働くと年金が減る制度(在職老齢年金)は廃止が当然だ、と久留米大学商学部の塚崎公義教授は説きます。

働くと年金が減る制度が存在

在職老齢年金という制度があります。60歳以上の労働者が、働いて一定以上の金額を稼ぐと受け取れる年金額が減ってしまう、という制度です。

ちなみに、この制度はサラリーマン(男女を問わず、公務員等も含む。以下同様)に関するもので、自営業者等には無関係ですので、本稿としてもサラリーマンについて記すこととします。

大雑把に言えば、「65歳までは、給料プラス年金が月額28万円を超えたら、超えた分の半分を減額する」「65歳からは、給料プラス年金が月額46万円を超えたら、超えた分の半分を減額する」というものです。

「収入の高い人は年金が少なくても大丈夫だろうから、限られた年金の原資を必要とされる人に優先的に届けよう」という趣旨だとされています。給料のみで生活している現役世代との公平感、という観点もあるようです。

制度の趣旨はわかりますが、この制度は高齢者が働く意欲を削ぐという問題があります。

日本経済の現状を考えると、これは望ましいこととは言い難いので、政府が廃止を検討しているというのは当然のことでしょう。ぜひ、廃止して欲しいものです。

失業が問題だった時には、良い制度だったかも

日本経済は、バブル崩壊後の長期低迷期、失業に悩み続けて来ました。それ以前も、安定成長期には景気対策が頻繁に講じられていたことを考えると、やはり失業が問題だったと言えるでしょう。

現役世代が失業に悩んでいるのであれば、高齢者が働くことは現役世代の仕事を奪うことになりかねないため、「高齢者は働かないでほ欲しい」ということになるでしょう。

もちろん、高齢者も収入や生きがいが欲しいのでしょうが、それによって現役世代が失業してしまうことを考えると、少ない仕事を取り合うなら、現役世代に譲って欲しい、と考えるのが自然でしょう。

しかし、時代は変わりました。今や、少子高齢化で労働力不足となり、高齢者にも働いてもらうことが望ましいという時代になったのです。そうであれば、高齢者の働く意欲を削ぐような制度は廃止すべきです。

人生100年時代にふさわしい制度を