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6月11日に株式会社帝国データバンクが公表した「2026年夏季賞与の動向アンケート」によれば、正社員1人当たりのボーナス平均支給額は前年より1.8万円増の47.7万円となる見通しです。

まとまったお金が入るこの時期は家計を見直す良い機会ですが、長くなる老後の生活を考えると、公的年金だけで暮らしていくことに不安を感じることもあるでしょう。

筆者は証券会社時代から現在に至るまで、資産運用や相続対策など幅広くお金のサポートを行ってきましたが、老後の不安を減らす実践的な第一歩は、国が用意している制度を上手に活用することです。

しかし、実はその中には、自分から申請しないと受け取れないお金が存在します。

この記事では、60歳・65歳以上の方を対象とした、見落としがちな「年金関連」と「雇用保険関連」の公的給付について、5つの制度を分かりやすく整理してご紹介します。 ご自身の状況と照らし合わせながら、活用できる制度がないか確認してみてはいかがでしょうか。

中本 智恵
本記事は、厚生労働省および日本年金機構が公表する最新の公式資料を編集部が確認し、その内容に基づいて執筆・監修しています。

1. 長寿社会を生きるシニア世代|仕事と年金のバランスが重要に

内閣府が公表した「令和7年版高齢社会白書」によれば、65歳から69歳までの男性の6割以上、女性の4割以上が仕事に就いています。 さらに70歳代前半でも、男性の約4割、女性の2割以上が就労を継続している状況です。

年齢とともに働く人の割合は緩やかに減少しますが、シニア世代全体として見ると就業率は上昇傾向にあります。

その一方で、60歳を境に給与水準が下がるケースは少なくありません。また、現役時代と同じように希望の職に就けなかったり、健康上の問題で働き続けることが困難になったりする可能性も考えられます。

厚生労働省の「令和6年簡易生命表の概況」を参照すると、日本人の平均寿命は男性が81.09歳、女性が87.13歳です。 老齢年金の受給世代である65歳以上のシニアにとって、「就労」は「公的年金」と並び、長期化する老後の生活を支える大切な基盤となっています。

この記事では、シニア世代が対象となる給付金や手当のうち、申請しなければ受け取れない「雇用保険に関連するお金」と「公的年金に上乗せされるお金」に焦点を当て、詳しく解説していきます。

2. 【申請が必要】老齢年金に関連する2つの給付金

老齢年金を受給しているシニアの方が、特定の要件を満たした際に、通常の老齢年金に加えて受け取れる可能性のある2種類の給付金を紹介します。

2.1 1. 年金の家族手当「加給年金」とは

加給年金は、しばしば「年金の扶養手当」や「家族手当」のような制度と説明されます。

これは、老齢厚生年金を受給している方が、一定の条件を満たす年下の配偶者や子どもを扶養している場合に、年金額に上乗せして支給されるものです。

加給年金の支給要件

  • 厚生年金の加入期間が20年(※)以上ある方:65歳に到達した時点(または定額部分の支給が開始される年齢に達した時点)で対象となります。
  • 65歳到達後(もしくは定額部分の支給開始年齢に達した後)に被保険者期間が20年(※)以上となった方:在職定時改定時や退職改定時(または70歳到達時)に対象となります。

(※)または、共済組合などの加入期間を除いた厚生年金の被保険者期間が、40歳(女性や坑内員・船員の場合は35歳)以降で15年から19年ある場合も含まれます。

それぞれ上記のタイミングで、「65歳未満の配偶者」や「18歳になる年度の末日までの子ども、または1級・2級の障害を持つ20歳未満の子ども」がいる場合に、年金が加算されます。

ただし、配偶者が被保険者期間20年以上の老齢厚生年金や組合員期間20年以上の退職共済年金を受け取る権利がある場合、または障害年金などを受給している際には、配偶者加給年金額は支給停止となる点に注意が必要です。

2026年度における加給年金の金額

「加給年金」の金額(2026年度の年額)は、以下の通りです。

  • 配偶者:24万3800円
  • 1人目・2人目の子:各24万3800円
  • 3人目以降の子:各8万1300円

また、老齢厚生年金を受け取っている方の生年月日に応じて、配偶者の加給年金額には3万6000円から17万9900円の特別加算が上乗せされます。

配偶者が65歳になった後の「振替加算」

加給年金の対象である配偶者が65歳になると、加給年金の支給は終了します。しかし、その配偶者が老齢基礎年金を受給する場合、一定の要件を満たすことで、今度は配偶者自身の老齢基礎年金に「振替加算」が行われることがあります。

2.2 2. 所得が一定基準以下の人が対象「老齢年金生活者支援給付金」

年金生活者支援給付金は、基礎年金を受給している方のうち、所得が一定の基準を満たす場合に支給される支援金です。この給付金には「老齢」「障害」「遺族」の3種類があり、それぞれに支給要件が定められています。

ここでは、「老齢年金生活者支援給付金」について詳しく見ていきましょう。

老齢年金生活者支援給付金の対象となる条件

年金生活者支援給付金制度について2/7

年金生活者支援給付金制度について

出所:日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」

  • 65歳以上で老齢基礎年金を受給していること
  • 同じ世帯に住む全員が市町村民税非課税であること
  • 前年の公的年金などの収入金額(※1)と、その他の所得の合計額が、昭和31年4月2日以降に生まれた方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれた方は80万6700円以下(※2)であること

※1 障害年金や遺族年金といった非課税収入は、この計算には含まれません。
※2 昭和31年4月2日以降生まれの方で合計額が80万9000円を超え90万9000円以下の場合、また昭和31年4月1日以前生まれの方で80万6700円を超え90万6700円以下の場合には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。

老齢年金生活者支援給付金の基準額について

老齢年金生活者支援給付金の給付基準額3/7

老齢年金生活者支援給付金の給付基準額

出所:厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」をもとにLIMO編集部作成

2026年度における老齢年金生活者支援給付金の給付基準額は、月額5620円となっており、前年度から3.2%の増額となりました。

この基準額を基に、個々の保険料納付状況などに応じて実際の給付金額が計算されます(後述の①と②の合計額)。

給付額はどのように計算されるのか

  • ①保険料納付済期間に基づく額(月額) = 5620円 × 保険料納付済期間 / 被保険者月数480月
  • ②保険料免除期間に基づく額(月額) = 1万1768円 × 保険料免除期間 / 被保険者月数480月

なお、②の保険料免除期間に乗じる金額は、毎年度行われる老齢基礎年金額の改定に応じて変動します。

3. 【申請が必要】雇用保険に関連する3つの給付金

働き続けるシニア世代にとって関心の高い、就労に関連する給付金や手当についても確認していきましょう。

シニアの就労を後押しする制度は整備されつつありますが、国税庁の「令和6年分 民間給与実態統計調査」によると、60歳を境に収入が減少する傾向が見られます。 また、若い頃と同じように就職活動が順調に進まなかったり、健康面で働き続けることが難しくなったりするケースも少なくないでしょう。

ここでは、シニア世代が知っておきたい雇用保険に関連する3種類の手当や給付金を紹介します。

※国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」による年齢階層別の平均給与:50歳代後半男性735万円、女性356万円、60歳代前半男性604万円・女性294万円、60歳代後半男性472万円・女性240万円

3.1 1. 65歳未満の早期再就職を支援する「再就職手当」

再就職手当は、失業後の早期の再就職を促すための制度です。「失業してから再就職まで」または「失業してから事業を開始するまで」の期間が短いほど、多くの手当が支給される仕組みになっています。

再就職手当の支給要件

  • 対象者:雇用保険の受給資格者で、基本手当の受給資格を持つ方。
  • 支給要件:対象者が雇用保険の被保険者として就職するか、または事業主として被保険者を雇用する場合で、基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あり、その他の一定要件を満たす場合に支給されます。

再就職手当の給付率

  • 手当の額:就職などの前日までに失業認定を受けた後の基本手当の支給残日数に応じて、給付率が以下のように変わります(1円未満は切り捨て)。
    • 所定給付日数の3分の1以上の支給日数を残して就職した場合:「支給残日数の60%」
    • 所定給付日数の3分の2以上の支給日数を残して就職した場合:「支給残日数の70%」

再就職手当の額4/7

再就職手当の額

出所:厚生労働省「再就職手当のご案内」

さらに、再就職手当を受け取った後、再就職先で6カ月以上雇用され、その6カ月間の賃金が離職前の賃金より低い場合には、「就業促進定着手当」の対象となる可能性があります。

3.2 2. 60歳から65歳未満の賃金減少を補う「高年齢雇用継続給付」

高年齢雇用継続給付は、60歳以上65歳未満の方が働き続ける中で、賃金が60歳時点よりも低下した場合に支給される給付金です。

高年齢雇用継続給付の支給要件

  • 対象者:雇用保険の被保険者期間が5年以上ある、60歳以上65歳未満の雇用保険被保険者。
  • 支給条件:賃金が60歳に到達した時点の75%未満に減少した状態で、就労を継続する場合。

高年齢雇用継続給付の支給率

  • 支給額:最高で賃金額の10%(※)に相当する額が支給されます。
    ※2025年3月31日より前に高年齢雇用継続給付の支給要件を満たした方は15%となります。

【早見表】高年齢雇用継続給付(2025年4月1日以降)5/7

【早見表】高年齢雇用継続給付

出所:厚生労働省「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」

老齢年金を受け取りながら厚生年金に加入し、「高年齢雇用継続給付」を受給する場合、在職による年金の支給停止に加えて、最大で標準報酬月額の4%(※)に相当する額が年金から支給停止される点に注意が必要です。
※2025年3月31日より前に高年齢雇用継続給付の支給要件を満たした方は6%となります。

3.3 3. 65歳以上で失業した人が対象の「高年齢求職者給付金」

高年齢求職者給付金は、65歳以上の方が失業した場合に受け取ることができる給付金です。

高年齢求職者給付金の支給要件

  • 対象者:高年齢被保険者(65歳以上の雇用保険加入者)で、失業した方。
  • 支給要件:以下のすべての条件を満たす必要があります。
    1. 離職日より前の1年間に、被保険者期間が通算して6カ月以上あること。
    2. 失業の状態にあること。これは「就職したいという積極的な意思と、いつでも就職できる能力(健康状態や家庭環境など)があり、積極的に求職活動を行っているにもかかわらず、就職できない状態」を指します。

高年齢求職者給付金の給付額

  • 支給額
    • 被保険者であった期間が1年未満の場合:30日分の基本手当に相当する額
    • 被保険者であった期間が1年以上の場合:50日分の基本手当に相当する額

この高年齢求職者給付金は、65歳未満の方が受け取る「失業手当」が4週間に一度、失業認定を受けてから支給されるのとは異なり、一括で支給されるという特徴があります。

4. 2025年年金制度改正で社会保険が拡大|「106万円の壁」はどうなる?

2025年の年金制度改正によって社会保険の加入要件が見直され、いわゆる「106万円の壁」は解消される方向で制度が変更されます。

4.1 パート・アルバイトなど短時間労働者の社会保険加入要件が変更へ

「106万円の壁」の撤廃7/7

「106万円の壁」の撤廃

出所:厚生労働省「「年収の壁」への対応」

収入要件の撤廃(3年以内)

これまで社会保険加入の基準の一つであった「月額8万8000円以上」という賃金要件は、最低賃金の動向を考慮しつつ、2028年6月までに撤廃される予定です。今後は収入額に関わらず、週20時間以上働くかどうかが加入判断の主な基準となります。

企業規模の要件も段階的に撤廃

勤務先の従業員数に関する制限も、2027年10月から10年をかけて段階的に引き下げられます。将来的には、すべての企業で労働時間などの条件を満たせば社会保険の対象となる見込みです。

自身のライフプランに合わせた働き方の検討が重要に

この制度変更により、保険料負担による手取り額の変化や、将来受け取る年金額の増加、健康保険の保障内容などを考慮し、個々の家庭状況やライフプランに合わせた働き方を選択することが、これまで以上に大切になります。

また、扶養の基準である「130万円の壁」についても、社会保険の適用が拡大していく中で、その位置づけが相対的に変わっていくことが考えられます。

5. まとめ

ここまで確認してきた通り、申請しないと受け取れない支援制度は多く存在します。

対象となっているのに申請漏れで受け取れなかったというのは非常にもったいないので、こういった制度の手続きは注意しておく必要があります。

年金生活がスタートすると限られた収入の中でやりくりしていくことになるため、いかに効率よくお金を貯めていくかが求められます。

今回のような支援制度を活用することはもちろん、自助努力もしていきたいところです。

参考資料