具体的には24時間の完全無人化システムを採用しており、また開発会社・株式会社UsideUによるAIアバター「尼ター」が遠隔接客サービスを行います。来年導入予定の尼ターは5か国語対応で、チェックインの遠隔操作や緊急時の対応などの業務も遂行するとのことです。

AIアバター導入のメリットについて株式会社UsideU代表取締社長の高岡淳二さんは、おもてなしを効率的に行い人手不足に対応しているだけではないと言います。操作するオペレーターが誰であってもアバター自体のブランド統一感が出やすいこと、オペレーターの身なりや化粧などの環境準備や顔をさらすストレスがなくなること、オペレーターによる簡単なPC操作でアバター画面に動画や地図などの情報を表示させながら説明ができることなど、多くの利点があるそうです。

向かって左からシェアウィング社長の雲林院奈央子社長、正傳寺の田村完浩住職、UsideUの高岡淳二社長

大学との提携で次世代を育てる役割も担う

さらに「Temple Hotel 正伝寺」の特筆すべき点は、東洋学園大学とも連携し、学生たちがインバウンド観光客を誘致したりお寺を活性化したりするためのマーケティングを学ぶ機会としても提供されていくこと。宿泊客がお寺でできる仏教や日本文化にまつわる体験について、学生たちの企画を積極的に採用していくそうです。

日本で宿坊が活発化したのは江戸時代。当時は世界的に見ても極めて珍しく、一般庶民が自由気ままに旅に行く文化がありました。その旅を支えていたのが、宿坊だと言われています。

人が亡くなった時の供養だけでなく、人々の幸せのためにあらゆる人を受け入れ、人と人を繋ぎ、また寺子屋のように次世代のための教育に寄与していたのがそもそものお寺でした。

そう考えると「Temple Hotel 正伝寺」は何も目新しいことはなく、本来のお寺の姿を取り戻し、お寺に関わるすべての人を幸せに導く“お寺の原点回帰”。全国の困っているお寺のロールモデルとなるのか、今後に注目したいところです。

日蓮宗 松流山 正傳寺(東京都港区芝1-12-12)「Temple Hotel 正伝寺」は門を入ってすぐ左にある

秋山 悠紀