「知る前契約・計画」に係るインサイダー取引規制を見直し

2015年9月16日、有価証券の取引等の規制に関する内閣府令が改正され、いわゆる「知る前契約・計画」に係るインサイダー取引規制の適用除外の範囲が拡大されました。

上場会社の役職員などの方の資産形成のあり方にも関係する大きな改正にもかかわらず、あまり知られていないようですので、少し前のニュースですが改めて紹介しましょう。

インサイダー取引規制により、未公表の重要事実を知った会社関係者などの売買は禁止されています。

ただし、「知る前契約・計画」の要件を満たして売買を行った場合は、インサイダー取引規制の適用除外となります。具体的には、上場会社の役職員などが、未公表の重要事実を知る前に、売買の予定など必要な記載をした契約・計画を作成するなどの手続きを踏んでおくことで、後になって未公表の重要事実を知っても予定通りの売買が可能となります。

「知る前契約・計画」の制度はこれまでにもありました。ところが、適用除外となる類型が細かく定められており、なかなか使いづらかったのです。

たとえば、持株会で積み立てた株を来週になったら売ろうと考えても、週末にインサイダー情報を入手してしまうと売買ができませんでした。インサイダー情報を知ったから売ろうとしたわけではないのに、売れなかったのです。

「知る前契約・計画」制度による適用除外の要件

今回の「知る前契約・計画」制度の見直しは、「知る前に売買が決定されていたことが客観的に明らかになっていれば、後でインサイダー情報を知ったとしても売買を認めてよいのではないか」という考えに基づくものです。

上場会社の役職員などが、ストックオプションや持株会などを活用し売買できる機会が格段に増えたと言えます。

「知る前契約・計画」により適用除外となるためには要件があります。以下の3つです。

① 未公表の重要事実を知る前に作成した契約・計画に基づく売買であること

② 未公表の重要事実を知る前に契約・計画の写しを証券会社に提出していること

③ 契約・計画上、売買の対象銘柄、売買の別、売買の期日、期日ごとの売買の数量又は総額が特定されているか、期日・数量等を決定する裁量の余地がない方式が定められていること

「裁量の余地がない」とは、期日や売買総額(数量)があいまいでないことです。「△月×日までのいずれかの日」や「○株以上△株以下の範囲で」といった定め方は認められません。

持株会やストックオプションなどのほか、「るいとう」も活用可能

「知る前契約・計画」の活用例としては、「持株会への加入・拠出金増額・退会時の清算」、「役員就任時の自社株買増し」、「ストックオプションの行使等による取得株の売却」などが考えられます。

これまでの制度でも、役員(従業員)持株会のように、一定の計画に従い毎月行う定時定額の買付けはインサイダー取引規制の適用除外でした。しかし、買い付けた株式を売却する場合はインサイダー取引規制の対象であり、前述したように売却のタイミングが難しかったのです。「知る前契約・計画」制度の見直しでそれが容易になりました。

ちなみに、「累積投資契約(るいとう)」による継続的な買い付けもインサイダー取引規制の適用除外です。「るいとう」であれば、自社株だけでなく、他社の株に投資することもできます。

【2016年2月23日 投信1編集部】

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LIMO編集部