新緑がまぶしい季節となりましたが、長期の休みであっても心が休まる暇がなく、深刻な生きづらさや日常生活の困難を抱えながら日々を過ごされる方はいます。精神疾患による支障は目に見えにくいため、周囲の理解が得られず、孤立感を深めてしまうことも少なくありません。
こうした困難を抱える方々が、少しでも安心して社会とつながり、安定した生活を送るための公的な支えが「精神障害者保健福祉手帳」です。今回は、最新の調査結果をもとに、制度の現状や、暮らしの負担を軽減するための具体的な支援について解説します。
1. 障害者手帳《身体・療育・精神》の3種類「所持者数が一番多いのは?」
障害者手帳とは、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の3種の手帳を総称した一般的な呼び方です。いずれも、障がいのある方が日常生活や社会活動をより安心して送れるように、必要な支援や配慮につなげるための制度として位置づけられています。手帳を取得することで、障がいの種類や程度に応じた福祉サービスや各種支援を受けられるようになります。
1.1 3種類の障害者手帳
①身体障害者手帳:所持者数467万4999人
身体の機能に一定以上の障がいがあると認められた方に交付されます。
②療育手帳:所持者数132万1350人
児童相談所または知的障害者更生相談所において、知的障がいがあると判定された方に交付されます。
③精神障害者保健福祉手帳:所持者数154万7433人
一定程度の精神障がいの状態があることで認定されます。
3種類の障害者手帳の中では、身体障害者手帳の所持者が多いことが分かります。今回は2番目に所持者数が多い精神障害者保健福祉手帳について次の章で詳しくみていきます。
2. 精神障害者保健福祉手帳、所持者154万人超「1年で10万人以上の増加」
精神障害者保健福祉手帳の交付状況は「交付台帳」によって管理されています。厚生労働省の「令和6(2024)年度衛生行政報告例」によると、手帳の所持者数は2020年度から2024年度まで5年連続で増加しました。
2024年度末時点では、前年より10万9340人増え、154万7433人に達しています。この数字は有効期限が切れていない有効な手帳の所持者を集計したものであり、手帳が2年ごとの更新制であることも踏まえた実数です。
2.1 等級別にみると「2級」が最多
手帳の等級は1級から3級までに分かれており、2024年度末時点で最も人数が多いのは2級で、89万7292人と全体の過半数を占めています。一方で、前年からの増加率が最も高かったのは3級で、10.0%増と大きな伸びを示しました。
2.2 3つの等級「判定基準」はどんなもの?
精神障害者保健福祉手帳の等級は、精神疾患の状態と日常生活・社会生活への影響を総合的に評価して決められます。
- 1級:日常生活のほとんどにおいて、自力で行うことが困難で、常時の介助や支援が必要な状態
- 2級:日常生活に著しい制限があり、日常の多くの場面で継続的な支援や配慮を必要とする状態
- 3級:日常生活や社会生活に一定の支障があり、状況に応じた支援や配慮が必要となる状態
この等級制度は、個々の状態に応じた支援を設計することに役立つ仕組みです。適切な支援につなげるためにも、制度を正しく理解しておくことが重要です。
3. 精神障害者保健福祉手帳、暮らしや働きをサポートする支援制度とは?
精神障害者保健福祉手帳は、精神疾患によって生活や社会活動に一定の影響がある状態の方を対象としています。具体的には、統合失調症、気分障害(うつ病や双極性障害など)、てんかん、発達障害、高次脳機能障害を含む器質性精神障害、中毒性精神障害など、さまざまな精神疾患が含まれます。
3.1 「どんな支援を受けられる?」手帳を持つことで受けられる支援
精神障害者保健福祉手帳を取得すると、全国共通の制度として税金の控除や公共料金の割引などを利用できます。これに加えて、自治体や事業者ごとに、交通機関の割引、携帯電話料金の優遇、公営住宅の入居支援など、独自のサービスが用意されている場合もあります。
「精神障害者保健福祉手帳」を持つことで受けられるサービスの一例3/3
LIMO編集部作成
こうした支援は、精神障害のある方がより安定した生活を送れるようにすることを目的としています。また、手帳を所持していることで障害者雇用枠での就職活動が可能となり、職場での配慮を受けながら働く選択肢が広がります。就労移行支援事業所などを通じて、職業訓練や就職後の定着支援を受けることもできます。
4. まとめにかえて
今回は、厚生労働省の最新データをもとに、精神障害者保健福祉手帳の普及状況と具体的な支援制度について解説しました。手帳の所持者数は5年連続で増加し、2024年度末には154万人を超えています。
この背景には、精神疾患に対する社会的な認識の変化や、制度の認知向上が寄与していると考えられます。手帳によって受けられる税制優遇や公共料金の割引、障害者雇用枠などの支援は、当事者の経済的・社会的な負担を軽減するために設計された公的な仕組みです。
制度の内容を正しく理解しておくことは、必要が生じた際に適切な選択肢を検討するための重要な一歩となります。今後もこうした公的制度が、多様な生き方を支える社会基盤としてどのように機能していくのか、注目が集まります。
参考資料
村岸 理美