7月に入り、本格的な夏の訪れを感じる季節となりました。
物価の上昇が続くなか、公的年金だけで生活するシニア世帯にとって、家計のやりくりは大きな課題ですよね。
筆者はかつて証券会社に勤務し、お客様の資産運用や家計のトータルサポートを行ってまいりました。
物価高が続いていることもあり、日々の生活費にご不安を抱えるシニアの方も多いのではないでしょうか。
実は、日本の年金制度には、年金収入や所得が一定基準以下の方を対象に、年金に上乗せして現金が支給される「年金生活者支援給付金」という制度があります。
これは恒久的な制度ですが、対象者であっても自分で申請しない限り、1円も受け取ることができません。
「よく分からない」という理由で日本年金機構から届いた案内を放置してしまうと、本来受け取れるはずの給付金をもらい損ねる可能性があります。
この記事では、厚生労働省の最新統計を基にした平均月額の実態や、「年金生活者支援給付金」老齢・障害・遺族それぞれの支給要件、そして給付を取りこぼさないための請求手続きをわかりやすく整理します。
1. 年金生活者支援給付金の仕組みとは?基礎年金に上乗せされる3つの給付金
年金生活者支援給付金とは、公的年金の受給額に加えて支給される、生活を支援するための給付金です。
この給付金には、次の3つの種類があります。
- 老齢年金生活者支援給付金
- 障害年金生活者支援給付金
- 遺族年金生活者支援給付金
それぞれ「老齢基礎年金」「障害基礎年金」「遺族基礎年金」の受給者で、公的年金などを含めた所得が一定の基準を下回る場合に、2カ月に1度、年金とあわせて受け取ることが可能です。
2. 年金生活者支援給付金の支給対象者とは?所得などの判定基準を解説
年金生活者支援給付金は3つの種類に分かれており、それぞれ所得などの支給要件が設けられています。
ここでは、「老齢年金生活者支援給付金」と、「障害年金生活者支援給付金・遺族年金生活者支援給付金」に分けて、それぞれの詳しい要件を確認していきます。
2.1 老齢年金生活者支援給付金を受け取るための具体的な要件
- 65歳以上で老齢基礎年金を受給していること
- 同一世帯の全員が、市町村民税非課税であること
- 前年の公的年金などの収入金額(※1)と、その他の所得の合計額が、昭和31年4月2日以降生まれの方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前生まれの方は80万6700円以下(※2)であること
※1 障害年金や遺族年金などの非課税収入は、この計算には含まれません。
※2 昭和31年4月2日以降に生まれた方で合計額が80万9000円を超え90万9000円以下の場合、また昭和31年4月1日以前に生まれた方で80万6700円を超え90万6700円以下の場合には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。
2.2 障害年金・遺族年金生活者支援給付金の支給対象者
- 障害基礎年金または遺族基礎年金のいずれかを受給していること
- 前年の所得額(※)が479万4000円以下であること(扶養親族の人数に応じて増額されます)
※ 障害年金、遺族年金といった非課税収入は所得の計算に含みません。
なお、いずれの給付金も、定められた要件をすべて満たしている必要があります。
3. データで見る年金生活者支援給付金のリアルな平均月額(2025年3月時点)
厚生労働省年金局が公表した資料「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を基に、実際に支給されている年金生活者支援給付金の平均月額を見てみましょう。
2025年3月時点での平均給付月額(※)は、老齢年金生活者支援給付金が4146円、障害年金生活者支援給付金が5727円、遺族年金生活者支援給付金では5228円となっています。
※2025年3月時点で認定されている方の平均給付額となります。
さらに、年齢別の平均額についても詳しく確認していきます。
3.1 【年齢別】老齢年金生活者支援給付金の平均給付額
- 70歳未満:4905円(43万9628件)
- 70~74歳:4374円(56万1362件)
- 75~79歳:4092円(85万9446件)
- 80~84歳:3936円(95万453件)
- 85~89歳:3989円(82万8270件)
- 90歳以上:4045円(86万5282件)
3.2 【年齢別】障害年金生活者支援給付金の平均給付額
- 30歳未満:5692円(26万6276件)
- 30~39歳:5668円(31万6202件)
- 40~49歳:5655円(37万1772件)
- 50~59歳:5671円(46万8876件)
- 60~69歳:5749円(38万4626件)
- 70~79歳:5880円(26万4423件)
- 80歳以上:6033円(10万4991件)
3.3 【年齢別】遺族年金生活者支援給付金の平均給付額
- 20歳未満:4190円(5687件)
- 20~29歳:5310円(529件)
- 30~39歳:5310円(7881件)
- 40~49歳:5310円(3万4072件)
- 50~59歳:5310円(2万7828件)
- 60歳以上:5310円(1710件)
4. 申請期限に注意!給付金を受け取るための請求手続きをパターン別に解説
「年金生活者支援給付金」は、自動的に支給が開始されるわけではありません。
ご自身で申請手続きを行う必要があり、手続きを忘れないよう注意が求められます。
ここでは、対象となる可能性が高い2つのケースに分けて、請求手続きの方法を見ていきましょう。
4.1 手続きケース1:すでに年金を受給しており、新たに給付金の対象になった場合
- 毎年9月上旬頃から、対象者には「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が順次郵送されます。受け取ったら必要事項を記入し、切手を貼って投函してください。
- 締切日までに提出すると10月分まで遡って受け取れますが、提出が遅れると請求した月の翌月分からの支給となるため注意が必要です。早めに手続きを済ませることをおすすめします。
※「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が届いた方は、マイナポータルからの電子申請も行えます。電子申請を利用した場合、はがきの郵送は不要です。
4.2 手続きケース2:これから老齢年金の受給を開始する場合
- 年金の受給権が発生する3カ月前になると、年金を受け取るための「年金請求書(事前送付用)」が日本年金機構から送付されます。この中に「年金生活者支援給付金請求書」が同封されています。
- 必要事項を記入し、受給開始年齢の誕生日の前日以降に、年金請求書とあわせてお近くの年金事務所へ提出します。
4.3 2年目以降の手続きは原則として不要
一度請求手続きを行い受給が決定すると、その後も支給要件を満たし続ける限り、翌年以降に改めて手続きをする必要は原則ありません。
※年金生活者支援給付金は、毎年、前年の所得情報などに基づき、継続して支給されるかどうかの判定が行われます。その判定結果は、毎年10月分(12月支払い)から1年間適用されることになります。
5. 高齢者世帯の半数以上が「生活が苦しい」と回答、その実態とは
高齢者世帯の過半数が、日々の暮らしに困難を感じているという調査結果が報告されています。
厚生労働省が公表した「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」から、高齢者世帯の生活意識に関するデータを見てみましょう。
この調査によると、高齢者世帯の生活意識は以下の内訳となっています。
5.1 高齢者世帯の生活意識
- 大変苦しい:25.2%
- やや苦しい:30.6%
- 普通:40.1%
- ややゆとりがある:3.6%
- 大変ゆとりがある:0.6%
「大変苦しい」と「やや苦しい」を合計すると55.8%に達し、半数以上の世帯が生活に苦しさを感じている実態がうかがえます。
この割合は、「普通」と回答した世帯よりも高く、多くの高齢者世帯が厳しい経済状況に直面していることを示唆しています。
6. まとめ:届いた通知を見逃さず、大切なセーフティネットを確保しましょう
公的年金の実質的な価値の目減りが懸念される現代において、年金生活者支援給付金は、低所得世帯の家計を支える重要なセーフティネットです。
しかし、行政は対象者を特定して請求書を送付するまでで、その後の手続きは受給者本人やその家族に委ねられています。
この記事を読み終えたら、まずご自宅に日本年金機構からの未開封の郵便物がないか確認してみてはいかがでしょうか。
また、離れて暮らすご両親がいる方は「年金に上乗せされるお金の案内が届いていないか」と尋ねてみることが、家族全体の暮らしを守るための大切な一歩になるかもしれません。
※当記事は再編集記事です。







