続いてご紹介するのは、アラフィフ主婦のBさんです。Bさんは中学生の双子の男の子のお母さんです。「ある日友人に、宝塚の舞台に誘われたんです。それまで特別興味はなかったのですが、話のタネに…と思って見に行くことにしました」
そこでBさんの人生は一変します。
「私が観劇したのは月組の公演。珠城りょうさんを見たときにびっくりしたんです。子どもの頃に読んでいた少女漫画の主人公が目の前に現れたみたいで…」とうっとりしたように語るBさん。
「夫と双子の面倒を見てきて、とにかく男とはうるさく・汚く・くさいもの、と思っていたんです(笑)舞台の上のきらびやかな世界で歌い、踊るその人の姿は、『女性が憧れる美しさと華やかさ』に満ちあふれていて、我が家の男たちとは、180度違う…」舞台が終わるころには、すっかりその世界に魅了されてしまったのだそうです。
「宝塚って、醒めない夢なんです。豪華絢爛で、現実離れしているショーの世界。宝塚を見る限り、ずっと夢を見ていられるんです」Bさんは熱っぽく語ってくれます。
「歌舞伎の女形が女性よりも艶っぽくて女性らしいように、宝塚の男役って、現実の男の人よりも男らしさと気品に満ちあふれている。女性の『こんな男性がいたらいいな』が凝縮されているのが、宝塚の男役なんです」
「もう、現実の男性には恋できません」と最後にBさんはため息交じりで語ってくれました。「だって、私の中で『完ぺきな男性』が珠城りょうさんなんですから」
Bさんが熱弁をふるっている最中、Bさんのスマホがひっきりなしに鳴っていました。筆者がそれを指摘すると、「あぁ、これヅカトモさんからのLINEなんです」との返答。
「今日、珠城りょうさんのお話をするんだ、って言ったら、ヅカトモさんが『あのエピソードも話した方がいいよ』『この舞台をおすすめしてみたら』といろいろアドバイスくれて」宝塚繋がりで交友関係も広がり、今が人生で一番楽しい時だ、とBさんは幸せそうにほほ笑んでいました。
2.5次元にトキメキを求めて
今回2名の女性に話を聞いて感じたこと、それはふたりとも「現実世界で恋愛をしたいとは思わないが、トキメキが欲しい」という気持ちが潜在的にあったのではないか、ということ。
現実の大恋愛は夫で経験済み。恋心はやがて夫婦の絆へと形を変え、現実世界での恋心は完結。そんな主婦層に、「夢物語」を提供してくれるのがジャニーズと宝塚、なのかもしれません。
AさんとBさん、お話をしてくれているときの表情がとても幸せそうでとってもキュート。道ならぬ恋に苦悩するよりも、よっぽど健全で、素敵だなあ、と筆者は思った次第です。
大中 千景