黄昏の日の丸太陽電池、もう結晶シリコンでは勝てない

タンデム型、ペロブスカイトは救世主になるか

フレキシブルPSCモジュール(東芝)

本記事の3つのポイント

  • 太陽電池分野において、日系企業の影が一段と薄くなっている。生産・販売量ともに減少、今後の生き残りの戦略が問われている
  • 一方、に海外メーカーは積極的な投資を展開しているが、中国勢でも淘汰の波が押し寄せている
  • 今後の再生可能エネルギーの普及を考えれば、日本勢が太陽電池の分野から手を引くのはまだ早い
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 日本の太陽電池(PV)メーカーの影が一段と薄くなってきた。2018年における日本企業のPVモジュール出荷量の総計は約3.2GWだったが、これは出荷量トップの中国Jinko Solarの3分の1以下に過ぎない。

 ここまで出荷量が少なくなると、当然ながらグローバルの出荷競争からは完全に脱落しており、しかも生産量は年々減少している。価格や販売量で勝負できないPVビジネスにおいて、日本メーカーはどのような戦略で生き残りを図ろうとしているのか。

世界導入量100GW

 18年もPVの世界導入量は順調に増えた。18年のPV導入量については、IEA(国際エネルギー機関)が99.9GW、Solar Power Europeが102.4GWという調査結果を報告しているが、いずれにしても世界市場で順調に導入が進み、ついに年間導入量が100GWの大台に達した。

 PVは発電コストが低下したことで、すでに最も安価な電力源になっており、FIT(固定価格買取制度)のような導入支援政策に頼らない自律成長が始まっている。18年は中国、インド、日本などの市場が伸び悩んだが、新興市場が相次ぎ立ち上がるなど、世界市場全体では安定した成長を果たした。

 19年の導入量も18年比2割増という高い成長が見込まれている。Solar Power Europeはミディアム・シナリオで128GW、IHS Markitも129GWと予測しており、中国や米国、欧州が市場を牽引する見通しだ。

海外勢は一段と生産増強

 旺盛な需要を追い風に、PVメーカーのモジュール出荷量も拡大している。18年のモジュール出荷トップはJinko Solar(11.4GW)で、16年以来、3年連続で首位を守った。2位以下もJA Solar、Trina Solar、LONGi 、Canadian Solarなどの中国勢が独占している。

 6位には韓国Hanwha Q Cellsが食い込んだが、7位以降も中国勢が続くなど、上位10社の大半を中国勢が占めている。ちなみに、上位10社の合計出荷量は64GWで、世界導入量に占めるシェアは6割強となっている。

 シェア拡大を図るため、PVメーカーの生産増強も加速している。Jinko Solarの18年末の生産能力は10.8GWだったが、19年末には15GWに増強する。さらに、同社は四川省に単結晶Siウエハーの新工場(5GW)を建設中。19年末には11.5GWになる予定。

 JA Solarは18年末の9GWに対し、19年末には13GWに、Canadian Solarも18年末の8.8GWに対し、19年末は11.2GWに拡張する。

 世界最大の単結晶SiウエハーサプライヤーであるLONGiもウエハー、セル&モジュールの生産能力を大幅に引き上げる。18年末の生産能力はインゴット&ウエハーが28GW、セルが5GW、モジュールが8.8GWだが、19年末にはインゴット&ウエハーが36GW、セルが10GW、モジュールが16GWになる。

 20年以降も増強を進め、21年末の生産能力はインゴット&ウエハーが65GW、セルが20GW、モジュールが30GWになる予定だ。

FITとともに去りぬ

 かつてはPVの生産&販売で我が世の春を謳歌した日本のPVメーカーだが、中国勢の怒涛の攻勢の前に、今ではすっかり存在感がなくなってしまった。それでも、国内市場は12年7月からスタートしたFITで大きく成長し、日本企業も出荷量を大きく伸ばした。

 14年には日本企業のモジュール出荷量は6.8GW(JPEA統計)に達したが、これをピークに、以後、出荷量は減少の一途を辿る。ちなみに、18年の出荷量は3.2GW(同)で、ピーク時の半分以下に減少した。

 PVの販売減でPVメーカー各社は相次ぎ生産体制を縮小した。京セラはセル&モジュールを生産していた八日市工場(滋賀県東近江市)を閉鎖し、国内生産を野洲工場(滋賀県野洲市)に集約。三菱電機も18年3月で中津川製作所飯田工場(長野県飯田市)のセル生産を終了し、PVセルの製造から撤退した。

 ソーラーフロンティアは16年7月から稼働した最新の東北工場(宮城県大衡村)の生産を休止し、主力の国富工場(宮崎県国富町)に集約している。

 パナソニックも18年3月で滋賀工場のPVモジュールの生産を終了し、モジュール生産をマレーシアと米国の拠点に移したが、19年5月には、そのマレーシア工場を中国GSソーラーに譲渡すると発表した。マレーシアでのPV生産からは撤退するが、マレーシア工場で生産したPVモジュールについては、今後も調達・販売を続けるという。

パナソニックもPV生産を縮小(写真はパナソニックのHIT)

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米国勢は投資継続

 出荷競争についていけない日本のPVメーカーが事業縮小に追い込まれるなか、まだ頑張っているのが米国勢である。First Solar、SunPowerの米国2社はいずれも18年度の業績が厳しかったが、それでも積極的な技術開発と設備投資を続けている。

 First Solarは18年度の営業利益が前年同期比で8割減少したが、CdTe太陽電池の出荷量は2.8GWと、前年度の2.7GWを上回った。18年度はオハイオ、マレーシア、ベトナムの3工場で新型モジュール「6シリーズ」の生産が始まり、オハイオ第2工場の建設計画も進行中だ。19年4月の時点での累積予約販売数量は12.2GWに達しており、19年度の出荷量は5.4~5.6GWと、18年度比で倍増する見込みだ。

 SunPowerも業績面で苦戦が続く。18年度の売上高は前年同期の水準を維持したが、粗利益率の悪化や減損の計上などで、営業損益は8億ドルを超える赤字だった。出荷量は1.3GWだったが、19年度は1.9~2.1GWを計画するなど、積極的な販売戦略を打ち出している。技術開発では次世代技術で中国勢との技術開発競争に挑む。

 SunPowerは正極、負極の2つの電極を裏面側に配置したバックコンタクト(IBC)型セル「Maxeon」を展開しているが、第5世代の新型「Maxeon」を開発した。材料や製造装置、製造プロセスを刷新し、セル面積を従来の5インチから6インチに大型化しつつ、変換効率25%を実現しており、セル面積が従来比で65%増加したことで、発電効率が大幅に向上した。104枚のセルを用いたモジュールの出力は400~415Wとなっている。

新型IBCセル(SunPower)

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中国にも淘汰の波

 PVの出荷競争で上位を独占する中国勢だが、一方で中国勢同士の競争も激化している。かつてはトップ10メーカーだったYingli Green EnergyやRenesolaはすでに最前線から脱落しており、Suntechも収益悪化で事業売却が囁かれている。

 Yingliは12~13年に2年連続で出荷トップに立ち、17年まではトップ10内にとどまっていたが、収益面では14年度以降は赤字が続いていた。18年度は出荷量が1.7GWにとどまり、売上高も前年同期比で半減した。そして、18年には上場廃止となった。

 Renesolaもかつてはトップ10メーカーの常連で、ポリSi、Siウエハー、セル&モジュールまでの垂直統合型ビジネスを展開していたが、業績低迷が続いたことから、17年にはプロジェクト開発に特化し、PVの製造から撤退した。

 台湾勢もPVの事業環境は厳しい。最近では、E-Ton Solar Techが収益悪化でセル生産を停止したことを発表している。また、18年10月には、Neo Solar Power、Gintech、Solartechの3社が合併し、台湾最大のPVメーカーであるUnited Renewable Energyが誕生した。

 3社は近年、価格競争の激化で収益が悪化していたが、台湾政府の支援を受けて、合併による生き残りを決断した。従来のセル中心のビジネスから、付加価値の高い高出力モジュールの販売およびシステム開発に舵を切っている。

日本の選択は

 00年代前半まではPVの生産&販売でトップを独占していた日本メーカーだが、コスト競争&大量生産時代に入ると、相対的な競争力が急速に低下した。「得意の技術力で巻き返しを図る」と言いたいところだが、すでに技術開発でも中国が世界をリードしつつある。Jinko Solarはp型単結晶PERCセルで変換効率24.38%、Trina SolarもTOPCon型の両面受光セルで変換効率24.58%を達成している。

 「中国勢とのコスト競争は厳しい」、「結晶Siの変換効率は理論限界に近づいている」といった現状を鑑みると、これ以上、日本のPVメーカーが結晶Siで競争するのはかなり難しいだろう。ただ、結晶Siとは異なる、新しいコンセプトのPVであれば、まだ勝機は残されているかもしれない。

 例えば、2種類以上の発電層を積層したタンデム型ではSiの理論限界を超える変換効率が期待できる。高効率だがコストも高いⅢ-V族では、HVPE(ハイドライド気相成長)による高速成膜で製造コスト低減が期待できる。

 そして、世界中で開発が加速するペロブスカイト太陽電池(PSC)も実用化が近づいている。

 日本勢がこうした新技術でどこまで戦えるかは分からないが、まだまだ続く再生可能エネルギーの普及拡大を考えると、PVから手を引くには早過ぎる。

電子デバイス産業新聞 編集部 記者 松永新吾

まとめにかえて

 かつては日本のお家芸ともいわれた太陽電池の分野ですが、中国勢をはじめとする海外メーカーの攻勢もあり、その様相は様変わりしています。ペロブスカイトなど新コンセプトの太陽電池の登場が期待されていますが、記事にもあるとおり、すでに技術開発でも中国勢が業界をリードしている状況です。厳しい状況に変わりはありませんが、今後どういった事業戦略を打ち出していくのか、このまま事業縮小の道を辿っていくのか。今後も見守っていきたいところです。

電子デバイス産業新聞

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