化があります。令和8年度分から、給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられました。
7.1 合計所得の基準は変わらないが、給与収入換算の上限は上がる
新潟県三条市の案は、この点について「非課税基準そのものは変更されていない」と明記しています。合計所得の基準額(38万円や45万円など)自体は、令和8年度も変わっていません。
ただし、給与収入から給与所得控除を差し引いた額が合計所得になる以上、控除額が10万円増えれば、同じ合計所得の基準を満たす給与収入の上限も10万円分上がります。
実際に、東京都港区の案では、給与収入のみの単身世帯について、令和8年度の非課税基準を「給与収入110万円以下」としています。これは、合計所得の基準額は変えずに、控除額の引き上げ分だけ収入側の上限が上がったことを反映した数字です。
一方で、障害者・未成年者・寡婦・ひとり親の135万円特例については、給与収入換算で204万3999円以下という基準が、複数の自治体案で変更なしとされています。同じ令和8年度の改正でも、影響の出方が基準の種類によって異なる点には注意が必要です。
※本記事は、編集部が総務省および各市区町村(大阪市・尼崎市・東京都港区・新潟県三条市・岡山市)が公表する公式の最新一次資料を直接確認の上、執筆・検証しています。
去年の時点で「非課税ラインをわずかに超えていた」という方は、令和8年度分からは状況が変わっている可能性があります。前年の給与収入をもう一度、最新の基準に当てはめて確認しておくとよいでしょう。
8. 【編集者の視点】
制度の基準そのものが変わっていないという説明は正確ですが、生活者にとって知りたいのは「自分の収入で非課税になるかどうか」という結果の側です。ここに説明のギャップが生まれやすい部分です。
実務上の罠は、去年の案内文書や記事をそのまま参考にしてしまうことです。合計所得の基準額は変わっていなくても、給与収入換算の上限は年度によって動く可能性があります。
防衛策は、判定に使う前年の所得情報を、最新年度の基準(自治体の税務課が公開している算定式)に当てはめて確認することです。給与収入だけでなく、年金収入や事業収入がある場合は控除の仕組みが異なるため、収入の種類ごとに確認する必要があります。
会社員以外の働き方(フリーランス、年金受給者との複数収入がある方など)は、給与所得控除がそのまま当てはまらないケースもあります。判断に迷う場合は、確定申告や住民税申告を行う際に、自治体の窓口で個別に確認することをおすすめします。
9. まとめ
- 住民税の非課税には「所得割のみ非課税」と「均等割・所得割ともに非課税」の2段階があり、世帯全員が後者に該当してはじめて住民税非課税世帯になります。
- 障害者・未成年者・寡婦・ひとり親には、前年の合計所得金額135万円以下という別枠の基準があります。未成年者は18歳未満かつ未婚であることが条件です。
- 非課税限度額の算定式は自治体の級地区分によって異なり、給与所得控除の見直しにより、令和8年度分から単身世帯の給与収入換算の上限も変わっています。
「住民税非課税世帯かどうか」は、金額の目安だけを見ていると判断を誤りやすい仕組みです。所得割と均等割、本人と世帯、そして自治体ごとの算定式という3つの軸を分けて考える必要があります。
自分や家族の状況を確認したいときは、まず住んでいる市区町村の税務課のページで最新の算定式を確認し、判断に迷う場合は窓口に直接相談するのが確実な進め方です。
10. よくある質問
10.1 Q. 住民税非課税世帯とはどういう世帯ですか。
A. 世帯全員の住民税について、所得割・均等割のいずれも非課税である世帯を指します。世帯の中に1人でも両方が非課税になっていない人がいる場合は、非課税世帯には該当しません。
10.2 Q. 未成年者に当たれば必ず非課税になりますか。
A. 前年の合計所得金額が135万円以下であることに加えて、賦課期日(1月1日)現在で18歳未満かつ未婚であることが条件です。年齢だけでは判定できません。
10.3 Q. 非課税になる収入の基準は全国で同じですか。
A. 同じではありません。生活保護基準の地域差(級地区分)に応じて、自治体ごとに算定式(合計所得の基準額)が設定されているため、住んでいる場所によって基準額が異なります。
10.4 Q. 令和8年度から非課税になる人が増えるのですか。
A. 合計所得の基準額そのものは変わっていませんが、給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられたため、給与収入のみの単身世帯では、給与収入換算の非課税ラインが実質的に上がっています。個別の判定は自治体の窓口で確認してください。
参考資料
- 総務省「地方税制度 個人住民税」(総務省)
- 大阪市「市民税・府民税・森林環境税が課税されない方」(大阪市)2025年12月26日更新
- 尼崎市「個人市民税・県民税の非課税基準」(尼崎市)2026年2月17日更新
- 港区「住民税(特別区民税・都民税)はどういう場合に非課税になりますか」(東京都港区)2025年12月12日更新
- 三条市「令和8年度から適用される市民税・県民税の税制改正」(新潟県三条市)2025年11月26日更新
- 岡山市「民法改正に伴う未成年者の非課税措置の改正」(岡山市)2026年1月5日更新
LIMO編集部家計解説班


