人手不足解消にはロボットしかない

ベンチャーと大手企業によるエコシステムが必須に

森トラストはロボットによる商品の配送を実施

本記事の3つのポイント

  • 人手不足の解消に向けて、ロボットを活用する取り組みが増えている
  • 投資家からの注目度も高く、17~18年の2年間で少なくとも2000億円以上が国内外のロボットベンチャーへ出資されている
  • 日本でも実証の場が少しずつ増えつつある。特に目立つのが不動産デベロッパーによる取り組み
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 米中貿易摩擦、日韓の関係悪化、消費税の増税など、経済に大きな影響を与える課題が山積するなか、日本が早急に取り組まなければないのが人口減少への対策である。内閣府によると、2017年10月における日本の人口は1億2671万人、それが29年には1億2000万人を下回り、53年には1億人を割って9924万人になると推計されている。高齢化も進んでおり、17年10月には65歳以上人口が全体の27.7%(3515万人)を占め、25年には3677万人に達すると見込まれている。

 こういった状況を受け、現在、人手不足が深刻な社会問題となっている。総務省の労働力調査によると、国内における労働力人口は、14年と比較して30年には約800万人減少すると予測されており、そのほかにも下記のようなデータが人手不足の深刻さを物語っている。

・介護人材不足。厚生労働省は、16年度の約190万人に加え、20年度末までに約26万人、25年度末までに約55万人、年間で6万人程度の介護人材を確保する必要があると試算。7月における介護分野の有効求人倍率は4.33倍(厚生労働省 職業安定業務統計)。

・日本建設業連合会は15年度から25年度までの10年間で建設業界の技能労働者が128万人減少すると予測。7月における建築・土木・測量技術者の有効求人倍率は5.88倍(厚生労働省 職業安定業務統計)、建設・採掘業は5.19倍(同)で、平均値(1.41倍)を大幅に上回る。

・農林水産省によると、農家人口は1990年から2000年の10年間で2割以上減少。20年における農家人口は00年の約6割になると予測。一方、基幹的農業従事者全体に占める65歳以上の割合は17年に57.4%と、1985年の3倍に増加。

 このほかにも、清掃業(7月における有効求人倍率2.2倍)やサービス業(同3.56倍)など、幅広い業種で人手不足は深刻化している。そこで日本では4月に改正出入国管理法が施行され、就労を目的とする在留資格(特定技能1号、2号)を創設。今後5年間で最大35万人程度の外国人労働者の受け入れが見込まれているが、外国人労働者は都市圏に集中する傾向が強く、効果も不透明な部分が多い。そこで解決策の1つとしてロボットを活用する取り組みが増えている。

ロボットベンチャーへの出資が活発化

 NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)によると、ロボットの市場は2015年の1.6兆円規模から25年に5.3兆円、35年には9.7兆円まで拡大すると予測しており、大きな成長が見込まれている。ただし、ロボット市場を考えるうえで重要になるのが、ロボットのカテゴリーは非常に細分化されているということ。つまり、ロボットと一言でいっても、製造現場用ロボット、介護ロボット、医療ロボット、農業ロボット、警備ロボット、清掃ロボット、配送ロボット、受付ロボットなど、その種類は何十種とあり、各ロボット市場単体でみると、規模が大きくない領域も多数ある。

 そのため、ロボット開発、特にサービス領域で使用するロボット開発は大企業が参入しづらい。かつ技術の変化も激しく、スピーディーな対応力も求められることから、ベンチャー企業によるアプローチが必須となり、その結果、近年、国内だけでなく、世界中でロボットベンチャーが次々と立ち上がっている。

 ロボットベンチャーは投資家からの注目度も高く、筆者の試算では17~18年の2年間で少なくとも2000億円以上が国内外のロボットベンチャーへ出資され、海外では1社で100億円以上を調達している企業も複数ある。また、海外ではロボットの実証も数多く実施されている。中国では街全体でロボットの実証を行う事例などもあり、国内ロボットベンチャーからは「資金調達の額より、ロボットの実証が自由に行える環境の方が羨ましい」という声も聞こえてくるほどだ。

不動産デベロッパーが実証を加速

 ただ、ここにきて日本でも実証の場が少しずつ増えつつある。特に目立つのが不動産デベロッパーによる取り組みだ。もっとも積極的なのが三菱地所で、18年度から清掃や警備分野を中心にロボットの実証・導入を本格的に開始。現在はロボットによる人手不足対策だけでなく、ロボットが活躍する新しい施設運営・街づくりも目指している。

 森トラストは、自社のオフィスビル内でロボットによる商品の配送実証を19年前半に行い、6月にはサービス業界向けのロボットシステムの開発を行うQBIT Roboticsへ出資した。東急不動産は、東京・竹芝エリアにおける「スマートビル・スマートシティ」の開発を推進するなか、8月に同エリアで開催したイベントを「街全体のロボット実装化に向けた実証実験」の場として提供し、調理ロボットやコミュニケーションロボットなどがイベントを盛り上げた。

 そして、こういった実証のなかで構築されたロボットソリューションを、日本ならびに全世界へ展開していくことになるのだが、ベンチャー企業できちんと整備された販売ネットワークを有する企業は多くない。そこで今度は大手企業がロボットベンチャーの販売をサポートする仕組みの必要性が高まってくる。各領域に合わせたロボット開発は大手企業の事業形態に合わないが、ベンチャーが持つロボットソリューションを集めて販売する「ロボット商社」のような事業だと、大手企業のリソースが活かせるビジネスになる。

 つまりは、ロボット開発にはベンチャーのスピード感が求められるが、ロボットの実証や販売には大手企業のスケールが必要であり、ロボット市場の拡大ならびにベンチャーと大手企業による連携が不可欠。このロボットエコシステムともいうべき枠組みを早急に構築していくことが、人手不足の解消にもつながることになる。ただ、人手不足は加速度的に進んでおり、残されている時間は決して多くない。

電子デバイス産業新聞 編集部 記者 浮島哲志

まとめにかえて

 日本でも少子高齢化が進むなか、ロボットに期待は年々高まっています。国内でも実証試験が急激に増加しているのはその証左といえるでしょう。しかし、記事にもあるとおり、ベンチャー企業が中心の産業構造のため、大手企業との資金面も含めた連携が不可欠となっています。

電子デバイス産業新聞

参考記事

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執筆者
電子デバイス産業新聞

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