2019年9月24日に日本証券アナリスト協会主催で行われた、株式会社トランザス2020年1月期第2四半期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。IR資料

スピーカー:株式会社トランザス 代表取締役社長 藤吉英彦 氏

2020年1月期第2四半期決算説明会

藤吉英彦氏:社長の藤吉でございます。本日はお忙しいなか、多数の方々にご参加いただいていることを、心より感謝申し上げます。それでは、2020年1月期第2四半期の決算説明資料に基づいて、説明させていただこうと思います。

全体の概況から申し上げますと、昨年に引き続き旧ビジネスから新しいビジネスへの移行期ということで、まだ足元では具体的な数字を公表できず、非常に残念に思っています。

過去25年に渡ってトランザスが蓄積してきた技術、ノウハウ、経験がありますが、IoTはこれからようやく活性化していくということで、将来に向けて、私どもの技術がようやく花開きそうな大きな変化も出てきています。

決算発表から日が経っていますので、数字のところは比較的簡単にご紹介しながら、足元で私どもがどのような活動をしつつ、将来の展望としてどのようなものが見えつつあるのかをご紹介していきたいと思います。

PROFIT & LOSS①

前年比から見ていきます。売上高、売上総利益、営業利益の各項目については、昨年の四半期に比べると比較的上昇はしていますが、いずれにせよまだ業務の転換期ということで、数字上の進捗はみなさま方にまだお見せできる状況ではないというのが現状です。

しかしながら、昨年よりは若干よくなっている状況です。

COST

コストについては、売上原価が比較的上昇しました。こちらに関しては後ほど説明いたします。

BREAKDOWN

売上の内訳ですが、スライドの中央が2020年度の予想になります。第2四半期は(その左の)青色のラインになりますが、進捗としては、まだまだ少ない数値になります。しかし、私どもの事業の特性としては、売上が第4四半期にかなり寄る特性がありますので、「まだまだこれから」といった状況です。

PROFIT & LOSS②

予想比からご説明しますと、売上高はおおよそ予想と同じような数字で推移しました。利益に関しては、先ほど少しお話ししたとおり原価が上昇したことにより、予想を下回っているのが現状です。

また上記に加えて、本社オフィスに製品デモルームを設置するため改装を行いました。

以前から私のブログ等でも紹介させていただいておりましたが、ようやく完成しました。「IoT」と言葉で言ってもよくわからなかったものを、お客さまにお見せできる状況が整いました。

オフィスに関しても、フリーロケーション制導入によるコミュニケーションの活性化など、従業員の生産性向上を図るように改装を行ったこともあり、(利益項目が予想を)若干下回っている状況です。

ANALYSIS

営業利益予想のマイナスのところで、具体的に何が減少したのかを示しています。売上高の減少はわずかでしたが、製品の売上原価が増加してしまったことが、今回の営業利益がマイナスに触れてしまった要因になります。

(製品売上原価の増加については)主にデジタルサイネージの販売に際して、月額モデルの販売に力を入れたことにより、イニシャルでの売上を比較的抑えながら月額収益に振っており、原価率が少し多くなってしまっているのが現状です。

いずれにしても、冒頭に申し上げたとおり、まだ上場会社としてみなさま方に「いかがでしょうか」というかたちで(結果を)お見せできるような状況ではございません。しかしながら、足元は着実に動いていますので、トピックスというかたちでご紹介します。

FY20 Q2 TOPICS SUMMARY

まず、私どもが昨年から引き続いて、上半期に進めてきたところを8つご紹介します。上半期にいろいろと変化があった部分もありますので、その点もあわせてご紹介します。

1つ目が、「デジタルサイネージ事業の事業拡大」です。こちらに関しては、4つ目の「P3(Platform & Planning Products)社との本格営業開始」に絡んできます。さらに連動するのが、3つ目の「クラウドプラットフォームへの集中投資を実施」の部分です。

これについてですが、今年3月にNSCホールディングスとトランザスで、合弁事業としてP3(Platform & Planning Products)という合弁会社を立ち上げています。ホームページではあまり詳しく書いていないのですが、NSCホールディングスはメディア関係の会社で、メディアの中心的な存在として事業を進めてきた会社です。

一方、私どもは25年間、ものづくりを中心として事業を進めてきました。さらにデジタルサイネージの分野においては、ものづくりから配信までを一括して手掛けてきた会社で、デジタルサイネージ業界においては非常に老舗の位置付けにあります。

私どもは、かれこれ20年近くデジタルサイネージに取り組んできましたが、正直に申し上げまして、なかなか販売がうまくいかなかったという過去があります。なぜかと言うと、このサイネージ事業は必ず「ニワトリとタマゴ論」になるからです。

「もの(デジタルサイネージ)ができて配信ができるのに、お客さまに買っていただくとしても広告は何を流すのか」と、必ずこうなるのです。逆に広告側からすると、「広告配信したいけれど、配信する内容はどうするのか、またどのようにして配信するのか」といったように、「ニワトリとタマゴ論」で、なかなか両輪が同時に動いて前に進んでいくのが難しい事業です。

今回、3月にP3社が発足して、両サイドの視点から物事を見られるようになったことで、私どもが過去から蓄積してきた技術をいろいろなところで使えるという具体的な足掛かりが見えてきたことを示しているのが、スライドの①から④あたりです。

これが本格的に稼働し始めるのは、おそらく(2020年1月期)第4四半期から来年にかけてになろうかとは思いますが、着々とデジタルサイネージの拡大を進めています。こちらに関しては、過去にはあまり大きく強調してこなかった事業ですが、P3社の発足とともに非常に大きな可能性が見えてきた状況です。

そして、5つ目が「NGH(ホテル向けオンデマンドサービス)販売プロモーション」です。これに関してですが、まず「NGH」は「Next Generation Hospitality Service」の略です。トランザスでは、過去20年間ぐらい、ホテル向けのオンデマンドサービス「Set Top Box」の販売で売上や利益を上げてきた経緯があります。それを前期から月額モデルに大きくシフトするという決定を行いました。

前期から、この「NGH」というものの開発とともに、どういう戦略を立てていくのかを考えていましたが、無料でばらまいて月額で回収していくという、このホテル向けオンデマンドサービスの立て付けがようやく上半期に完了しました。

現在、1つのホテルで実証実験が終わり、ちょうど来月ぐらいから複数のホテルに導入して、それを一気に全国に広げていこうということで動いています。こちらに関しては、大手さまとの提携を踏まえながら進めていく方針ですので、また具体的な発表ができるタイミングになりましたら、IRやニュースリリースを通じてみなさま方にご報告しながら進めていこうと思っています。

状況だけを簡単にご紹介しますと、今のところはホテルさまの反応は極めて良好です。以前のホテル側は「Set Top Box」と呼ばれるボックスをリースで設置して、月々のリース料を支払いながらオンデマンドの収益をレベニューシェアするという方法をとっていました。

しかし昨今、これだけインターネットが浸透してきて、ホテル側も無料で取り付けてサービスを受けたいという流れになっているため、今の世の中の流れと本格的に連動した、同じベクトルの製品だと考えています。

6つ目の「自動チェックイン端末」についてですが、こちらは前回の株主総会でもデモを実演させていただいた製品で、オートチェックインシステムです。正直を言いますと、日本のホテルへの導入はなかなか敷居が高いものがあると考えていたのですが、いよいよホテルさまも自動チェックインを考えていかないと、今後のオリンピック需要、インバウンド需要に対応しきれなくなってきたということで、比較的いろいろなところから引き合いをいただいています。現在は、それぞれのセグメントに向けて着々と開発を進めているという状況です。

あわせて、シンガポール、マレーシア、タイでの需要もかなり活性化してきています。こちらの市場も、私どもにとっては非常に大きなポテンシャルを持っている市場だと思っています。

7つ目が「ITソリューション事業強化」ということで、以前はシスコシステムズ社で営業をしていた坂本を役員として迎えています。その関係で、Cisco Meraki MSPパートナーなど、いろいろなところと幅広いコミュニケーションを取るようになり、いろいろな事業の可能性を模索できるようになってきました。まず、私どものお客さまにMerakiのシステムを導入してもらうなど、事業を進めています。

8つ目が、「シンガポール IoT事業本格スタート」です。こちらに関してはプレスリリースを出させていただきましたが、シンガポールの照明メーカーであるOTTO Solutionという会社と業務提携を行いました。

私は先週、シンガポールにいまして、OTTO社の社長と昼食をとりながら、今後どういうかたちで一緒に事業を展開していくのかという話をさせていただきました。シンガポール側……マレーシア、タイ、ベトナム、インドネシアもひっくるめて、IoTでエネルギーの削減(などを検討しています)。

東南アジアは非常に暑く、エアコンをかなり強くかけます。シンガポールに行くと、室内は日本よりも寒い。上着を着ていないと、エアコンで寒くて体調が悪くなってくるのですが、そのような環境であり、オフィス全館の空調管理システムには非常に大きな問題があると思っています。エネルギーを過度に使っているというのが東南アジアの現状のようです。

今回、OTTO社と、まずはVolkswagenのシンガポールのビルの照明制御を全館で行います。そして第2フェーズでは空調制御といったことを、私どものIoT技術を使って進めていく方針です。

将来的な流れについてお話しします。OTTO社が作っている照明器具は非常におもしろいのですが、「Bluetooth Mesh」と言いまして、すべての照明器具にBluetoothが入っており、各々がBluetoothで相互に通信します。また「PIR」という人感センサーも付いており、さらに「LUXセンサー」という照度のセンサーも入っているということで、将来的には温度センサーも入れるということです。

例えば、この(説明会をしている)部屋の照明は、基本的には人が歩くエリアを網羅していますので、人が歩くすべてのエリアをセンサーで全部監視できることになります。そして人感センサーで、どのくらいの人がそのエリアにいるのかということで、人の過密度を測ることができます。

私どもでは「ヒートマッピング」と言っているのですが、人がどこにどのぐらい密集しているのかがわかるため、「どのエアコンを『強』にしなければいけないのか」「あるエリアはほとんど人がいないため、エアコンを切ったり、もしくは温度を上げてもいい」といったような制御を、自動で全館で行うかたちになります。

こちらに関しては、私どものIoT技術と、OTTO社の照明(の性能)や営業力をお互いに融合させた「Smart IoT industry 4.0 ソリューション」を、これからどんどん展開していくことで、両社で合意しながら進めています。

OTTO社との協業は1つの例ですが、東南アジアでもIoTは国を挙げてかなり力を入れている分野ですので、私どもとしても将来的な価値がかなりあるのではないかと考えています。

デジタルサイネージ事業の事業拡大(Q3 New Platform投入予定)

それでは、これまで説明させていただきました8つのトピックスについて、写真も交えながら簡単にご紹介します。

こちらのスライドは、デジタルサイネージ事業の事業拡大についてです。私どもが過去から取り組んできた市場は、このような市場になります。アウトドア、店舗、コンビニエンスストア、カー用品店などといったところでサイネージを幅広く展開しています。

今後はメディア広告の事業とあわせて展開することで、今まで広告主がいないと出せないエリアにも展開できるようになり、これが非常に大きな価値になります。極端な話をすれば、私どもが専用端末として安く開発して現場に設置することで、毎月利益を生むビジネスモデルの展開が可能になります。

そうすると、これまでROIを気にしながら進めてきたサイネージのビジネスが、最初からプラスで展開できる可能性を帯びてくることになります。もちろん、面数、さらにどれだけ広告価値があるかによって設置できるところは絞られてくるかもしれません。

ただし、最初から広告として利益が見込め、さらに端末代金として採算が見込めるエリアがあれば、無料で設置してロケーションオーナーに家賃を払って展開するといった流れが可能になります。

スライドの下にタクシーが書いてあります。今はタクシーサイネージがそれに近いビジネスモデルで展開されていますが、よく似たビジネス展開ができるようになります。そうすると一気に面数が広がり、月額収益が入ってくる可能性が出てきます。

サブスリプションモデルのラインナップ充実(Q3~)

続いて、サブスクリプションモデルのラインナップ充実ということで、第3四半期くらいからサイネージの面数を増やしていく活動をしています。横長のモニターであったり、(スライドの右側の写真は)空港に置かれているものですが、そうしたものをどんどん広げていこうということで動いています。

先ほどお話しした「NGH」と呼ばれる、ホテルに無料配布してオンデマンドを楽しんでもらう機械も、実はサイネージとして使えるのです。どういう仕組みになっているのかについてですが、大きなモニターに常時何かの映像が流れていて、下に出てくるQRコードを、特にアプリを落とすことなく携帯端末でスキャンします。すると、携帯端末とこのパネルが連動して専用のWebアプリが立ち上がり、違う広告が展開されます。そして、それを操作すると大きなモニターも連動して動く。これが、「NGH」の仕組みです。

何ができるのかと言うと、インタラクティブに双方向でのサイネージのビジネスが展開できます。比較的多くのお客さまに「これはおもしろい」「すごい技術だ」と評価いただいています。そちらを月額モデルで……スライドには「月額1,980円」と書いてありますが、ケースバイケースで値段が高い場合も安い場合もあります。参考例ですが、現状はそうした活動を行っています。

クラウドプラットフォームへの集中投資を実施

あわせて、クラウドプラットフォームを増強しています。私どもがサイネージで展開してきたパネル数が1万パネル前後ですが、将来的にはかなり大きな数に拡大しそうですので、こちらの配信サービスを増強し、さらに配信内容をもう少し広告寄りにということで、広告スポンサーが容易に広告を出せるような配信の仕組みを、私どもで開発している状況です。

P3(Platform & Planning Products)社との本格営業開始

先ほど紹介させていただきました、P3社の簡単なイメージ図です。「匠の技」ということで、私どもの技術とメディアの融合は非常に大きな可能性を帯びている、というイメージ図になります。

NGH(ホテル向けオンデマンドサービス)販売プロモーション

「NGH」については、先ほど紹介させていただいたとおりです。今まで私どもが繰り広げていたオンデマンドサービスを無料のサービスに置き換えて、月額ビジネスにしていくという内容になります。

以前から何度もご案内させていただいていますが、私どもはこれまでおよそ20万室ほどのオンデマンドサービスの展開実績があります。仮にホテルの20万室のテレビが、私どもが提供する無料のオンデマンドサービスに置き換わったら、これがまた広告価値を生むのです。

私どもは、20万室のテレビパネルに向けたサービスを展開できるわけで、つまりインバウンドを含めてホテルに来られたお客さまへのタッチポイントになるのです。そうすると、ここも1つのビジネスになるということで、そこも視野に入れている状況です。

自動チェックイン端末(レジャー施設、ホテル仕様の販売計画)

自動チェックイン端末については、先ほど申し上げましたとおり、ホテル向け、東南アジア向けを着々と開発しています。

ITソリューション事業強化

ITソリューション事業強化に関しても、IoTの推進と、ネットワークの強化の連動は必要不可欠となりますので、そのあたりでも連携も図っています。

シンガポール子会社 IoT事業本格スタート

シンガポール子会社でのIoT事業の本格スタートについてです。シンガポールの子会社設立から2年が過ぎましたが、日本の市場に比べて東南アジアの市場は、かなりの「実利主義」と言いますか……地元は地元で強いネットワークがあるのですが、公的なところに関しては非常に実利を重んじます。「日本よりも」という言い方は語弊があるかもしれませんが、投資対効果をかなり考えている印象です。

つまり、私どものIoTソリューションが実際にお客さまの利益になることが証明できれば、日本よりもおもしろい展開ができると考えています。よって、今、OTTO社と取り組んでいるライティングの戦略を通じて、オフィス全体を分析しながらエネルギー削減を進めていくということで、こちらに軸足を置いて進めています。

トランザス IoTプロダクトショールーム開設

そして、私どものIoTプロダクトのショールームができ上がりました。簡単に説明させていただきますと、まずオートチェックインの機械があり、宿泊予約をしたお客さまがオートチェックインの機械に番号を入れると、ドアが開いて宿泊施設の中に入れる仕組みです。

宿泊施設に入ると、いろいろなセンサーが付いており、照明が自動で制御されます。この照明はプログラムが組まれており、夕方6時になると勝手に消えます。午前中は比較的明るめで、お昼になると少し照度を落として、また夕方くらいから徐々に照度を上げて、夕方以降に100パーセントで照らすという自動制御が組まれています。さらに、人が動くと、人の動きに応じて照明がついたり消えたりします。そして、ドア開けていただくと勝手に扇風機が回り始めて、出ていくと扇風機が止まります。

またテレビも置いてありまして、宿泊施設を想定したデモができるようになっています。このようなショールームになっており、こちらでお客さまに宿泊を疑似体験していただきながら、IoTを体験いただく流れになっています。

お客様と株主の皆様への感謝と成功に向けてTake Off

「お客様と株主の皆様への感謝と成功に向けてTake Off」ということで、新しい事業のTake Offを一日も早く実現したいということで、全社を挙げて活動しています。昨年に旧事業から新しい事業に切り替えを始め、これまで3回ほど説明会をしております。

私の思いとしては、次の説明会くらいには「これがこうなって、こうなりました」という具体的な数字を出したいと思っています。また、これまでに株主さまから「中期計画くらいは出してほしい」と言われたこともあるため、次の説明会くらいには、中期的な計画や、どういうかたちで事業を展開できるのかについて、もう少し具体的なものをご説明できるといいと思っており、それを目指してがんばっている次第です。

以上となります。

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