3. 高齢者世帯の家計、年金は何割を支えている?

老後の家計を考えるうえで欠かせないのが、収入の柱である公的年金の存在です。厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」によると、高齢者世帯(65歳以上の人だけ、または18歳未満の未婚者が加わった世帯)の総所得に占める公的年金・恩給の割合は61.3%でした。

高齢者世帯の平均総所得は336.1万円。このうち、公的年金・恩給が205.9万円を占め、働いて得る収入(稼働所得)は87.1万円ほどです。つまり、家計のおよそ6割を年金が支えている計算になります。

年金が土台であることは心強い一方、それだけでは不足する分は、貯蓄の取り崩しや、働き続けることで補うことになります。先にみた貯蓄額が世帯によって大きく異なるのは、この「補う力」の差ともいえます。

なお、ここでの年金の割合は「高齢者世帯」を対象にした数字で、先の年代別の貯蓄額(J-FLECの二人以上世帯)とは調査も区分も異なります。数字はあくまで全体の傾向としてご覧ください。

4. 筆者のアドバイス

60歳代・70歳代二人以上世帯の貯蓄は、60歳代で平均2683万円・中央値1400万円、70歳代で平均2416万円・中央値1178万円でした。年金が家計の約6割を支えるなか、残りをどう組み立てるかがポイントになります。

銀行で家計の相談を受けてきた立場から、年金生活のご夫婦に、今日からできることを3つお伝えします。

ひとつめは、夫婦二人分の年金の「合計額」を正しく把握すること。ねんきんネットやねんきん定期便で、お互いの受給額を確認し、世帯として毎月いくら入ってくるかを合算してみましょう。ここが、家計づくりの出発点になります。

ふたつめは、「年金+毎月◯万円まで」と取り崩しの上限を決めること。年金でまかなえない分を貯蓄から補う際、上限をあらかじめ決めておくと、使いすぎを防ぎ、蓄えを長持ちさせやすくなります。

みっつめは、どちらか一人になったあとの備えを話し合っておくこと。配偶者を亡くすと、世帯の年金は減ります。遺族年金でどのくらい受け取れるかの目安は、年金事務所などの窓口で確認できます。早めに知っておくと、その後の家計を落ち着いて考えられます。

年金という土台があるからこそ、貯蓄の使い方しだいで老後の安心は変わります。まずは、夫婦二人の年金額を合算して、わが家の「毎月の収入」を確かめることから始めてみませんか。

参考資料

和田 直子