2026年も半分が過ぎ、梅雨明けが待ち遠しい季節となりました。
夏のボーナスシーズンを迎え、家計について考える機会も増えるのではないでしょうか。
私はこれまで、生命保険会社や保険代理店を通じて約2000世帯のお客様のご相談に携わってまいりました。
現在も個人向けの資産運用や保険見直しのコンサルティングを行う中で、特にセカンドライフを歩む方々にとって、収入と支出のバランス、そして「備え」がいかに重要な関心事であるかを日々実感しています。
老後の生活の柱となる公的年金ですが、「年金だけでは生活に不安を感じる」という方も少なくないかもしれません。
しかし、日本の公的制度には、年金以外にも暮らしを支えるさまざまな給付金が存在します。
これらの多くは、申請しなければ受け取ることができません。
この記事では、60歳以上の方を対象とした代表的な5つの給付金について詳しく解説します。
ご自身が対象になるのか、また、いくら受け取れるのかを確認し、安心できるセカンドライフに向けた備えの一助となれば幸いです。
※LIMOでは、個別の相談・お問い合わせにはお答えできません。
1. 「申請しないともらえない」公的給付とは?見逃しがちな制度の仕組み
老齢年金や障害年金、遺族年金といった公的年金は、生活を支える重要な社会基盤です。
しかし、これらの年金は受給要件を満たしただけでは自動的に支給されるわけではありません。
年金を受け取るには、ご自身で「年金請求書」を提出し、請求手続きを行う必要があります。
同様に、国や地方自治体が提供する多くの手当、給付金、補助金なども、受け取るためには申請手続きが不可欠です。
申請には期限が設けられていたり、必要な書類があったりするため、ルールを守らないと給付額が減らされたり、受け取れなくなったりするケースも考えられます。
公的な支援制度を有効に活用するためには、どのような制度が利用できるのかを把握し、正確に手続きを進めることが重要です。
2. 老齢年金にプラスされる2つの給付制度とは
老齢年金を受給している方が特定の条件を満たすと、通常の年金額に加えて支給される2つの制度についてご紹介します。
2.1 1. 年金の家族手当ともいわれる「加給年金」
加給年金は、しばしば「年金の扶養手当」や「家族手当」のようなものと説明される制度です。
老齢厚生年金の受給者が、一定の条件を満たしたうえで年下の配偶者や子どもを扶養している場合に、年金額が加算されます。
加給年金の支給条件
- 厚生年金の被保険者期間が20年(※)以上ある方:65歳になった時点、または定額部分の支給が始まる年齢に達した時点
- 65歳以降(または定額部分の支給開始後)に被保険者期間が20年(※)以上になった方:在職定時改定や退職改定のタイミング(または70歳到達時)
(※)または、共済組合等の加入期間を除いた厚生年金の被保険者期間が40歳(女性と坑内員・船員は35歳)以降15年から19年
上記のいずれかのタイミングで、「65歳未満の配偶者」や「18歳になる年度の末日までの子」、あるいは「1級・2級の障害を持つ20歳未満の子」がいる場合に、年金が加算されます。
ただし、配偶者自身が被保険者期間20年以上の老齢厚生年金や退職共済年金を受け取る権利がある場合、または障害年金などを受給している場合は、配偶者加給年金額の支給は停止されます。
2026年度の加給年金の金額はいくら?
2026年度における「加給年金」の年額は、以下のようになっています。
- 配偶者:年額24万3800円
- 子(1人目・2人目):それぞれ年額24万3800円
- 子(3人目以降):それぞれ年額8万1300円
また、老齢厚生年金受給者の生年月日に応じて、配偶者加給年金額には3万6000円から17万9900円の特別加算が上乗せされます。
振替加算の概要
加給年金の対象である配偶者が65歳に達すると、加給年金の支給は終了します。
しかし、その配偶者が自身の老齢基礎年金を受け取る際に、特定の条件を満たしていれば、その老齢基礎年金に「振替加算」が行われます。
2.2 2. 所得が一定以下の人が対象「老齢年金生活者支援給付金」
年金生活者支援給付金は、基礎年金を受給している方のうち、所得が一定基準以下の場合に支給される制度です。
この給付金には「老齢」「障害」「遺族」の3種類があり、それぞれに支給要件が定められています。
ここでは、その中の「老齢年金生活者支援給付金」について詳しく見ていきましょう。
老齢年金生活者支援給付金の支給条件
- 65歳以上で老齢基礎年金を受給していること
- 世帯全員の市町村民税が非課税であること
- 前年の年金収入(※1)とその他の所得の合計額が、基準額(昭和31年4月2日以降生まれの方は80万9000円、それ以前生まれの方は80万6700円)以下であること(※2)
※1 障害年金や遺族年金といった非課税収入は、この計算には含まれません。
※2 所得の合計額が基準額をわずかに超える方(昭和31年4月2日以降生まれで90万9000円以下、それ以前生まれで90万6700円以下)には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給される場合があります。
老齢年金生活者支援給付金の基準額について
2026年度の老齢年金生活者支援給付金における給付基準額は、月額5620円です。これは前年度から3.2%の増額となります。
実際の給付額は、この基準額を基に、保険料の納付状況に応じて計算されます(以下の①と②の合計)。
老齢年金生活者支援給付金の計算方法
- ①保険料納付済期間に応じた額(月額) = 5620円 × 保険料納付済期間 / 被保険者月数480カ月
- ②保険料免除期間に応じた額(月額) = 1万1768円 × 保険料免除期間 / 被保険者月数480カ月
例えば、国民年金保険料を40年間すべて納付した方の場合、2026年度は月額5620円(年額7万7440円)が支給される計算です(ただし、昭和16年4月1日以前生まれの方は計算方法が異なります)。
保険料免除期間に基づく計算で用いる金額は、毎年の老齢基礎年金額の改定に伴って変動します。
3. 働く60歳代が対象となる雇用保険の3つの給付金
次に、働き続けるシニア世代に関係の深い、雇用保険から支給される給付金や手当について見ていきましょう。
高齢者の就労を支える制度は整備されてきていますが、60歳を機に収入が減少する傾向が見られます(※)。
また、若い世代と同じようにスムーズに就職活動や仕事の継続ができるとは限りません。
ここでは、シニア世代が知っておきたい雇用保険関連の手当や給付金を3種類ご紹介します。
※国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」によると、年齢階層別の平均給与は50歳代後半で男性735万円・女性356万円ですが、60歳代前半では男性604万円・女性294万円、60歳代後半では男性472万円・女性240万円となっています。
3.1 1. 65歳未満の早期再就職を支援する「再就職手当」
再就職手当は、失業後の早期の再就職を促すための制度です。
失業してから再就職や事業開始までの期間が短いほど、多くの手当を受け取ることができます。
再就職手当の支給条件
- 対象となる方:雇用保険の受給資格があり、基本手当を受けられる方
- 支給の条件:雇用保険の被保険者として就職するか、事業主として被保険者を雇用する場合で、基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上残っているなど、一定の要件を満たした場合に支給されます。
再就職手当の給付率
- 給付額:基本手当の支給残日数に応じて、以下の給付率で計算されます。(1円未満は切り捨て)
- 支給残日数が所定給付日数の3分の1以上の場合:「支給残日数の60%」
- 支給残日数が所定給付日数の3分の2以上の場合:「支給残日数の70%」
ちなみに、再就職手当を受給し、新しい職場で6カ月以上働き、その間の賃金が離職前より低い場合には、「就業促進定着手当」の対象となる可能性があります。
3.2 2. 60歳から65歳未満で働き続ける人が対象「高年齢雇用継続給付」
高年齢雇用継続給付とは、60歳から65歳未満の方が働き続ける中で、賃金が60歳時点より低下した場合に受け取れる給付金です。
高年齢雇用継続給付の支給条件
- 対象となる方:60歳以上65歳未満の雇用保険の被保険者で、被保険者期間が5年以上ある方
- 支給の条件:60歳時点の賃金と比較して、現在の賃金が75%未満に低下した状態で就労を継続している場合
高年齢雇用継続給付の支給率
- 支給される額:各月に支払われる賃金の最大10%(※)
※2025年3月31日より前に支給要件を満たした方は15%となります。
老齢年金を受け取りながら厚生年金に加入し、この「高年齢雇用継続給付」を受給すると、在職老齢年金制度による支給停止に加えて、最大で標準報酬月額の4%(※)にあたる年金額が支給停止となるため注意が必要です。
※2025年3月31日より前に支給要件を満たした方は6%となります。
3.3 3. 65歳以上で失業した人が対象「高年齢求職者給付金」
高年齢求職者給付金は、65歳以上の方が失業した場合に受け取ることができる一時金です。
高年齢求職者給付金の支給条件
- 対象となる方:65歳以上の雇用保険加入者(高年齢被保険者)で、失業状態にある方
- 支給の条件:以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 離職日より前の1年間に、被保険者期間が通算6カ月以上あること。
- 失業の状態にあること:就職への積極的な意思と能力があり、求職活動を行っているにもかかわらず就職できない状態を指します。
高年齢求職者給付金の給付額はいくら?
- 支給される額
- 被保険者期間が1年未満の場合:基本手当の30日分に相当する額
- 被保険者期間が1年以上の場合:基本手当の50日分に相当する額
65歳未満の方が受け取る基本手当(いわゆる失業手当)が原則4週間に1度支給されるのとは異なり、高年齢求職者給付金は一括で支給されるのが特徴です。
4. 2025年の法改正で社会保険の適用範囲はどう変わるのか
2025年6月13日に成立した「年金制度改正法」では、パートタイマーなど短時間で働く方の社会保険の加入対象を広げることが決定しました。
これは、いわゆる「106万円の壁」の解消に向けた重要な一歩といえるでしょう。
4.1 短時間労働者の社会保険加入要件の見直しについて
2025年6月時点において、パートなどの短時間労働者が社会保険に加入するには、次の5つの要件をすべて満たす必要があります。
- 週の所定労働時間が20時間以上であること
- 2カ月を超える雇用の見込みがあること
- 学生ではないこと
- 所定内賃金が月額8万8000円以上であること(←いわゆる「106万円の壁」に関連)
- 従業員数が51人以上の企業に勤務していること
今回の法改正では、このうち「賃金要件」と「企業規模要件」を撤廃する方針が示されました。
これにより、全国の最低賃金の動向を考慮しつつ、3年以内に「106万円の壁」が廃止される見通しです。
さらに、社会保険の適用対象となる企業規模の要件も、10年かけて段階的に緩和され、将来的には企業規模にかかわらず加入することになります。
5. 見逃せない公的給付と制度変更、確認しておきたいポイント
60歳以上の方が活用できる公的給付には、年金に上乗せして支給されるものや、就労に関連して雇用保険から受け取れるものなどがあります。
これらの給付の多くは申請が原則であり、制度の存在を知らなければ受け取ることはできません。
特に加給年金や年金生活者支援給付金は、対象であっても見逃しやすい制度のため注意が必要です。
加えて、社会保険の適用拡大によって、短時間労働者でも社会保険への加入が必要になる場合が増え、手取り額や将来の年金額に影響が及ぶことになります。
新しい働き方を考えるうえで、まずはご自身が対象となる給付制度がないかを確認し、必要な手続きを進めてみてはいかがでしょうか。
そして、社会保険の変更点も考慮に入れながら、収入と働き方のバランスを再検討することが大切です。
早めに情報を確認し、行動することが、将来の生活の安定につながるでしょう。
※当記事は再編集記事です。
参考資料
- 日本年金機構「初めて老齢年金を請求するとき」年金請求書(国民年金・厚生年金保険 老齢給付)様式第101号
- 日本年金機構「か行 加給年金額」
- 日本年金機構「加給年金額と振替加算」
- 厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」
- 日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」
- 日本年金機構「令和7年4月分からの年金額等について」
- 厚生労働省「Q&A~高年齢雇用継続給付~」
- 厚生労働省「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」
- 日本年金機構「年金と雇用保険の高年齢雇用継続給付との調整」
- 厚生労働省「再就職手当のご案内」
- 厚生労働省「離職されたみなさまへ<高年齢求職者給付金のご案内>」
- 国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
- 政府広報オンライン「パート・アルバイトの皆さんへ 社会保険の加入対象により手厚い保障が受けられます。」
- LIMO「【2026年4月】申請しないと0円?60歳以上が年金とは別にもらえる給付5つ|対象条件と社保拡大の影響も解説」







