本記事の3つのポイント

  •  日本政府による韓国への輸出優遇措置撤廃を受けて、韓国では半導体材料の国産化に対する機運が一段と高まっている
  •  対象となった3品目以外にも日系企業のシェアが高い製品はいくつも存在。シリコンウエハーはもとより、組立材料などの依存度も高い
  •  装置・材料分野の国産化推進のため、毎年1兆ウォンを投じていく構え
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 日韓の貿易摩擦を受けて、韓国では半導体材料の国産化率アップが急務となっている。韓国は世界メモリー半導体・FPDパネル市場で高いシェアを有しているものの、コア材料は海外、とりわけ日本に大きく依存している。このような状況下、2019年7月4日、日本政府が実行に移した半導体材料3項目(高純度フッ化水素、フォトレジスト、フッ化ポリイミド)の輸出管理の厳格化措置によって、韓国半導体産業は未曾有の危機に陥っている。

3品目以外でも日本依存度が高いコア材料

 今回、日本が輸出管理を厳格化した高純度フッ化水素、フォトレジスト以外にも、半導体工程の隅々まで日本製のコア材料が使われている。

 韓国大手半導体メーカーにとっては、蒸着やパッケージング分野だけではなく、先端工程として注目されているEUV(極端紫外線)露光工程にも日本製のコア材料が重要な役割を果たしている。半導体専門家らは「今回のような外的な理由による打撃を防ぐためには、コア材料の国産化が不可欠だ」と訴える。

 フォトレジストと高純度フッ化水素は、それぞれ半導体の前工程に当たる露光とエッチング工程に不可欠な材料である。日本の輸出管理厳格化という一発が、韓国メーカーの半導体製造に大きな打撃を与えかねない急所を突いた。問題は、前述の3項目だけではなく、サムスン電子やSKハイニックスなど韓国半導体メーカーの半導体製造工程の全体に日本製の材料が多数使用されている点であろう。

 韓国半導体業界では「露光、エッチング工程材料以外にも、後工程に当たるパッケージング工程でとりわけ日本製の材料が多く使われている」という。パッケージングは半導体チップを封止する役割を果たす。この過程で半導体の内外部間の円滑な連結をサポートし、発熱を抑えるのが重要となる。近年は回路が複雑になる一方、チップサイズは小さくなっているため、効率的なI/O(インプットとアウトプット)が実現できるパッケージング手法が必要となっている。

 韓国の半導体専門アナリストによると「パッケージング工程で半導体が安定的に動作できるようサポートする薄膜である感光性ポリイミドは、日立化成と住友ベークライトが強みを持っており、各種のめっき関連材料はTOK先端材料と日産化学などが先行している」という。

 パッケージング工程はサムスン電子とSKハイニックスが主力とする分野であるだけに、今後、日本の輸出管理対象になる可能性が高い。最近、サムスン電子はパッケージング工程だけを担うために天安(韓国忠清南道)へ工場を移転しており、SKハイニックスもパッケージング向けの設備投資を強化している。

 また、半導体用シリコンウエハーについては、信越化学やSUMCOなどが大きなシェアを持っている。これらのメーカーが韓国半導体メーカーに供給を中断すると、半導体工場は止まってしまう懸念があるという。

日韓の経済交流は緊密だった

 韓国半導体産業の歴史は、1980年代後半から始まる。日本勢は当時、世界のメモリー半導体市場を席巻していたが、今日では韓国に市場シェアを奪われることになった。