物価上昇が続くなか、公的年金は毎年改定されています。2026年度(令和8年度)は国民年金が1.9%、厚生年金が2.0%の増額改定となり、6月15日支給分から適用されました。次回は来週8月14日(金)に支給されます。

しかし、手放しでは喜べません。現在のシニア女性の厚生年金平均受給額は「月額約11.1万円」にとどまり、増額後も老後生活への不安が残るという人もいるでしょう。

そこでこの記事では、2026年度の最新年金額例をふまえ、キャリアや働き方の選択によって生じる「女性の年金格差」のリアルな受給データや手取り額について徹底解説します。

記事後半では、2028年に大きな改正が予定されている「遺族厚生年金」についても詳しく触れていきます。

1. この記事の3つのポイント

  •  2026年度は国民年金1.9%、厚生年金2.0%引き上げの増額改定。
  •  現役時代のキャリアの選択が将来の年金格差を直撃。働き方による生涯獲得年金のリアル。
  •  2028年4月に遺族厚生年金が大改正。子ども独立後の40歳未満の妻への給付が「原則5年の有期」に短縮されます。

2. 2026年度の年金額改定と「働き方」による受給格差

2026年度(令和8年度)の標準的な年金額例は以下の通りです。

  • 国民年金(老齢基礎年金(満額):1人分):7万608円 / 月(対前年度比 +1300円)※昭和31年4月1日以前生まれは月額7万408円。
  • 厚生年金(夫婦2人分の標準モデル):23万7279円 / 月(対前年度比 +4495円)※夫が40年厚生年金に加入、妻が専業主婦の世帯。

2.1 キャリアの選択が左右する将来の受給格差

ただし、将来受け取る年金額は、現役時代の「加入制度・加入期間・平均収入」で決まります。

厚生労働省が公表した最新試算(令和8年度改定時)でも、会社員として厚生年金に長く加入していたか、あるいは自営業や専業主婦などの期間が中心であったかにより、将来の年金月額には2倍〜3倍以上の極めて大きな受給格差が生じることが示されています。

現役時代の年金経歴類型別「65歳以降の年金額めやす」5パターン1/5

現役時代の年金経歴類型別「65歳以降の年金額めやす」5パターン

出所:厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」(色枠部分は筆者加筆)

例えば、厚生年金期間が中心(平均39.8年)の男性が受け取る年金月額目安は約17.6万円に達するのに対し、自営業(第1号被保険者)期間が中心の男性は月額約6.3万円にとどまるなど、現役時代の履歴が老後の生活設計を直接左右します。

同様に女性の場合も、会社員としてキャリアを重ねて厚生年金期間が中心(平均33.4年)だった方の受給額目安が約13.5万円(13万4640円)にのぼるのに対し、専業主婦などの期間が長い第3号被保険者中心の方は月額約7.8万円(7万8249円)、自営業(第1号被保険者)期間が中心だった方は月額約6.2万円(6万1771円)にとどまります。

女性のライフプランにおいても、現役時代の就労形態の違いが将来に約1.7倍〜2.2倍もの受給格差を生み出す要因となっています。

年金額の計算方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。あわせてお読みください。
【国民年金+厚生年金】月15万円(年180万円)以上もらう人は何%?平均受給額を一覧で確認!私的年金の見直しで押さえておきたいポイント

3. 【おさらい】日本の公的年金「2階建て」の仕組み

公的年金は、全員加入の定額の「国民年金(1階)」と、会社員や公務員が上乗せ加入する収入比例の「厚生年金(2階)」の2階建て。現役時代の加入履歴が老後の年金額に直結します。

年金の基本的なしくみについては、こちらの記事で詳しく解説しています。あわせてお読みください。
【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説

4. 筆者からのコメント

熊谷 良子

50歳になり「ねんきん定期便」を開いたとき、これまでの生き方や働き方の履歴が1円単位で示されているようで身が引き締まる思いがしました。

実はこの定期便、50歳を境に記載ルールが大きく変わるのをご存じでしょうか。

50歳未満の通知に書かれているのは「これまでの実績額」ですが、50歳以上になると「現在のペースで60歳まで働き続けた場合の見込額」が表示されます。

若い頃にフリーランスや、家族の介護と仕事の両立に悩んだ私自身も、この表示の違いを知ってから中長期的なマネープランを見直すことができました。

早い段階からご自身の正確な「未来の数字」を把握しておくことこそ、インフレ時代を生き抜くための最良の防衛策になります。

5. いまどきシニア「女性の厚生年金」実際いくらもらっている?《平均・ボリュームゾーン》

共働き前提が一般化する一方、2026年7月公表の内閣府「男女共同参画白書」によると、女性のキャリア継続や学び直しの最大の障壁は「家事・育児・介護等の時間的制約」です。

この壁に直面する割合は女性が14.6%と、男性(7.2%)の2倍にのぼります。

特に40歳代(女性17.9%、男性9.2%)で男女間の時間的格差が最も大きくなり、50歳代(女性13.1%、男性4.6%)でも深刻な状況が続きます。

こうした家庭内の負担の偏りから、ライフイベントを機に扶養内への移行や離職を余儀なくされるケースが、令和の現在であっても依然として多いのが実情です。

こうしたキャリアの中断は将来の年金額に直撃します。

男女別「厚生年金保険(第1号)の年金月額分布」4/5

男女別「厚生年金保険(第1号)の年金月額分布」

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、女性の厚生年金平均受給額は月額11万1413円と、男性(16万9967円)より大幅に低くなっています。

女性の厚生年金分布(3万円刻み)を見ると、「9万円以上~12万円未満」が全体の41.82%(226万4076人)を占め最多のボリュームゾーン。

「月額15万円以上」を受け取れる女性は全体のわずか約12.3%(69万4486人)にとどまり、全体の約3分の2が12万円未満です。ちなみに女性の国民年金(基礎のみ)平均は月額5万7582円です。

なお、こうした年金額は額面通りに全額が振り込まれるわけではありません。

所得税や住民税、健康保険や介護保険などの社会保険料が天引き(特別徴収)され、手取り額は一般的に「額面の約85%〜90%」が目安となります。

5.1 働き方別で変わる「老後の年金」への視点

なお、65歳以降も働きながら厚生年金を受け取る場合、給与と年金の合計額が一定基準を超えると年金が支給停止になる「在職老齢年金」の仕組みにも注意が必要です。

2026年度からは、この支給停止調整額の基準がこれまでの51万円から「65万円」へと大幅に引き上げられました。

セカンドライフの就労計画を立てる際は、この「65万円の壁」を意識し、手取りベースでの収支を試算することが極めて重要です。

また、会社を退職した後に自営業やフリーランスとして独立する女性もいるでしょう。

柔軟に仕事の量を調整できるフリーランスは、育児や介護と仕事を両立させる有力な選択肢ですが、会社員(厚生年金)から自営業(第1号被保険者)に移行する場合、老後は1階部分の国民年金のみとなるため、厚生年金の強力な「2階建て上乗せメリット」が失われることを自覚しておく必要があります。

この場合は、手元の資金から「iDeCo(個人型確定拠出年金)」や「国民年金基金」、さらには「新NISA」などの活用を検討し、自律的に資産を形成していく視点がより求められるでしょう。