定年が視野に入ってくると、住宅ローンの残りがどれくらいあるのかが気になってきます。完済予定の年齢は覚えていても、いま残高がいくらなのかまでは把握していないという方も少なくないのではないでしょうか。
金融経済教育推進機構(J-FLEC)の「家計の金融行動に関する世論調査2025年」によると、二人以上世帯のうち世帯主が60歳代で借入金額を回答した世帯の住宅ローン残高は、平均697万円、中央値300万円でした。500万円以上が残っている世帯は45.3%にのぼります。
この記事では、60歳代でどれくらいの世帯が借入を抱えているのか、住宅ローンの残高はいくらか、そして50歳代から70歳代にかけて残高がどう変わっていくのかを順に確認していきます。
- 60歳代で借入金がある二人以上世帯は14.3%。借入の目的で最も多いのは住宅関連の45.9%
- 60歳代の住宅ローン残高は平均697万円、中央値300万円。500万円以上が45.3%
- 中央値は50歳代の1000万円から60歳代で300万円へ。ただし70歳代でも平均474万円が残る
1. 60歳代で借入金がある世帯はどれくらいか
まずは、そもそもどれくらいの世帯が借入を抱えているのかから確認していきます。ここで使うのは、金融経済教育推進機構(J-FLEC)が2025年6月から7月にかけて実施した「家計の金融行動に関する世論調査」の二人以上世帯調査です。
1.1 借入金がある世帯は14.3%
世帯主の年令別に借入金の有無を見ると、次のようになっています。
- 20歳代:28.7%
- 30歳代:27.8%
- 40歳代:24.8%
- 50歳代:22.3%
- 60歳代:14.3%
- 70歳代:6.7%
60歳代で借入金があるのは14.3%で、50歳代の22.3%からは8ポイントほど下がります。多くの世帯は60歳代までに返済を終えている、あるいは終えつつあるということです。
1.2 借入の目的で最も多いのは住宅関連の45.9%
では、残っている借入は何のためのものでしょうか。借入金がある60歳代の世帯に目的を尋ねた結果(3つまでの複数回答)では、「住宅の取得または増改築などの資金」が45.9%で最も多くなりました。
次いで「日常の生活資金」が20.5%、「耐久消費財の購入資金」が13.7%、「こどもの教育・結婚資金」が8.2%と続きます。60歳代に残る借入の中心は、やはり住宅ローンです。
2. 60歳代の住宅ローン残高は平均697万円、中央値300万円
ここからが本題です。同じ調査から、住宅ローンの残高を見ていきます。以下の割合は、借入金額を回答した60歳代の146世帯を分母としたものです。
2.1 500万円以上が残っている世帯は45.3%
60歳代の住宅ローン残高の分布は次のとおりです。
- 50万円未満:1.4%
- 50万円以上100万円未満:2.1%
- 100万円以上200万円未満:3.4%
- 200万円以上300万円未満:3.4%
- 300万円以上500万円未満:4.8%
- 500万円以上700万円未満:8.9%
- 700万円以上1000万円未満:10.3%
- 1000万円以上1500万円未満:10.3%
- 1500万円以上2000万円未満:5.5%
- 2000万円以上:10.3%
- 無回答(ゼロも含む):39.7%
500万円以上を合計すると45.3%、1000万円以上でも26.1%です。2000万円以上が残っている世帯も10.3%あります。平均は697万円、中央値は300万円でした。
出所:金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査2025年(二人以上世帯調査)」をもとにLIMO編集部作成
平均と中央値に400万円近い開きがあるのは、残高の大きい一部の世帯が平均を押し上げているためです。自分の位置を確かめたいときは、中央値の300万円を目安にするほうが実感に近くなります。
2.2 単身世帯は回答数が少なく参考値です
同じ調査の単身世帯調査でも住宅ローン残高が集計されていますが、60歳代で借入金額を回答したのは42世帯にとどまります。平均は299万円ですが、回答数が少ないため参考程度に見ておくのがよいでしょう。
3. 50歳代から70歳代にかけて、残高はどう変わるか
60歳代の数字だけを見ても、それが多いのか少ないのかは判断しにくいところです。前後の年代と並べてみます。
3.1 中央値は50歳代の1000万円から60歳代で300万円へ
年令別の住宅ローン残高は次のように推移しています。
- 40歳代:平均1651万円/中央値1500万円
- 50歳代:平均1117万円/中央値1000万円
- 60歳代:平均697万円/中央値300万円
- 70歳代:平均474万円/中央値0万円
50歳代から60歳代にかけて、中央値は1000万円から300万円へと大きく下がります。定年前後で退職金を使った返済や、繰上げ返済が進むためだと考えられます。
出所:金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査2025年(二人以上世帯調査)」をもとにLIMO編集部作成
3.2 それでも70歳代に平均474万円が残ります
一方で、70歳代でも平均474万円の残高があります。中央値は0万円ですので、多くの世帯は完済しているものの、一部の世帯にはまとまった残高が残り続けているという姿です。
全世代でならすと平均1295万円、中央値900万円ですから、60歳代の697万円は全体の半分ほどの水準です。返済は着実に進んでいるものの、定年で自動的にゼロになるわけではないということが読み取れます。
退職金が入る前に必ず確認していただきたいのが、いまの残高と完済予定年齢です。金額が分かってはじめて、一括で返すのか、手元に残して運用に回すのかという比較ができます。数字が出る前に方針を決めてしまうと、あとから選び直しにくくなります。
4. 定年後も返済が続くと、家計はどう変わるか
残高が残ったまま定年を迎えると、収入の柱が給与から年金に切り替わったあとも返済が続きます。ここで効いてくるのが、想定している生活費との差です。
4.1 60歳代が考える最低生活費は月39万円
同じ調査では、老後のひと月当たり最低予想生活費も聞いています。60歳代の回答は月39万円で、70歳代は月38万円でした。全国平均は月42万円です。
この金額には住宅ローンの返済が含まれているとは限りません。月39万円で暮らすと考えていたところに毎月の返済が乗ると、想定と実態がずれてきます。
4.2 年金だけで日常生活費をまかなうのが難しいと答えたのは33.6%
年金に対する考え方を60歳代に聞いた結果は、「年金でさほど不自由なく暮らせる」が12.9%、「ゆとりはないが、日常生活費程度はまかなえる」が53.5%、「日常生活費程度もまかなうのが難しい」が33.6%でした。
3人に1人が、日常生活費すら年金では足りないと感じています。ここに住宅ローンの返済が加わるとどうなるかは、想像がつくところだと思います。


