桜の便りが聞かれる4月上旬、新年度が始まり、新たな生活をスタートさせた方も多いのではないでしょうか。

希望に満ちた季節である一方、将来の生活設計について改めて考える機会でもあります。

特に高齢期における暮らし向きは、多くの方にとって関心事の一つです。厚生労働省の公表によると、2026年1月時点での生活保護受給者は約198万人にのぼり、人口100人あたり1.61人が利用している計算になります。

受給世帯数や人数は全体的に減少傾向にありますが、申請件数は微増しており、生活の厳しさが続いている状況がうかがえます。

この記事では、受給世帯の半数以上を占める「単身高齢世帯」の実態に焦点を当て、生活保護制度の仕組みや支給額について詳しく解説していきます。

1. 生活保護受給者の実態。51.3%を占める「単身の高齢者世帯」

厚生労働省が公表した「生活保護の被保護者調査(令和8年1月分概数)」によると、2026年1月時点における生活保護の受給者数は約198万人であることがわかっています。

この数字は、日本の人口100人あたり1.61人が制度を利用している計算になります。

全体の傾向を見ると、保護を受けている人数および世帯数は、前年の同じ月と比較して減少しています。

新規の申請件数や、新たに保護が開始された世帯数も同様に減少傾向です。

  • 保護の申請件数:2万1565件(前年同月比で635件、率にして2.9%の減少
  • 保護が開始された世帯数:1万6907世帯(前年同月比で318世帯、率にして1.8%の減少)

次に、世帯構成の内訳を見ていきましょう。

1.1 【世帯類型別の世帯数と割合(保護停止中を含まない)】

  • 高齢者世帯:54.9%

 単身世帯:51.3%
 二人以上世帯:3.6%

  • 高齢者以外世帯:45.1%

 母子世帯:3.6%
 障害者・傷病者世帯:25.6%
 その他の世帯:15.9%

特に注目すべきは、受給世帯の過半数(51.3%)を単身の高齢者世帯が占めているという事実です。

このデータは、現在の生活保護制度が「公的年金だけでは生活が困難な単身高齢者」を支える重要なセーフティネットとして機能していることを示唆しています。

加えて、障害を持つ方や傷病を抱える方の世帯も25.6%を占めており、その割合はわずかながら増加傾向にあります。

2. 高齢者世帯で生活保護が多い背景とは?「家計収支」から見える実情

総務省が公表した「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」を見ると、65歳以上の単身無職世帯における家計の状況が明らかになります。

65歳以上の単身無職世帯における家計の状況1/3

65歳以上の単身無職世帯における家計の状況

出所:総務省「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」

【65歳以上 単身無職世帯の家計収支】

  • 実収入の平均:13万1456円
  • 手取り収入にあたる可処分所得:11万8465円
  • 消費支出の平均:14万8445円
  • 毎月の不足額:2万9980円

この平均的な家計収支から、単身の高齢者世帯では毎月およそ3万円が不足している実態が確認できます。

この状況は特別なケースではありません。

厚生労働省の「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、公的年金・恩給を受け取っている高齢者世帯のうち、総所得のすべてを公的年金・恩給に頼っている世帯は43.4%にのぼります。

これは、多くの高齢者が公的年金の収入だけでは生活費をすべて賄うことができず、何らかの方法で収入を補う必要がある現実を浮き彫りにしています。

さらに、この試算はあくまで日常的な生活費に基づいています。

もし医療費や介護費用、あるいは葬儀費用といった臨時的な支出が発生した場合は、家計の負担はさらに大きくなる可能性があります。

こうした背景を考慮すると、生活保護を受けている世帯の約半数を単身の高齢者世帯が占めているという事実も、納得できるのではないでしょうか。

それでは、実際に生活保護では月にどのくらいの金額が支給されるのでしょうか。

3. 生活保護の「生活扶助」とは?月々の支給額はいくらになるのか

生活保護制度は、すべての受給者に同じ金額が一律で支給されるわけではありません。

制度は8種類の「扶助」に分かれており、それぞれの世帯の収入や必要となる支出を考慮したうえで、足りない分が支給される仕組みになっています。

  • 生活扶助:食費や光熱水費など、日常生活で必要になる費用
  • 住宅扶助:アパートなどの家賃。定められた範囲内で実費を支給
  • 教育扶助:義務教育を受けるために必要な学用品代など
  • 医療扶助:医療サービスの費用。費用は直接医療機関へ支払われるため本人負担はなし
  • 介護扶助:介護サービスの費用。費用は直接介護事業者へ支払われるため本人負担はなし
  • 出産扶助:出産にかかる費用。定められた範囲内で実費を支給
  • 生業扶助:就労に必要な技能の習得などにかかる費用。定められた範囲内で実費などを支給
  • 葬祭扶助:葬儀にかかる費用。定められた範囲内で実費を支給

この中でも、日々の暮らしに必要なお金を支える「生活扶助」について、支給額がどのくらいになるのか気になる方も多いでしょう。

生活扶助の基準額は、住んでいる地域の物価水準や世帯の人数、年齢構成などに応じて細かく定められています。

以下で、具体的な支給額の例を見てみましょう。

世帯構成:東京都区部等/地方郡部等

  • 3人世帯(33歳、29歳、4歳):16万4860円/14万5870円
  • 高齢者単身世帯(68歳):7万7980円/6万6450円
  • 高齢者夫婦世帯(68歳、65歳):12万2460円/10万8720円
  • 母子世帯(30歳、4歳、2歳):19万6220円/17万4800円

これらの金額に加えて、家賃に相当する住宅扶助などが加算されることになります。

このことからも、住んでいる場所や世帯の状況によって「最低限度の生活」を送るために必要な金額の基準が異なることがわかります。

4. 生活保護の実態から考える、高齢単身世帯と制度の今後の役割

この記事では、生活保護制度の概要や支給の仕組みについて解説してきました。

高齢期になると、公的年金の収入だけでは生活を維持するのが難しいケースも少なくなく、生活保護がセーフティネットとして重要な役割を担っている実態が見えてきます。

また、障害や傷病を抱える世帯も受給世帯の中で一定の割合を占めており、この制度が世代を問わず多くの人々にとって不可欠なものであることがわかります。

注意点として、支給される金額は一律ではなく、世帯の構成や地域の物価などに応じて個別に決定されます。

そのため、「最低限度の生活」の基準はそれぞれの状況によって異なることを理解しておく必要があります。

制度の仕組みを正確に知ることが、現状を把握するうえで大切だといえるでしょう。

※当記事は再編集記事です。

参考資料

鶴田 綾