経済産業省は7月1日、半導体・FPD材料の韓国向けの輸出管理について、外国為替および外国貿易法に基づく輸出管理を適切に実施する観点から、厳格な制度の運用を行うと発表した。韓国人元徴用工の訴訟問題を巡り、解決の姿勢を見せない韓国への事実上の対抗措置とみられる。
レジストなど3品目対象
7月4日からディスプレーの製造に用いるフッ化ポリイミド、および半導体製造に用いるフォトレジスト、フッ化水素の3品目について、輸出管理を厳格化。これまでは輸出管理について手続きの簡略化を認めていたが、この優遇措置の対象から外し、個別に輸出許可申請を求めることとする。
経産省の発表によれば、輸出管理制度は国際的な信頼関係を土台として構築されているが、関係省庁で検討を行った結果、「日韓間の信頼関係が著しく損なわれたと言わざるを得ない状況」であることに加え、韓国に関連する輸出管理を巡り不適切な事案が発生したこともあり、厳格な制度の運用を行うという。
レジストはJSR、東京応化などが供給
周知のとおり、半導体・FPD材料分野において日系企業の市場シェアは非常に高い。半導体製造向けのフッ化水素は森田化学工業、ステラケミファなどの寡占市場とされているほか、半導体製造で最も重要なリソグラフィープロセスで用いられるフォトレジストのシェアに至っては、JSR、東京応化工業、信越化学工業、住友化学、富士フイルムの日系5社で計89%のシェア(18年ベース、電子デバイス産業新聞調べ)を有している。
今回輸出規制の対象となったフォトレジストは、最先端製造プロセス向けのEUV(極端紫外線)レジストとされており、影響は今のところごく一部に限られる。EUVリソグラフィー技術を使った半導体製造は19年後半からようやくスタートする見込みであり、現状の量産レベルでは用いられていない。
フッ化水素が半導体製造に今後どの程度影響を及ぼすか、不透明なところもあるが、今回の経済産業省の措置は、韓国政府への政治的スタンスを明確すると同時に、日系材料メーカーへの影響も配慮(限定的な影響)した、非常に計算された対応との向きもある。
日系材料メーカーにとってもダメージ
ただ、今後対象品目が広がる可能性もあり、まだまだ予断を許さない状況だ。韓国半導体メーカーが日系材料メーカーに依存しているのと同様に、日系材料メーカーにとっても、サムスン/SKは重要顧客。しかもその依存度は年々高まっている。対立関係が長引けば、日系材料メーカーにとっても大きなダメージとなり、相対的に韓国ローカルの材料メーカーの地位向上に一役買うきっかけともなりかねない。早期の事態収束が望まれるところだ。
電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳