5月に入り、さわやかな初夏の風とまぶしい新緑が心地よい季節となりました。大型連休の穏やかな時間のなかで、ご自身やご家族の心身の健康、そしてこれからの暮らしについてゆっくりと見つめ直している方も多いのではないでしょうか。

特に精神的な不調は外からは見えにくいため、周囲の理解を得られず、一人で悩みを抱え込んでしまうことも少なくありません。

こうした困難を抱える方々が、少しでも安心して社会生活を送り、安定した暮らしを築くための公的な支えが「精神障害者保健福祉手帳」です。この記事では、最新の調査結果を基に、この制度の現状や、日々の暮らしの負担を軽くするための具体的な支援内容について詳しく解説します。

1. 【3種類の障害者手帳】身体・療育・精神、それぞれの特徴と所持者数を比較

障害者手帳とは、一般的に「身体障害者手帳」「療育手帳」「精神障害者保健福祉手帳」という3種類の手帳をまとめた呼び方です。いずれも、障がいのある方が日常生活や社会で安心して過ごせるよう、必要な支援や配慮につなげるための制度として設けられています。手帳を取得することで、障がいの種類や程度に応じた福祉サービスや各種の公的支援を受けられるようになります。

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3種類の障害者手帳について

出所:厚生労働省「障害者手帳」

1.1 障害者手帳の種類と対象者

身体障害者手帳:所持者数467万4999人

身体の機能に一定以上の障がいがあると認められた方に交付される手帳です。

療育手帳:所持者数132万1350人

児童相談所または知的障害者更生相談所において、知的障がいがあると判定された方に交付されます。

精神障害者保健福祉手帳:所持者数154万7433人

一定程度の精神障がいの状態にあると認定された方が対象となります。

これら3種類の手帳の中では、身体障害者手帳の所持者数が最も多くなっています。本記事では、次に所持者数が多い「精神障害者保健福祉手帳」に焦点を当て、その詳細を次章で解説していきます。

2. 精神障害者保健福祉手帳の所持者数は154万人超え、1年で10万人以上増加

精神障害者保健福祉手帳の交付状況は「交付台帳」によって管理されています。厚生労働省が公表した「令和6(2024)年度衛生行政報告例」によると、手帳の所持者数は2020年度から2024年度まで5年連続で増加したことがわかります。

「精神障害者保健福祉手帳」交付台帳登載数2/3

「精神障害者保健福祉手帳」交付台帳登載数

出所:厚生労働省「令和6(2024)年度衛生行政報告例の概況・精神保健福祉関係」

2024年度末時点の所持者数は154万7433人に達し、前の年から10万9340人増加しました。この数字は、有効期限が切れていない有効な手帳の所持者を集計したものであり、手帳が2年ごとの更新制であることも踏まえた実数です。

2.1 等級別の内訳:最も多いのは「2級」

手帳の等級は1級から3級までに分かれています。2024年度末時点で最も人数が多いのは2級で、89万7292人と全体の過半数を占めています。その一方で、前年からの増加率が最も高かったのは3級で、10.0%増と大きな伸びを示しました。

2.2 3つの等級を分ける判定基準とは?

精神障害者保健福祉手帳の等級は、精神疾患の状態と、それが日常生活や社会生活へおよぼす影響を総合的に評価して決められます。

  • 1級:日常生活を自力で行うことがほとんどできず、常に介助や支援を必要とする状態
  • 2級:日常生活において著しい制限があり、多くの場面で継続的な支援や配慮が求められる状態
  • 3級:日常生活や社会生活に一定の制約があり、状況に応じた支援や配慮が必要な状態

この等級制度は、一人ひとりの状態に応じた支援を設計するために役立つ仕組みです。適切なサポートにつなげるためにも、制度を正しく理解しておくことが重要になります。

3. 【暮らしと仕事】精神障害者保健福祉手帳で受けられるサポート制度

精神障害者保健福祉手帳は、精神疾患が原因で生活や社会活動に一定の影響がある状態の方を対象としています。具体的には、統合失調症、気分障害(うつ病や双極性障害など)、てんかん、発達障害、高次脳機能障害を含む器質性精神障害、中毒性精神障害など、さまざまな精神疾患が対象に含まれます。

3.1 手帳の所持で利用できる具体的な支援内容

精神障害者保健福祉手帳を取得すると、全国共通の制度として税金の控除や公共料金の割引などを利用できます。これに加えて、お住まいの自治体や事業者ごとに、交通機関の割引、携帯電話料金の優遇、公営住宅の入居支援など、独自のサービスが用意されている場合もあります。

「精神障害者保健福祉手帳」を持つことで受けられるサービスの一例3/3

「精神障害者保健福祉手帳」を持つことで受けられるサービスの一例

LIMO編集部作成

こうした支援は、精神障がいのある方がより安定した生活を送れるようにすることを目的としています。また、手帳を所持していることで障害者雇用枠での就職活動が可能となり、職場での配慮を受けながら働く選択肢が広がります。就労移行支援事業所などを通じて、職業訓練や就職後の定着支援を受けることもできます。

4. まとめ:増加する手帳所持者と公的支援の重要性

今回は、厚生労働省の最新データをもとに、精神障害者保健福祉手帳の普及状況と具体的な支援制度について解説しました。手帳の所持者数は5年連続で増加し、2024年度末には154万人を超えています。

この背景には、精神疾患に対する社会的な認識の変化や、制度の認知向上が寄与していると考えられます。手帳によって受けられる税制優遇や公共料金の割引、障害者雇用枠などの支援は、当事者の経済的・社会的な負担を軽減するために設計された公的な仕組みです。

制度の内容を正しく理解しておくことは、必要が生じた際に適切な選択肢を検討するための重要な一歩となります。今後もこうした公的制度が、多様な生き方を支える社会基盤としてどのように機能していくのか、注目が集まります。

※当記事は再編集記事です。

参考資料

マネー編集部社会保障班