妊娠が判明したママたちの大きな気がかりの一つに保育費があるのではないでしょうか。
2010年に内閣府政策統括官(共生社会政策担当)が公表した「インターネットによる子育て費用に関する調査 報告書 【概要版】」をもとに、小学校入学までにかかる子育て費用についてみていきます。
第1子の年齢別にみた一人当たりの年間子育て費用額(対象者全体平均)をグラフ化しました。(表「第1子の年齢・学年別にみた第1子一人当たりの年間子育て費用額(対象者全体平均)」を参照)
子育て費用のうち保育費と食費が年齢とともに急激に増えていく一方で、生活用品費は減っていることがわかります。子どものための預金や保険にも16~22万円前後のお金を回している様子です。0~6歳までの費用総額の合計は736万4460円で、1年あたりの平均費用は約105万円。「こんなにかかるの?」と思う人も少なくないでしょう。
進む教育無償化
子どもが成長するのはあっという間。7歳になればもう小学生です。学校の教育費については急ピッチで無償化が進められています。
私立小中学校に通う児童生徒への支援事業
私立小中学校に通わせたいパパやママのなかには高額になりがちな授業料に不安を感じている人もいるかもしれませんね。17~21年度の期間限定ではありますが、文部科学省は「私立小中学校等に通う児童生徒への経済的支援に関する実証事業」を実施しています。
これは、年収400万円未満かつ資産保有額600万円以下の世帯を対象に、年額最大10万円の補助金が学校側に支給されるというもの。保護者が支払う学費がその分だけ減額されます。
高等学校等就学支援金制度もチェック
高校については公立・私立にかかわらず「高等学校等就学支援金制度」の対象です。世帯年収約910万円未満の全日制高校に通う学生がいる場合には月額9900円、年額11万8800円が学校側に支給され、授業料がこれを下回る場合は実質無償化となります。
私立高校に通う場合には加算支給が利用できます。20年4月からは年収約590万円未満の世帯で支給の上限金額が引き上げられることになりました。
幼児教育・保育の無償化がスタート
19年10月からは幼児教育・保育の無償化がスタートします。対象は住民税非課税世帯の0~2歳の子どもと、すべての3~5歳の子どもです。
「共働き世帯なのか専業主婦なのか」や「認可施設なのか認可外なのか」などの条件によって、無償化の上限額や利用できるサービスが異なります。これから保育園や幼稚園を利用する予定の人は詳細を確認しておきましょう。
高校卒業までに教育費はいくらかかる?
学校の授業料が無償化されても通学費や給食費はかかります。また塾や家庭教師、部活動などで発生する費用も見逃せません。実際の教育費はどのくらいかかるのでしょうか。
17年に文部科学省が公表した「平成28年度子供の学習費調査」をもとに、幼稚園から高校卒業までにかかる学習費の平均値について紹介します。学習費には学校教育費と学校外教育費、学校給食費が含まれます。(表「一人当たりの学習費総額 年間平均値」を参照)
学習費は公立と私立で大きく異なります。3歳から幼稚園に入園し、高校3年生までの15年間を私立に通った場合の学習費総額は約1770万円。一方、すべて公立に通った場合の学習費総額は約540万円です。
「授業料無料の公立に通わせるつもりだったので貯金していなかった」と困惑するママもいるかもしれませんね。教育の無償化制度を賢く利用して少しでも負担を減らしましょう。自治体独自の支援制度が提供されていることもあるので、チェックしてみてはいかがでしょうか。
子どもの教育費を考えるうえで、ママの生涯賃金は非常に大きなポイントといえるでしょう。子どものために削りたくないお金があっても、世帯の収入が少ないとあきらめなくてはならないケースも出てきます。
出産後の選択で変わる女性の生涯賃金!
妊娠が判明した女性のなかには、出産後に仕事を辞めるべきか産休・育休を取って仕事を続けるべきかと悩んでいる人もいるでしょう。
内閣府男女共同参画局が18年に公表した「『第1子出産前後の女性の継続就業率』及び出産・育児と女性の就業状況について」(18年11月)によると、出産前に就業していた女性のうち46.9%(全体の33.9%)が第1子出産前後に退職しています。(表「働く女性の第1子出産前後の就業状況」を参照)
女性の生涯賃金はいくら?
労働政策研究・研修機構は「ユースフル労働統計2018」のなかで、大学を卒業して60歳まで正社員としてフルタイムで働き続ける女性の生涯賃金を約2億1590万円としています。(退職金を含めない。同一企業継続就業とは限らない)。
一方、22歳から30歳まで正社員として働き、出産を機に退職した場合はどうでしょうか。正社員時代の平均年収を約310万円、子どもが小学生になる37歳から60歳までをパートタイマーとして働くと仮定します。夫の所得税で配偶者特別控除の上限額38万円を利用するためには、夫の所得合計が900万円以下(給与所得だけの場合1120万円以下)の場合なら妻の給与所得を150万円以下に抑えなくてはなりません。
このケースの生涯賃金は下記のようになるでしょう。
正社員時代:310万円×8年間=2480万円
パートタイマー時代:150万円×23年間=3450万円
合計=5930万円(退職金などを含めない)
正社員として働き続ける場合に比べると、生涯賃金が大きく下がることがわかりますね。
「子育てで重視するものは何か」を考えよう
子育てで重視するものは人によってさまざまです。「子どもが幼い時期くらいはそばにいたい」「子育ての時間はお金では買えない」と考えるママも多いかもしれません。一方、家計が配偶者の収入のみで支えられていることに居心地の悪さを感じる人もいるようです。
いったん正社員を辞めると正社員として復職するのは容易ではないという現実もあります。復職できた場合でも、元の職場で気持ちよく働けるとは限りません。子育てと仕事の両立が難しいと感じる人も少なくないでしょう。
仕事を続けるべきか辞めるべきか。どちらにもメリットとデメリットが存在し、どちらが得だとは一概にいえないでしょう。どちらを選んだとしても配偶者や家族の理解とサポートが欠かせません。何を優先すべきかを家族でしっかり話し合って、悔いのない道を選びましょう。
【参考】
「ママリで調査しました!ママが持つお金や家計、支出に対する意識とは?」mamari(コネヒト㈱運営)
「インターネットによる子育て費用に関する調査 報告書 【概要版】」内閣府
「私立小中学校等に通う児童生徒への経済的支援に関する実証事業について」文部科学省
「高等学校等就学支援金制度」文部科学省
「2020年4月から変わります!高等学校等就学支援金制度」文部科学省
「幼児教育・保育の無償化概要」内閣府
「平成28年度子供の学習費調査」文部科学省
「『第1子出産前後の女性の継続就業率』及び出産・育児と女性の就業状況について」内閣府男女共同参画局
「ユースフル労働統計2018」労働政策研究・研修機構
「配偶者特別控除」国税庁
LIMO編集部