本格的に梅雨入りし、傘が手放しづらい季節になりました。この季節になると紫陽花など春と違った花の移り変わりを感じます。
筆者はファイナンシャル・アドバイザーとして日々資産運用の相談を承っていますが、この季節は退職金が入り、どのように運用していくのかという相談も増えてきます。
老後生活の柱となるのが年金ですが、老齢年金とは別に受け取れる公的給付金があります。
今回はその中のいくつかを解説していきます。申請しないと受け取れないものですので最後までしっかりと確認していきましょう。

本記事は、編集部が厚生労働省や日本年金機構が公表する「令和8年度(2026年度)の年金生活者支援給付金」に関する公式資料を確認の上、執筆・監修しています。
1. 【申請が必須】見落としがちな公的給付金とは
公的年金(老齢年金・障害年金・遺族年金)は、私たちの生活を支える上で欠かせない社会保障制度です。
しかし、これらの年金は受給要件を満たせば自動的に支給が開始されるわけではありません。原則として、ご自身で「年金請求書」を提出し、請求手続きを行う必要があります。
同様に、国や自治体が設けている「手当」「給付金」「補助金」といった制度の多くも、受け取るためには申請手続きが不可欠です。
もし申請期限を過ぎてしまったり、必要な書類が揃っていなかったりすると、本来受け取れるはずだったお金が減額されたり、最悪の場合受け取れなくなったりすることもあります。
公的な支援制度を必要な時に確実に利用するためには、どのような支援が自分に関係するのかを把握し、手続きをきちんと進めることが重要です。
2. 老齢年金に上乗せで受け取れる2つの給付金
シニア世代の生活に深く関わる公的年金には、基本となる老齢年金を補うための制度がいくつか用意されています。
ここではその中から、老齢年金を受給している方が一定の条件を満たした場合に、年金額に加算して支給される2種類の給付について見ていきましょう。
2.1 ① 年金生活者支援給付金
年金生活者支援給付金は、公的年金の受給者で、所得が一定の基準を下回る方々の生活を支援するためのお金です。老齢・障害・遺族の各基礎年金それぞれに対応する給付金が設けられています。
今回は、特にシニアの暮らしに関係の深い「老齢年金生活者支援給付金」に焦点を当てて解説します。
支給の対象となる条件
- 65歳以上で、老齢基礎年金を受給している方
- ご自身を含む同じ世帯の全員が、市町村民税非課税であること
- 前年の公的年金などの収入額(※1)と、その他の所得の合計が、昭和31年4月2日以降生まれの方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前生まれの方は80万6700円以下(※2)であること
※1 障害年金や遺族年金といった非課税収入は、ここでの収入額には含まれません。
※2 収入と所得の合計額が一定の範囲内(昭和31年4月2日以降生まれの方で80万9000円超90万9000円以下など)に収まる方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給される場合があります。
給付基準額の計算方法(2026年度)
2026年度における老齢年金生活者支援給付金の基準額は、月額5620円です。
ただし、これはあくまで基準であり、実際に支給される金額は、この5620円を基に保険料を納めた期間などに応じて計算され、以下の①と②を合計した額になります。
- ①保険料納付済期間に基づく額(月額) = 5620円 × 保険料納付済期間 / 被保険者月数480月
- ②保険料免除期間に基づく額(月額) = 1万1768円 × 保険料免除期間 / 被保険者月数480月
2.2 ② 加給年金
「加給年金」は、しばしば「年金の家族手当」や「扶養手当」のようなものと説明される制度です。
老齢厚生年金を受け取っている方が、ご自身より年下の配偶者やお子さんを扶養している場合に、一定の条件を満たすと年金に上乗せして支給されます。
支給の対象となる条件
- 厚生年金の加入期間が20年(※)以上ある方:65歳になった時点(または定額部分の支給が始まる年齢になった時点)で対象となります。
- 65歳以降に厚生年金の加入期間が20年(※)以上になった方:在職中の定時改定や退職時の改定(または70歳到達時)に対象となります。
※共済組合などの加入期間を除いた厚生年金の被保険者期間が、40歳(女性や坑内員・船員は35歳)以降で15年から19年ある場合も含まれます。
上記のいずれかの時点で、「65歳未満の配偶者」または「18歳になって最初の3月31日を迎えるまでのお子さん、もしくは1級・2級の障害がある20歳未満のお子さん」がいる場合に、年金に加算して支給されます。
ただし、配偶者自身が被保険者期間20年以上の老齢厚生年金や退職共済年金を受け取る権利がある場合、または障害年金などを受給している場合は、配偶者加給年金は支給停止となります。
加給年金の金額(2026年度)
2026年度における「加給年金」の年金額は、以下の通りです。
- 配偶者:24万3800円
- お子さん(1人目・2人目):各24万3800円
- お子さん(3人目以降):各8万1300円
さらに、老齢厚生年金を受け取っている方の生年月日に応じて、配偶者の加給年金額に3万6000円から17万9900円の特別加算が上乗せされます。
なお、加給年金の対象である配偶者が65歳になると支給は終了しますが、その配偶者が老齢基礎年金を受け取る資格があり、一定の条件を満たす場合には、今度は配偶者自身の老齢基礎年金に「振替加算」が行われることがあります。
3. 働くシニア向け|雇用保険に関連する3つの給付金
ここでは、これからも働き続けたいと考えるシニア世代を支援する「雇用保険関連」の給付金を3つご紹介します。
3.1 ① 再就職手当(65歳未満対象)
再就職手当は、失業された方が早期に安定した職業に就くことを促進するための制度です。失業してから再就職するまでの期間が短いほど、手厚い手当を受け取れる仕組みになっています。
支給の対象となる条件
- 対象者:雇用保険の受給資格者で、基本手当の受給資格をお持ちの方
- 支給要件:対象者が雇用保険の被保険者として再就職するか、または事業主として被保険者を雇用する場合で、基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あり、その他一定の要件を満たした場合に支給されます。
給付率の仕組み
- 手当の額:就職日の前日までに失業認定を受けた後の、基本手当の支給残日数によって給付率が変わります。(1円未満の端数は切り捨て)
- 所定給付日数の3分の1以上の支給日数を残して就職した場合:「支給残日数の60%」
- 所定給付日数の3分の2以上の支給日数を残して就職した場合:「支給残日数の70%」
再就職手当の金額について
また、再就職手当を受け取って再就職し、その職場で6カ月以上雇用され、かつその6カ月間の賃金が離職前の賃金より低くなった場合には、「就業促進定着手当」という別の手当の対象になる可能性があります。
3.2 ② 高年齢雇用継続給付
高年齢雇用継続給付は、60歳以上65歳未満で就労を継続する方を対象とした給付金制度です。60歳時点の賃金と比較して、現在の賃金が一定の割合まで低下した場合に支給されます。
支給の対象となる条件
- 対象者:雇用保険の被保険者期間が5年以上ある、60歳以上65歳未満の雇用保険被保険者
- 支給条件:賃金が60歳に到達した時点の75%未満の状態で働き続ける場合
支給率について
- 支給額:最高で、支払われた賃金額の10%(※)に相当する額が支給されます。
※2025年3月31日より前に高年齢雇用継続給付の支給要件を満たした方は15%となります。
高年齢雇用継続給付の早見表(2025年4月1日以降)
注意点として、老齢年金を受け取りながら厚生年金に加入し、この「高年齢雇用継続給付」を受給する場合、在職による年金の支給停止に加えて、最大で標準報酬月額の4%(※)相当額が年金から支給停止されることを覚えておく必要があります。
※2025年3月31日より前に高年齢雇用継続給付の支給要件を満たした方は6%となります。
3.3 ③ 高年齢求職者給付金(65歳以上対象)
高年齢求職者給付金は、65歳以上の雇用保険加入者が離職し、失業状態になった際に、一時金として支給される給付金です。
支給の対象となる条件
- 対象者:高年齢被保険者(65歳以上の雇用保険加入者)で、失業状態にある方
- 支給要件:以下のすべての条件を満たす必要があります。
- 離職日より前の1年間に、被保険者期間が通算して6カ月以上あること
- 失業の状態にあること:これは、離職後に「就職したいという積極的な意思と、いつでも就職できる能力があり、積極的に求職活動を行っているにもかかわらず、就職できない状態」を指します。
給付金の金額について
- 支給額
- 被保険者であった期間が1年未満の場合:基本手当の30日分に相当する額
- 被保険者であった期間が1年以上の場合:基本手当の50日分に相当する額
65歳未満の方が受け取る一般的な「失業手当」が4週間に一度、失業認定を受けてから分割で給付されるのに対し、この高年齢求職者給付金は一括で支給される点が大きな特徴です。
4. 知っておきたい年金制度改正のポイント
2025年6月13日、「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」が衆議院での修正を経て可決され、年金制度改正法が成立しました。
この改正は、働き方や性別による差が生じにくい、多様なライフスタイルや家族構成に対応した年金制度を目指すものです。また、私的年金制度の拡充や所得再分配機能の強化を通じて、老後の生活の安定と所得保障の強化を図ることを主な目的としています。
今回の改正における主な見直しのポイントを整理してみましょう。
4.1 年金制度改正における主な見直しの概要
社会保険の適用拡大
- 短時間で働く方の社会保険加入要件(賃金や企業規模)が見直され、いわゆる「106万円の壁」の撤廃に向けた動きが進みます。
在職老齢年金制度の見直し
- 年金の支給が停止される基準額が「月65万円」へと大幅に緩和されます(2025年度は月51万円)。
遺族年金制度の見直し
- 遺族厚生年金における男女間の差が解消されます。
- お子さんが遺族基礎年金を受け取りやすくなるような見直しが行われます。
標準報酬月額の上限引き上げ
- 保険料や年金額の計算の基礎となる標準報酬月額の上限が、現在の月65万円から段階的に75万円へ引き上げられます。
私的年金制度の拡充
- iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入できる年齢の上限が引き上げられます(3年以内に実施)。
- 企業型DC(企業型確定拠出年金)で拠出できる限度額が拡充されます(3年以内に実施)。
- 企業年金の運用状況の透明性を高める取り組みが進められます(5年以内に実施)。
将来的な基礎年金給付水準の確保
- 今後の社会経済の状況を注視し、基礎年金の給付水準の低下が見込まれる場合には、基礎年金と厚生年金のマクロ経済スライドを同時に終了させる措置が講じられます。
これらの改正内容からも、公的年金制度が私たちの働き方や人生設計と密接に関わっていることがわかります。
5. まとめ
今回は、60歳・65歳以上の方が対象となる、申請しないと受け取れない公的給付金制度について、それぞれの支給要件や金額を整理して解説しました。
年金生活者支援給付金や加給年金、雇用保険関連の給付など、年金以外の収入を確保したり家計を補填したりするために役立つ公的な制度の仕組みを振り返りました。
これらの給付金は、受給の要件を満たしていても自動的に振り込まれるわけではないため、自ら正しい知識を持って手続きを進めることが極めて重要です。
紹介した内容を客観的な目安として振り返り、ご自身やご家族が活用できる制度がないか今一度確認した上で、確実な生活設計に向けた大切な一歩として役立ててください。
参考資料
- 日本年金機構「初めて老齢年金を請求するとき」年金請求書(国民年金・厚生年金保険 老齢給付)様式第101号
- 厚生労働省「年金生活者支援給付金制度」
- 日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」
- 日本年金機構「令和7年4月分からの年金額等について」
- 日本年金機構「か行 加給年金額」
- 日本年金機構「加給年金額と振替加算」
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」
- 日本年金機構「年金と雇用保険の高年齢雇用継続給付との調整」
- 厚生労働省「再就職手当のご案内」
- 厚生労働省「離職されたみなさまへ<高年齢求職者給付金のご案内>」
- 厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」






