「オルカン」と「S&P500」eMAXISシリーズの2本は、新NISAのつみたて投資枠・成長投資枠でも人気を集める投資信託です。

「全世界に分散しているオルカンと、米国株に集中するS&P500、どちらが成績がいいの?」と気になっている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、2026年5月末時点の最新データをもとに、両ファンドの中身と運用成績を比較します。また「1年前に120万円を一括投資していたら」「毎月10万円の積立投資を続けていたら」どうなっていたかを試算します。

※本記事は特定の投資商品を推奨するものではありません。

1. そもそも、オルカンとS&P500の「中身」は何が違う?

まず両ファンドの基本的な性格を整理しましょう。

1.1 eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)

MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(配当込み・円換算)をベンチマークとし、日本を含む先進国・新興国の株式に幅広く投資するファンドです。

2026年5月末時点の資産構成は以下の通りです。

  • 先進国株式(除く日本): 82.7%
  • 新興国株式: 12.2%
  • 国内株式: 5.0%

「全世界に分散」と聞くと米国への依存度が低いように思えますが、組入上位国の1位はアメリカで62.4%を占めます。日本(5.0%)、イギリス(3.1%)、台湾(3.0%)、カナダ(2.9%)と続きますが、米国だけで6割超を占める構造です。

1.2 eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)

S&P500指数(配当込み・円換算)をベンチマークとし、米国の主要500社に投資するファンドです。資産の実質100%が米国株式で構成されており、その値動きはほぼそのままS&P500指数に連動します。

1.3 上位銘柄は「ほぼ同じ」

両ファンドを比較するうえで注目したいのが、組入上位銘柄の顔ぶれです。

オルカンの組入上位10銘柄は以下の通りです。

  • NVIDIA CORP(アメリカ): 4.9%
  • APPLE INC(アメリカ): 4.3%
  • MICROSOFT CORP(アメリカ): 2.9%
  • AMAZON.COM INC(アメリカ): 2.5%
  • ALPHABET INC-CL A(アメリカ): 2.1%
  • ALPHABET INC-CL C(アメリカ): 1.9%
  • BROADCOM INC(アメリカ): 1.8%
  • TAIWAN SEMICONDUCTOR MANUFAC(台湾): 1.7%
  • META PLATFORMS INC-CLASS A(アメリカ): 1.3%
  • TESLA INC(アメリカ): 1.2%

S&P500の組入上位10銘柄は以下の通りです。

  • NVIDIA CORP(アメリカ): 7.9%
  • APPLE INC(アメリカ): 7.0%
  • MICROSOFT CORP(アメリカ): 4.8%
  • AMAZON.COM INC(アメリカ): 4.1%
  • ALPHABET INC-CL A(アメリカ): 3.5%
  • BROADCOM INC(アメリカ): 3.1%
  • ALPHABET INC-CL C(アメリカ): 2.7%
  • META PLATFORMS INC-CLASS A(アメリカ): 2.1%
  • TESLA INC(アメリカ): 1.9%
  • MICRON TECHNOLOGY INC(アメリカ): 1.6%

NVIDIAやApple、Microsoft、Amazon、Alphabetといった大型ハイテク株が上位を占める点は両ファンドで共通しています。最大の違いは比率です。

S&P500ではNVIDIAが7.9%、Appleが7.0%と上位集中度が高く、オルカンではそれぞれ4.9%、4.3%と相対的にやや低くなっています。またオルカンは台湾のTSMCが上位に入る一方、S&P500はすべて米国株で占められます。

「分散」か「集中」かの違いはありますが、上位銘柄の顔ぶれは大きく重なっており、値動きにも共通した性格が出やすい構造といえます。

2. 運用成績を比較する(2026年5月末時点)

次に、直近の騰落率を比較します。

2.1 直近1年間の騰落率

  • オルカン: +43.7%
  • S&P500: +43.1%

2.2 直近6ヵ月の騰落率

  • オルカン: +15.4%
  • S&P500: +13.5%

2.3 直近3ヵ月の騰落率

  • オルカン: +9.2%
  • S&P500: +12.3%

2.4 直近1ヵ月の騰落率

  • オルカン: +5.1%
  • S&P500: +5.4%

直近1年・6ヵ月ではオルカンがわずかに上回り、直近3ヵ月・1ヵ月ではS&P500が上回っています。

2026年3月は世界的な株式市場の調整局面となりましたが、4〜5月にかけて急反発。両ファンドとも大幅な回復を見せました。

直近6ヵ月でオルカンがS&P500をやや上回っている背景には、「為替の動き」と「新興国株の好調」の2つの要因があります。

まず為替面では、5月にかけてドル円がやや円高(ドル安)方向に動いたことで、米国株一本のS&P500よりも、通貨が分散されているオルカンのほうが円建てでの目減りを抑えられました。さらに、オルカンが12.2%組み入れている新興国株式がこの期間に+29.3%と大きく上昇したことも、全体のパフォーマンスを押し上げる原動力となりました。

3. もし1年前に120万円を一括投資していたら?

2025年5月末時点(1年前)に120万円を一括投資した場合の現在の評価額を試算します。

3.1 オルカンの場合

オルカン2/3

オルカン

出所

1年前の推定基準価額は約2万6261円(2026年5月末の3万7737円 ÷ 1.437)です。

120万円 ÷ 2万6261円 × 1万 = 約45万6951口

  • 購入口数(概算): 約45万6951口
  • 現在の評価額(税引前): 約172万4000円
  • 増加額(概算): 約+52万4000円

3.2 S&P500の場合

S&P5003/3

S&P500

出所

1年前の推定基準価額は約3万930円(2026年5月末の4万4260円 ÷ 1.431)です。

120万円 ÷ 3万930円 × 1万 = 約38万7972口

  • 購入口数(概算): 約38万7972口
  • 現在の評価額(税引前): 約171万7000円
  • 増加額(概算): 約+51万7000円

一括投資のシミュレーションでは、両ファンドの差はわずかです。いずれも1年間で120万円が171万円超に成長した計算になります。

ただしこれは現時点での試算であり、購入タイミングや為替レートによって結果は大きく変わります。

4. もし1年前から毎月10万円の積立投資を始めていたら?

2025年6月から2026年5月まで毎月末に10万円ずつ積立投資を行った場合を試算します。

総投資額は一括投資と同じ120万円です。なお、新NISAのつみたて投資枠の年間上限(120万円)とも一致する金額です。

毎月の購入価格(各月末の基準価額)をもとに取得口数を算出し、現在の基準価額で評価した概算値です。

4.1 オルカンの場合

  • 総投資額: 120万円(10万円 × 12ヵ月)
  • 現在の評価額(税引前): 約142万1000円
  • 評価益(概算): 約+22万1000円(+18.4%)

4.2 S&P500の場合

  • 総投資額: 120万円(10万円 × 12ヵ月)
  • 現在の評価額(税引前): 約140万5000円
  • 評価益(概算): 約+20万5000円(+17.1%)

積立投資の場合、価格が下がった局面(2026年3月など)により多くの口数を安く購入できるドル・コスト平均法の効果が働きます。この期間はオルカンがわずかに上回る結果となりましたが、両ファンドの差は1万5000円程度とごくわずかです。

同じ120万円を投じた場合でも、一括投資と積立投資では評価額に約30万円の差が生じています。

この差が生まれた最大の理由は、「資金を運用に回していた期間」の違いにあります。

一括投資はスタート時点で120万円すべてを市場に投入し、1年間フルに運用できたため、上昇トレンドの恩恵を“まるごと”受けることができました。

一方、積立投資は毎月10万円ずつ投資していくため、「まだ投資していない残りの資金」は運用されずに待機している状態になります。そのため、今回のような右肩上がりの相場では資金の稼働率が低くなり、一括投資に比べて増えるスピードが遅くなってしまいます。

ただし、これはあくまで相場が好調だった場合の話です。

もしこの1年間が「右肩下がり」の下落相場だった場合は、結果は真逆になります。一括投資は120万円全体が下落の直撃を受けて大きな損失を被るのに対し、積立投資であれば「まだ投資していない資金」が守られる上、下がった価格で安く買い増せるため、一括投資よりも損失を大幅に抑えることができます。

5. まとめ

2026年5月末時点のデータで両ファンドを比較すると、直近1年・6ヵ月ではオルカンがわずかに優位、直近3ヵ月・1ヵ月ではS&P500がわずかに優位という結果でした。

一括投資・積立投資どちらのシミュレーションでも、両者の差はごくわずかです。

上位組入銘柄の顔ぶれが酷似しているように、オルカンは「全世界に分散しつつも、実態は米国比率が高い」ファンドです。そのため、S&P500との値動きは近い部分も多くあります。

大きな違いは「米国外への分散があるかどうか」です。

オルカンは新興国や欧州など米国以外の株式も含むため、特定の局面では異なる動きをすることがあります。どちらが優れているというわけではなく、「米国への集中度合いをどう捉えるか」がファンド選びのポイントになるでしょう。

いずれにせよ、どちらのファンドも長期・積立・分散を基本とした投資に適した設計がされています。短期の騰落率に一喜一憂せず、自身の投資目的やリスク許容度に合わせて検討してみてください。

【投資に関するご注意】 本記事は、特定の金融商品の勧誘や売買の推奨を目的としたものではありません。投資には元本を割り込むリスクがあります。投資に関する最終的な判断は、必ずご自身の責任において行われるようお願いいたします。

参考資料

和田 直子